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ダンジョンみたいな上海のローカル市場に潜り込む

ローカル市場が好きだ。付き合ってください。告白したくなるぐらい好きで、胸は常にときめいている。ローカル市場の雑多で荒々しく不衛生で薄暗い点をまるっと含めて大好きだ。悪口しか言っていないが、むしろそれが醍醐味で愛おしい。

生鮮品や加工食品など、庶民の台所的な役割りをもつ市場を、中国語で「菜市场ツァイシューチャン」または「菜场ツァイチャン」と呼ぶ。「菜」は食材や料理などを指し「市场」は日本語の市場と同じ、この二つが合わさり「食料品市場」の意味となる。

日本のテレビで見る上海は大都会のイメージが強いが、住宅地には食料品市場が点在しており、人々の生活は意外にも庶民的なのだ。ローカル市場は建物の1階や露店の並びに、ぽこっと口を開けていることが多い。

菜市场というダンジョンの入口


菜市场と書かれていたら用事もなく入ってみたくなる。入口で肉まんや豆乳、雑貨やわけのわからない物が売られていたら、ワクワク感を掻き立てられてもうどうにも止まらない。そういう病気だ。なので入ってみる。



コンクリートダンジョン

入ってすぐこれである。中に入って少し進み入口側に向かって撮影。点のように見える外の明るさと対照的に、中は薄暗くコンクリートやシャッターが剥き出しの状態だ。手前の八百屋では新鮮な野菜がズラッと並び、奥の方に見えるカラフルなライトの所ではわけのわからない物を売っている。


陳列がセンス抜群

買いたい野菜を指差して量を伝えれば、重量を計測して金額を教えてくれる。もっと要る、そんなに要らないなど、量は適宜調整すればOKだが、だいたい量をがっぽり盛ってくれる。支払いはスマホでキャッシュレス。建物は朽ちているが最新の決済方法を導入している。このコントラストがたまらない。


荒々しい柱と天井を這う電線がエモーショナル

乾物や調味料を売っているお店。上段には棚が傾くほどの調味料がズラッと並び、下段には海鮮やキノコ類などさまざまな乾物が陳列されている。一番下の地面に直接置かれている大きなボトルは、一見醤油のように見えるが酒だ。黒いのが紹興酒、透明なのは白酒。中華乾物をつまみに中国酒で晩酌が楽しめる。調味料瓶のデザインを見ているだけでも楽しい。それだけで酒が飲めそうだ。


薄暗さで心が躍る

こちらは穀物類のお店。米をメインに粟などの雑穀も取り扱っている。米袋の口を折り返し品種と価格が書かれた札を刺す、この陳列方法が市場では一般的。また、写真左奥では食用油を売っている。5リットルの業務用ボトルに思えるサイズも、油を多く使う中華料理の世界では家庭用サイズなのだ。

500gで60〜130円

中国は米が非常に安い。市場で売られている一般的な品種なら1kg100円ぐらいの物もあるが、日本品種のお米になると価格が20倍に以上に跳ね上がることもある。母国のお米は美味しくもお高いざます。


ダンジョンの武器屋っぽさ

皮革製品のオーダーメードや修理のお店。ローカル市場では食料品だけでなく、衣類や家電など日用品の製造・販売・修理を行なっているお店が入っていることも多く、街の職人が腕を鳴らしている。朽ちた市場の中にある佇まいは、ロールプレイングゲームの武器や防具のお店のようだ。



風情の強すぎる上海のローカル市場はいかがだっただろうか。実はこのようなローカル市場は年々減少しており、過去のSARSや鳥インフルエンザなど、大きな伝染病が発生する度に衛生面改善を目的に、綺麗に整備され生まれ変わっている。市場の数自体はそれほど変わっていないが、ここまでダンジョン感の強い市場は今では貴重だ。

近所にはアートスポットもあるので、この市場もぜひアートとして、見た目はそのままに衛生面のみ改善して保管してほしい。無理だとは分かっていても、ダンジョン感の強いローカル市場を求める私の胸のときめきは止まらない。

アートスポットのパンダがにくたらしい

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