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自分の会社を立ち上げてしばらく経った頃。

事前にクライアントもつかまえず、その前の会社でやっていた仕事をそのまま引き継ぐということもしないまま独立してしまったので、「さて、どうしたものか」と思いながら日々過ごしていた。

ちょっとした話しがあっても「自分はそういうことをやるために独立したわけじゃない」とか言って断りつつも、じゃあ、どうすれば、やろうと思っていることをできるようになるのか見当がつかなかった。

そんな時、以前に一度だけ会った人から連絡がきた。人を紹介してくれるとのこと。仕事につながるかもという淡い期待を持って、言われるがまま、大阪に初出張。

事前に「そのまま意気投合したら、飲みに行ってとかなるかもしれないから、念のため泊まりできてください」と言われ、ホテルも予約した。

結果、意気投合どころか、「これは何かのバツゲームなのか?」というほど辟易する話しを最初から最後まで聞かされ、当然のことながら飲みなんてなし。紹介してくれた人も気まずかったのか、そそくさと帰っていった。

仕方がなく一人でさえない中華を食べて、夕食を済ます。そのままホテルに戻ろうとしたけど、そんな気にもなれず、バーに入ってウィスキーでも飲んで帰ることにした。

スマホで調べて、一見でも入れそうで、そこそこ名の知れたバーを見つけ、入ってみた。客は自分ともうひと組だけ。もうひと組の客は常連みたいで、客同士で静かに盛り上がっていた。

一見の自分に対して、とても若いバーテンダーさんは、最初、程よい距離で接客してくれた。好みを聞いてくれた上で、ど真ん中から少し外した新しい体験をできるウィスキーをいろいろと出してくれて、何杯も飲む。

そのうち、もうひと組の客もいなくなり、酔いも手伝ってバーテンダーさんといろいろな話しをし始めた。

話しているうちに、その人が想像していたよりずっと若いこと、バーテンダーになりたいためにあらゆる努力をしてきた結果、若くしてその店を任せてもらえるまでになったことを知った。

「じゃあ、相当、頑張ったんですね」

と、われながら冴えない相づちを受けて、バーテンダーさんは、その「頑張り」をこう話してくれた。

人から言われてやるのは「作業」。それをなるべく素早く、当然、正確に終わらせて余った時間で自分から率先して新しいことをやるのが「仕事」。見習いの頃は、いかに速く「作業」を終わらせて、なるべくたくさんの「仕事」の経験を積むことを意識していました。

それを聞いたとき、ウィスキーが喉をとおる時のような熱い感じが、身体全体に行き渡ってきた。

「やろうと思っていることをできるようになるために」と考えて、いろいろなことをやっていたつもりだった。それなりに忙しくはしていた。

でも、自分がやってきたことは、本当に「仕事」だったんだろうか…?

そう考えると、なんだかとても恥ずかしいような、情けないような気になってきた。でも、同時に、自分は「仕事」をやるために、独立したんだということを、改めて思い出した。

その1カ月後にシナリオプランニングの公開セミナーのトライアル版をやり、2カ月後には初めての正式な公開セミナーを開催した。

それからも、日々時間を過ごす中で、時折、頭の中で自分で問いかけるようにしている。

今日はどのくらい「仕事」をしただろうか?

おかげさまで、途中であきらめたりすることなく、今でもこうして日々「仕事」をすることができています。

■最後まで読んでいただき、ありがとうございました■
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Photo by Loan Aubergeon on Unsplash

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