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【短編ホラー小説】短夜怪談「注意書き」

「近所に変な注意書きがある」
そう教えてくれたのは友人だった。
どういうことか聞いてみると、駅の側にある電柱に張り紙がしてあるそうだ。何の変哲も無い電柱だし、側に何がある訳でも無い。内容は
【ここで深夜『だるまさんが転んだ』をしないでください。だるまは置いていません】
「……何それ」
「思うだろ?深夜にそんなことするヤツいるかよ、って感じだし。いたずらだろって思うんだけどさ」
友人は声のトーンを落とす。
「ずっと張り紙してるのに、いつも真新しい紙なんだよ。てことは、定期的に誰かが張り替えてるってことだろ?そう思うと、いろいろ考えちゃってさ。怖いというか、気味悪いなって」
周りはアパートやマンションもあるそうだ。
「どっかの誰かは、悩まされてるのかもしれないね。深夜の『だるまさんが転んだ』に」
「やめろよ」
それきり、友人は口を噤んだ。

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