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「いいね!」だけでなく「いいなぁ」を育んでいくこと

このところ忙しい日が続いていて、ピークが重なってしまったりすると、どうしても目の前のことに時間を使うことが大半というか、9割くらいになってしまっている。

これが10割とか、それ以上に振り切ってしまっていないのが、良くも悪くも歳を取ったなぁと思うところ。

「いいね!」を振り返ってみると…

そんな中、先日、ある情報を探していて「そういえば、この情報って、前にTwitterでいいねしなかったっけ?」と思い出し、自分のTwitterのアカウントのいいねをさかのぼって見ることになった。

そうして改めて自分がいいねしたものを見返してみると、これが見事にはっきりとは覚えていないものが多い。

さすがにここ数ヶ月くらいのものは、だいだい覚えているけど、半年前くらいになってくると、だんだんあやしくなってくる。ぼんやりと覚えているのは自分がかかわったものに関する投稿と、あとはネコ動画くらい(笑)

自分の中で芽吹いていく「いいなぁ」の感覚

一方、ここしばらく気になっていたテーマにつながりそうな情報を、断片的に、投げ込むように収集していたのが、あるきっかけでいろいろと一気につながって、「いやぁ、そういうことかぁ」とジワジワと実感がわいてくるというか、自分の中でしっかりとした形で腹落ちするような感覚を最近味わった。

このテーマに関する情報は、たしかにTwitterとかでいいねした投稿やNotionに投げ込んだ情報にも含まれているけれど、そういう情報と、それに関して自分で考えて、試して、その結果からいろいろと考えてということを時間をかけて進めていくうちに、自分の中で形になっていった。

自分の中に蒔いた種が根を張って、芽吹いて、成長し、実が実ったような感じ。

TwitterやFacebook、LinkedInなんかで「いいね!」する感覚とあえて対比させると「いいなぁ」とでも表現できるような、そんな感覚だった。

「いいね!」で取り組まれたシナリオプランニングが行き着くところ

なんでいきなりこんなことを言葉にしようと思ったかというと、自分自身でシナリオプランニングに取り組んでいるとき、あるいはお客さんのシナリオプランニングの取り組みにかかわっているとき、この「いいね!」と「いいなぁ」の違いを感じることがあるから。

「いいね!」というのは、どちらかというと反射的に目の前の情報を判断するような感覚で、シナリオプランニングでいえば、リサーチをして、軸をつくり、4つのシナリオの中身の検討をサクサクと進め、一気に未来の世界にたどり着くような状態。

そうやってつくられるシナリオのほとんどは、自分たちが普段考えている世界、それも今の世界がそのまんま反映されたものになってしまったりするので、そういう観点を伝えて、作り直しをしてもらう。

しかしごく稀に、そうやってつくられたシナリオの中に、完成度として問題ないものも含まれている。

そういうシナリオは見栄えもよくて、大枠として非の打ち所がないにも見えたりする。ただし、得てして、そういうシナリオは「つまらない」のだ。

そのようなシナリオで描かれている未来の要素ひとつひとつは、たしかに世に出回っている書籍や雑誌、ウェブの記事でよく目にするもので、私たちが考えていかなければいけないものであることは確かだ。

しかし、そのシナリオをつくった当事者が、その未来に対して、どんなインパクトをもたらそうとしているのかと考え出すと、途端に他人事のような戦略オプション案のオンパレードになる。

その未来に自社がどんなインパクトをもたらし得るのか、そのインパクトを実現するためにバックキャスティングして考えていくと、今から何に取り組むべきなのか。そんな話をしているはずなのに、肝心の中身は、新聞の社説の書きっぷりを何十倍も他人事にしたような、当たり障りもないものになってしまっている。

シナリオの世界にひたって浮かぶ「いいなぁ」の感覚

そんなプロセスをしている人たちには、シナリオを完成させるときの効率とか、スピードとかはどうでも良いから、もっと、その世界の登場人物にじっくり目を向けてほしいとお願いする。

例えば、こんな感じで。

・この世界になったら、あなた自身はどんな生活をしているのか?
・キーワードとしての「高齢者」ではなく、高齢者になっているあなたの親は、この世界になると、どんな生活をしていて、何に困っているのか?
・キーワードとしての「気候変動の取り組み」ではなく、この世界では産業がどうなっていて、あなたの生活はどうなっているのか?起きているのは良いことばかりなのか?それによって不便は生じていないのか?

うまくいくと、想像しながら「うわぁ…」とか「いやぁ…」とか、そういう声が漏れてくる。

頭だけの「いいね!」モードを超えて、身体全体、感情込みの「いいなぁ」モードに入り込んでいった証拠だ。

「いいなぁ」から始まるより善い未来

あてもなく悩んだりせず、テンポ良く考え、どんどん判断し、出た結論を検証しながら先に進めていく態度は、今のように不確実な時代にはとても必要なこと。

ただし、その時、何を元にして、そのような判断や行動をしているのかに目を向けることも大切だ。

もし、元にしているものが、どこかで読んだ断片的なものだったり、誰かの受け売りだったりしたら、それを一度、自分の中に植え付けて、そこから芽生えてくる問題意識や使命感のようなものに目を向けてみる。

もちろん、それはすぐにはしっかりした言葉にならないかもしれない。そうなると相手に論理的には伝えられないかもしれない。だからといって、「これはダメなものだ」と切り捨ててしまってはいけない。

すぐに万人受けするようなものにならなかったとしても、相手にわかりやすく伝えられる「イシュー」とか「パーパス」とかに仕立て上げられなかったとしても、それに大事に水をやり続けることを忘れてはいけない。

その過程は必ずしも「いいなぁ」と思える経験ばかりではなく「嫌だなぁ」だったり、「面倒だなぁ」だったりするかもしれない。

でも、そういう経験をしたからこそ、しっかりと自分の中に根づくこともある。

シナリオプランニングでは、せっかくまだ見ぬ未来のことを考えているのだから、わかりやすい良さだけに目を向けるのではなくて、自分の中の感覚にも目を向けて「いいなぁ」と思えることから、善い未来をつくっていく機会にしたいと思っている。

Photo by Gabriel Kidegho on Unsplash

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