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年末年始だし今のラグビー日本代表の状況を整理しよう(後編もとい本編)

突然ですが問題です。JJ体制で、最初にPR1で継続的に起用された選手は?

2019年、つまり来年に日本でラグビーW杯が開催されます。概ね代表チームというのは「〇〇を出せ!」「依怙贔屓するな!」「采配がダメ」
なんて言われるのはどのスポーツでもよく見る光景。ベテラン選手を使えば「若手を使え」。若手を使えば「まだ早い」。そしてラグビー独特なのは、日本以外にルーツを持つ選手を代表で出せば「日本人を使え!」という少し危なっかしい話に踏み入り常に議論があります。
でも、ここで海外日本問わず考えてみたい。
「誰が呼ばれどう使われたか覚えてます?」

リード文の↑を書いた当初、ジェイミー・ジョセフ(以下JJと略す)体制に至るまでの経緯に何をどれだけ書くかということが策定段階だったこともあり、気がつくと5000字を超えておりました。
とはいえ、書いとかないと前提がズレる話なので書いたまでです。前提についての不備はそちらによろしくお願いします。
2016年春代表含むマーク・ハメット代理体制等々については割愛していますし、W杯の試合80分×4全てについて書いたわけでも無く、まだ補足とかを入れていく必要はあるのかなと思います。既に修正は何カ所か入っており、少し変わっているかも。

↑をざっくり拾いますと、かの偉業の裏の部分を見れば現体制は結構なマイナスからのスタートだったが、その偉業と2019年にワールドカップが日本で開催されることが相まって格上との試合機会には恵まれるようになり、サンウルブズによる強化もなんとか行われ始めたのだということになります。

なんでそんな短くまとまるものをわざわざ長く書いたんだと言われそうですが、それで納得するかは別の話ですし、もし世界が5-7-5や140字で記述できるならこの世に書籍や物語は存在していないと思います。

前任者の影 

この前編の補足から入りますと、
そもそもリソースを使い果たすというマイナスからまたチームを一つ一つ組み上げていく作業でありながら、JJに求められ期待されるるのは「前任者以上の何か」であるでしょう。そして、JJの2019年までのチーム作りにも

「(偉大なる)前任者はどうしたこうした、どうだった」

ということが常につきまとうことは想像に難くなかったはずです。
中身としては「試合結果」「戦術」「選手」でしょうか。まずここまで結果に関して言えば、そもそもエディー時代とは対戦相手の目の色が変わり、対策を意識されるようになっていることも押さえておきたいところ。次に戦術について、これ単独で物凄く色々な事が言われています。戦術からズレる話で本来選手・観客側の事ではありますが、秩父宮ラグビー場では「なんで蹴るんだよー」というヤジをよく聞く気がしますね。エディーと「真逆の『ように』見える戦術」は結構不評を買いやすいとも言えます。

 ただここで書けるのは恐らく

「『エディーに戻れ』と言い続けるだけの言説」
には気をつけよ、という事

そもそもキックの事で言うと、あの南アフリカ戦の9ヶ月前の時点で、チーム首脳はキックでカオスを作り崩すと決めていました。所謂 #japanway であるとか「接近展開連続」っぽかったのは最後の10分間だけでしょうか。……これも場外戦といえば場外戦ですね。その実は真逆でもなんでもない。

 戦術と采配について懐疑論を立てるにも、エディー自身が違うやり方やり方をすべきだといい、実際違うやり方で結果が出ていて、エディー自身が基本的にJJのチームのあり方に肯定的であることを否定はできないはずです。またエディーはエディーが考える日本代表にあったラグビー、JJはJJが考える日本代表にあったラグビーを模索しているわけで、最後W杯でさあどうなったかなと検証されるべき、とも言えます。

(もっともこの辺は、私が常時「2019の結果がどうなるか」というところに意識を置いているということもあって、少し淡白に見えるかもしれません。)

 そうして最後に残ったのが選手です。私の周囲ですと「今五郎丸選手どうしてるの?」と聞かれるやつです。前回書きましたが、五郎丸選手はそもそも次の代表を志すかどうか結構微妙な雰囲気でした。実際現在に至るまで、2017年の世界選抜戦を除き、代表関連の試合に出場をしておりません。しかし、実際に声がかかっているかかっていないはわかりませんが、選ぶ選ばれぬに関わらず代表・日本開催W杯の顔としてコミットしてくれているように傍目からは見えます。ありがたい。あと五郎丸に限らず代表への参加に関してお茶を濁す選手は結構います。それくらい犠牲が多く苛烈であるとか、燃え尽きているとか、想像ある程度できるところです(匿名の「関係者」が多発する記事はあまりアテにしないが、一応)。

 さて、どのスポーツでも〇〇選手は頼りになるならない、〇〇はいい悪い、好き嫌い、割と誰でも気軽に言いやすいところでもあります。いや、ある程度責任が出てくる専任のライターならとにかくファンの次元で気楽にいう分には、汚い罵倒罵声みたいな品位に欠ける事さえしなけりゃ本来何言ったって構わないでしょう。松木安太郎とセルジオ越後くらいのノリで話せばいい(もっとも、ほぼすべての人にとってわかりやすく支持されやすいやり方戦術起用采配が本当にいいとは限りませんし、解説者もたいがいだったりしますし、最前線の現場でやっている専門家が正しいことが多いんですが。)。

 ただ、ここで私が気になってくるのが、「○○を試さない」「○○呼んでない」といった話をしようとして、実は試していたり呼んでいたりするということをちょっと詳しい方との話でたびたび経験していて。

これ、結構な割合の人が事実すっ飛ばして印象先行してませんか?

という疑念が出てきたのです。よくあるのは「小野/山沢をなぜ呼ばん?」というものですが、別にそれだけには限らないでしょう。例えば尾崎選手が第三次ラグビーW杯トレーニングスコッド入りしたのを上層部の気まぐれと思うか否か。同じく立川選手が候補外送りになったことに激怒する人もいるはずです。しかし、そこに至るまでの経緯を追いかけてみるとどうなるでしょうか?印象が変わるかもしれません。

また事実と経緯の把握は、ラグビーを2015年以来見る人に説明するのにも役に立つはずです。今司令塔ポジションにいる田村選手は2015年の3番手だったとか、1番手だった小野選手は色んな事情が噛んで出てきていないとか。

とりあえず表にしてみよう

 さてTwitterの方にup済みのかの画像ですが、要するにJJ体制における招集の来歴や経緯を追いかけたくても、記憶をたどるか一試合一試合個別のページを探していくしかなくて面倒だから作ったわけです

 一番左の列が選手名(姓で50音順)、一番上の行には2016年秋から2018年秋までにたどった代表関係の試合を書き連ねました。ここで名前が挙がっている選手はサンウルブズ・NDS・日本代表等で声がちょっとでもかかったとわかっている選手です。
名前一覧で赤色になっている選手は、表作成当時(2018年12月19日)において2019年のサンウルブズに参戦している選手で、第三次スコッド(一番右の欄)で赤マスになっている選手は「スコッドに入っていないが2019年サンウルブズ参加組」になります。
試合で出場した場合は背番号が記され赤マス、招集されたが試合に出ていない場合は薄い赤色のマスで31番と表記。ところどころ黒いマスがあるのはケガ等による離脱、山吹色は追加招集。青色マスはNDSや合宿の参加を示していますが、2と数字が書かれているのはサンウルブズ参戦中。


基本的に日本ラグビー協会のページを参考にしました。
そして

各選手を左から右に追っていくと、どう使われたかが追える

という寸法です。
ではポジション別に見ていきますが、これらの画像についての使用に際しては一応こういう決まりを定めさせていただきます。記事をご一読ください。↓

PR1(左プロップ)

まず冒頭の答え合わせ含め、FW第一列を順にみていきます。

答えはこうなります。

「稲垣選手・三上選手がケガをしたため仲谷選手・山本選手がPR1の座に最初に座った。その意味では仲谷選手。そして稲垣選手が復帰した後は稲垣/山本石原のケースが多いのでケガを除けば稲垣選手。で、通して控えで出ていると考えると山本選手。」

事実上稲垣石原三上山本の4人が起用されていますが、石原選手はJAPAN Aクラスの試合からチャンスをつかみそこそこ定着した形。
また今回突然第三次トレーニングスコッド/NDSに入ったかに見えた三浦選手は実はNDSやJAPAN Aの試合に出ていて、久しぶりに声がかかったという事になります。同じように東恩納選手がトレーニングスコッドに入ったことが一度ありましたが、彼もずっとNDS/サンウルブズにいた時期があります。

この時点ですでに、第三次トレーニングスコッド/NDSに入った選手はガンガン入れ替わっていきそうな雰囲気がしますよね。
で、この表の使い方として、ここに入っていない情報も踏まえて読むということもできたりします。ポジションを掴んでいたように見えた石原選手、サンウルブズには出ていたのですが、今季サントリーで一度も試合に出ていません。サントリーの沢木HCは今季、本来HOの堀越選手と森川選手を起用していました。その堀越選手はJJの代表においてHOで起用されており、森川選手は二度合宿に招集したのみです。…何かあるんですかね?

HO (フッカー)

 発足当時、堀江・日野・木津の三人でスタートしたポジションですが、エディー時代に控えHOを勤め続けた木津選手はあまりその後呼ばれていません。この間に庭井選手・坂手選手が台頭してきました。サンウルブズで坂手選手は契約が一度切れた後再招集されたりと色々ありましたが、着実にJAPAN Aクラスからキャリアを積み上げ、今は堀江選手に次ぐ二番手になっています。先に頭角を現した庭井選手は2017年サンウルブズの試合中に大けがを負います。そして2018年ハイランダーズのデベロップメントチームでもケガ。そうしているうちにどこで使われるのか不明ながら堀越選手も呼ばれました。彼も坂手選手と同じくJAPAN Aクラスからの昇格。
コンディション不良で堀江選手は先だっての試合に出られませんでしたが、さあ戻ってきたときにどうなるか?

PR3(右プロップ)

2015年の時は山下・畠山体制でしたが、発足当初は伊藤選手が軸となっていました。しかし伊藤選手は2017年の代表試合にて2試合連続イエローカードによる一時退場を食らって以降音沙汰がありません。しばらく浅原選手が核となりましたが今度は具・ヴァル両選手が軸になり、しかしここ最近山下選手も競争に復帰、それとは別に代表資格持ちのはずのヴィック選手はサンウルブズに選ばれています。この表を作った段階で山下選手はサンウルブズに入っていませんでしたが、先ごろ万を持して追加招集。他の突き上げという点では知念・渡邊・須藤が軸でしょうか。

LO (ロック)

 前回も書きましたが、エディー時代に顕著に高齢化していて選手がごっそり入れ替わったポジションです。大野選手は代表に呼ばれたものの、だいたいコンディション不良・ケガ離脱で機会を得られませんでした。他方トンプソンはケガが多発したときに一週間限定で復帰、そして鬼神のごとき働きを見せます。
LOには梶川/アニセ/谷田部/ウヴェ選手がスタート当時から入りましたが、サンウルブズで台頭していたのはリアキ/ウヴェ選手。アニセ選手は家族の都合でNDSのみ参加。そこでリアキ選手が重度の脳震盪を起こしてしまい1年以上離脱します。彼は代表資格が取れるのか取れないのかわかりませんが、現在代表系に声がかかっているわけではなく、まずヴィンピーが台頭。そしてウヴェ/アニセ選手はずっと呼ばれ続けていますが……そこに2018年サンウルブズのレギュラー、ハッティング/ムーア選手が資格を得てどうなるか。また谷田部の代わりに大戸がケガ時に追加招集されるようになりました。一列後ろのフランカー/NO8の兼任ができる選手が多いことも相まって、はたして何がどうなるか読めないポジションです。

FL・NO8 (フランカー・ナンバーエイト)

Q.何が始まるんです?

A.第三次大戦だ

マフィの裁判の進展がわかりませんが、彼の状況を差し引いてもここはカオスすぎます。代表随一の激戦区でしょう。若手海外ベテラン入り乱れています。
あと選考を見るに面白いのは松橋選手とかでしょうか。一度大けがを負ってからサンウルブズにも入っていませんでしたが、トップリーグのシーズンを経てNDSとして復活しています。そういえば三村選手もサンウルブズ中に大けが負ってからその後が続いてないな…とか色々。

SH (スクラムハーフ)

FW第三列から打って変わって、「いつか見た顔」だらけです。
なお内田選手はせんだってサンウルブズに追加招集。やっぱりそれでもどこかで見た顔です。茂野選手がいない時期が長かったのは、2017年にサンウルブズや代表の試合でやらかしたこと、そして移籍承諾の件でトップリーグに出られない時期があったためではあります。でも復権はした形

エディー時代は日和佐田中矢富……でしたが、一応内田茂野流が出てきた形ではありまして、しかも斎藤という新星も出てきた……と思っていたら日和佐がまた戻ってきたという状況。

FH (フライハーフ)、SO(スタンドオフ)

少なっ!
田村優松田両選手が現在そのポジションを取っていますが、山沢・小野選手の復帰が定期的に望まれているポジションであります。

2017年ごろは本当に色々あって、クリップス選手がサンウルブズで正FHを務めていましたが、フィットし始めてさあこれからというときに膝の大ケガを負ったりとか、小倉選手がチームでFHとして出ていないとか、田村煕選手がサンウルブズで一度試合に出たがその後全く使ってもらえずNDSも途中「諸事情離脱」、その後茂野選手同様移籍にまつわる色々で一年出場できず…
気が付けば田村優/松田体制になっていました。ところが松田選手は所属チームでCTBを務めており……ここに何か引っかかる人が多い。そのチームでFHを務めているのは山沢選手で、彼はエディー時代に特別な才能を持つ選手という事で代表合宿に若くして呼ばれた選手です。ケガがなければ2015年W杯に連れて行ったとも。さりとて、山沢はJJ体制において呼ばれてはいるのですが、とにかくチャンスを掴めていません。海外チームに留学に行くもやはり試合に出られずケガもし……さてどうなるのか。

CTB(センター)

ラファエレとトゥポウという、コカ・コーラの選手二人が軸となるポジションです。ここにきてトゥポウ選手はFBもできることを示し、彼はどこでプレーするべきなのかというのもカギになりそうです。
立川選手は代表の共同キャプテンをやっていた時期もありずっと出ていたんですが、オーバーワークかコンディション不良が増え、ここにきて落とされました。代わりに入った形の中村選手はJAPAN A代表からキャリアを積みサンウルブズも経て代表に上がってきた、まさに丁寧に育成された選手です。
……といいつつ、トレーニングスコッドにゲイツ選手が追加で入っている。そこそこ競争厳しいポジションになりそうですね。

WTB (ウィング)

Q.DASH山中?

A.第三次のスコッドでウィング扱いでしたから

尾崎選手、実はJAPAN Aクラスからそこそこ呼ばれている選手なので、実は特に今回のトレーニングスコッド参加に驚きはありません。
あとはスーパーラグビーのチーフスが決まった「ロムーの再来」ことアタアタ・モエラキオラがどう化けるかと、サウマキ選手のカムバックはあり得るのかというのも興味あり。てかマシレワ選手をサンウルブズ準備とはいえNDSに呼んだのは、2019年以降を見越しての事なんですかね?

FB (フルバック)

本表にはのっていませんが、CTB枠で出ていたトゥポウ選手が代打でFBとして出場、結構しっかり務めたなんていうこともあり、ここにきて松島・野口以外の選択肢が出てきたところです。ってか一時期流れたフィルヨーンが代表可能ってのはなんだったのか。
あとアンドレ・テイラーに期待する声もそこそこ見ますが、宗像サニックスでフルに出られているわけでもなく…で、全員に先駆けてファンデンヒーファーが真っ先にサンウルブズと契約。さあどうなる。

いかがでしたでしょうか。こういった表を見て皆様がどう思うか?何の情報を乗っけるのか、そのうえで何を考えるのか?
それだけぶん投げていったんこの企画は筆を止めます。
~後編了~

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