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本棚ーなんども読むnoteー

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読みながら涙が出たnote、ニヤニヤが止まらなかったnote、誰かにおすすめしたいnote。本棚に並べておきたいnoteたち。
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2020年6月の記事一覧

この割れ切った世界の片隅で

コロナウイルスが社会に与えた最も大きな影響は、見えづらかった社会の分断を可視化したことではないでしょうか。 ステイホームできない、明日を生きるのすら精一杯な人。パソコンを持っておらず、家では完全に社会から隔離されてしまう人。勉強ができるような家庭環境でない人。外で遊ぶ自分を自慢げにSNSに載せる人。「クラスターフェス」と称し、コロナに積極的にかかろうとする人。感染者を引っ越しにまで追い込む地方の村社会。 普段暮らしているとそのような人と出会わない、という人が殆どでしょう。

今年の父の日は父の命日と重なった。なぜ私は本を読むのだろう、なぜ文章を書くのだろう

小学生の頃、お父さんやお母さんが死ぬのが怖いと思った夜があった。 「それは明日じゃないし、少なくとも50年ぐらい先のことだから大丈夫」。 そう言い聞かせて、眠りについた。 10代のほとんどを「うちは普通の家庭だから、不幸なことは起こるわけがない」と高を括って生きていた。「普通」というのは、お金がありすぎるわけでもなさすぎるわけでもなく、それなりに仲が良く、暴力や離婚などの家庭内トラブルとも無縁で、どの数字をとってみても日本人家庭の平均値という意味で、だ。 だから当然の

第6話|月に10日働けばいい|堀上駿

最近ライターの繋がりで知り合った、とはいえまだweb上で自己紹介をしあっただけの人に、お金がなくなったら働くスタイルで生活している人がいる。堀上さん、28歳。宮崎の山奥、椎葉村に住んでいるらしい。どうやって、というのも気になるけど、どのようにしてその境地に、とも思う。 はじめてかつ、ビデオ通話でもない電話で話した堀上さんは、とてもゆっくり話す人だった。圧がない、どちらかというと細い、にゃっと柔らかい印象。でもきっと、とても、しなやかに強い人。 レジリエンスってこういうこと

止まった時間と透明な回転扉

自分の中に止まった時間がある。 生きることに必死だったが、どこにも向かえなかった時間。精一杯もがいたが、少しも動けなかった時間。 希望はなかったが、絶望しないように必死だったときの記録と記憶。 *** 二年前のある日、有楽町線の電車に乗っていた。当時通っていたカウンセリングルームの帰りか散歩の帰りか、よく覚えていないが、めずらしく外出した日だった。 自分の気持ちがわからなくなってから、しばらく時間が経っていた。 うれしいとか楽しいとか悲しいとかつらいとか、なにもわ

あなたの正解を決めるのは、あなただ。

「ほら、やればできるじゃん。やれよ、最初から」 一段も二段も高いところから降ってくる、鉛のような言葉。それが頭にコツンとぶつかる。大した痛みじゃないはずなのに、どうにも色々なところがぎしりと軋む。 * 「やればできるじゃない」 テストで100点を取ったとき。試験で学年1位を取ったとき。いつも母親はそう言って薄く微笑んだ。 「これで分かったでしょ?普段の自分がいかに怠けているか」 結果を出さなければ、定規が飛ぶ。結果を出せば、出せなかったときのことを責められる。結局

心に言葉の灯台を。

2020年6月21日 蟹座の新月|夏至 1993年、アフリカ系アメリカ人女性で初のノーベル賞を受賞したトニ・モリスンは、受賞時のスピーチでこう述べている。 “We die. That may be the meaning of life. But we do language. That may be the measure of our lives.” ーToni Morrison 私たちはいずれ死んでしまう。それが人生の目的なのかもしれない。でも私たちは言葉を使うの

変わってゆくことで、この気持ちや美しさを伝えていきたい

思い出した言葉がある。 「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。たとえばこんな星空や泣けてくるような夕日を一人で見ていたとするだろ。もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるかって?」 「写真を撮るか、もし絵がうまかったらキャンバスに描いてみせるか。いややっぱり言葉で伝えたらいいのかな」 「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって……その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって」 引用:星野道夫「旅をす

企画生になりました

言葉の企画2020 なにかを学ぶ時、いつも思い出すのは、母の言葉だ。 「学校ってのは、確かにスキルや技術も教えてくれる。でも、そのために学校があるわけじゃなくて、試して失敗して、許されるためにあるってことを忘れちゃいけない。支えてくれる先生がいるっていう保証された環境なんだから、とりあえず目一杯、やったらいいのよ。」 一言一句正確な自信はないけれど、学校なんてとふてていた中学の頃聞いたこの話は、ずっと頭に残っている。 学ぶってことは、失敗しても許されるってこと。 ただし

人は変われる。ただし2年かかる。でも、絶対に変われる。

今の世の中は他人の不安をあおる言葉が多いように思います。 「このままでいいの?」 「圧倒的努力してる?」 「好きなことや、やりたいことで、生きていこう!」・・・ 僕はそういうこと言うの好きじゃないですが、無意識のうちに僕自身も日頃のSNSや、note、Voicyなどの発信の中で、誰かを不安にさせてしまっているかもしれません。特に日本人は、遠い将来への漠然とした不安と、他人との比較を心に抱きがちです。僕も不安になりやすい方です。 実際は、人は生きているだけで大したもの

慣れたくない。初心者でありたい。

慣れないように気をつけている、いつも。 鮮烈な体験でも感動的な出来事でも、気を抜くと慣れてしまうそうになる。いま自分が感じている新鮮な気持ちが、いつか失われてしまうのではないかと怖くなる。たぶんきっと、臆病なんだと思う。 慣れを恐れてしまうことは、弱さであるように感じる。もっとつよく、もっと気高く、もっと気丈であったらいいなと思う。もっと無思考で、もっと傲慢で、もっとずる賢ければよかったかもしれないと思うこともある。 ついついできない自分をみつけてしまう。ついつい課題か