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確実にお客様に商品が届く、商品開発法

宇宙一外食産業が好きな須田です。
 
先だって、古くから交流のあるクライアントに、久々に会って何件か店舗視察をしました。
 
コロナになり3年ほどあえていなかったので、楽しい時間を過ごすことが出きました。
 
 
2件目のお店を視察しているときにそのクライアントが、これからJRのある駅にあるお店にいかなければならないと言い出し、よかったら一緒に来てほしいとお願いされました。
 
勿論二つ返事で承諾をし、これから向かうその町に気になるお店があるのかを聞いたところ、なんと、共通の友人であるコンサルタントの直営店があり、そこに招待されているということでした。
 
 
その店というのは都内の JR の駅から徒歩3分の好立地にある担々麺の専門店でした。
 
 
なぜ私のクライアントがその共通の友人であるコンサルタントの直営店に招待されたのかと言うと、実は、このクライアントの彼の地元で担々麺の専門店を20年余り経営しており、そのコンサルタントは自店の担々麺についてアドバイスを求めるそのために、わざわざ北陸から彼を招待したわけです。
 
 
私はたまたまクライアントと一緒に店舗視察としていた関係で、そのコンサルタントの直営店にお邪魔することになりました。
 
 
当然、このコンサルタントは驚いておりました。
 
久々にお会いしたそのコンサルタントの方は、私よりもベテランで実績も十二分にある素晴らしい方でした。
 
このコンサルタントの店に向かう途中で担々麺専門店の状況をうかがい改善したいポイント困ってるポイントなどを伺い、ある程度の状況をイメージしていきました。
 
ほどなくしてお店に到着しましたが、驚いたのは休日の夜8時にお店に着いたのですが JR の駅から徒歩3分の好立地にありながら、なんとノーゲストでした。
 
天気も問題なく寒くもないこの休日の夜の8時に、お客様が1人もいないという事実だけで、多くのことが理解できました。
 
スタッフが2名カウンターの中におりましたが、我々の入店に際に軽く会釈をするだけで、これといって元気な挨拶もなくお迎えの感じはありませんでした。
 
休日の夜8時にお客様が1人もいないということは、経営的には非常に厳しい状況であることは容易に想像がつき、またそのお店の人気の度合いも測れるそんな状況です。
 
私のクライアントが券売機に向き合い、じーっとボタンを見ながら次々とオーダーを入れてきます。
 
担々麺と、ビールと餃子のセット、汁なし担々麺など、いくつかの商品を頼みました。
 
コンサルタントの方を挟むようにクライアントと私が座り、商品の到着を待っていました。
 
その間も我々は、カウンターから調理工程をずっと見ています。
 
いくつもいくつも不思議に思うところがありましたが、それはそれ、ここのお店のやり方なんであろう考えることとして、ずっと観察しておりました。
 
 
最初に担々麺が出来上がりました。
 
見た目は一般的な担々麺と同様チンゲン菜と野菜が乗っていて、肉味噌が申し訳なさそうにほんの少し乗っている程度です。
 
食欲をそそる香りもなく、胡麻の風味なども感じられなく、スープがゴマで濁った上に ラー油が少し乗っていると言った姿でした。
 
次に汁なし担々麺が来ました。
 
汁なし担々麺も普通の担々麺も、提供時に食べ方についてのアナウンスもなく、我々はたまたま食べ方を知っているのでよくかき混ぜて食べましたが、私たちの後に入店した男性客も汁なし担々麺をオーダーしましたが、よくかき混ぜることをせず、サッとかきまぜただけで食べ始めようとしていました。
 
その結果、食べ始めた途端にスタッフに向かい「スープかお湯をもらえますか?」と聞いておりました。
 
スープを少しもらい、汁なし担々麺にかけていたので、そこで「その担々麺はよく混ぜると美味しくなりますよ」と声をかけて、おすすめしたところ、よくよくかき混ぜ出しました。
 
その姿を見て安心をして、私も汁なし担々麺をかき混ぜながら味のバランスを想像していましたが、不思議なことにゴマのペーストは入っていないように思えました。
 
私は必ず商品が到着したら食べる前に香りを確認しますが、その香りが食欲をそそる事はなく、正直ちょっとつまんない感じの香りでした。
 
独特の臭みを感じ、一瞬五香粉の香りか?と思いましたが、そうではなく獣臭が原因とすぐにわかりました。
 
 
次に麺を一口食べましたが麺は太麺で結構固く、おそらく担々麺も汁なし担々麺も同じ時間でボイルしてるんでしょう。
 
汁なし担々麺は麺を洗うので普通の担々麺よりは長めに茹でないと、洗った結果、麺の組織が締まってしまうとことになりますが、その事実を知らないのか意図的にしているのかはわかりませんが、かなり組織が締まった状態の麺でした。
 
 
その麺がストレート系で、汁なし担々麺の調味料が少ないこともあり、ほとんど麺に絡まなく旨味が口に飛び込んでくることはなく、正直非常に残念な商品でした。
 
 
肉味噌も独特の癖があり、この原因は獣臭ですが、お世辞にも美味しいとは言えませんでした。
 
 
勿論ここにいるのは全員がプロですから、忖度することはなくどんなことも正直に伝えておりました。
 
次に担々麺を試食しましたが、こちらも痺れる辛さもなく、ラー油の辛さもなくゴマのコクもなく調味料の旨味もなくという状況でした。
 
 
そこでまず肉味噌を見せてくださいとお願いをして、少しだけ小皿に取り分けてもらいました。
 
 
肉味噌が届いて一目見たところ、 通常担々麺で使用する肉味噌には必ず入っている甜麺醤が入っていなく、ただゴマ油とラー油と豆板醤で炒めた肉味噌でした。
 
肉味噌に旨味の元となる調味料が入っていない状況で提供されていました。
 
またひき肉の炒め方もセオリーに沿っていなく、炒め方が足りないので、肉の臭みを飛ばすこともなく、十分に水分と臭みが飛んでから調味料を入れることが四川料理の基本中の基本ですが、そのような状況で調味料を入れたわけではなく、おそらくほぼ肉の色が変わったところで調味料を投入して終わらせたと簡単に想像ができる、完成度でした。
 
しかも、ひき肉が固まっており、大きな粒と小さな粒が混在しているよう状態で、肉味噌としてはお話にならない程度の完成度でした。
 
クライアントと共通の友人であるコンサルタントが、商品に関してお話をしてましたが、コンサルタントが汁なし担々麺が混ぜると固まってしまうと、それが課題なんだと話していました。
 
 
その答えは簡単にわかることなので、それはラー油しか入っていないので麺が油を吸ってしまい固まると伝え、それと肝心の芝麻醤がないことも原因の一端にあると伝えました。
 
 
汁なし担々麺に使用する芝麻醤は、担々麺に使用する芝麻醤よりも緩くする必要があります。
同じものを使用すると固すぎるので、もっと緩く仕上げる必要があります。
 
芝麻醤一つでも、これぐらいの違いと気の使い方が必要なんだという話をしました。
 
この汁なし担々麺は、芝麻醤も入っていないので、これは担々麺というよりは麻辣麺というほうが正しいなぁ、もしくは、ほぼほぼまぜそばに近いなぁとも思いました。
 
 
汁なし担々麺には芝麻醤が入っていないので当然コクも旨味も足りません。
 
麻の痺れる辛さもなく辣の唐辛子の辛さもなく、ただただ多少汁気のある豚肉の臭みが絡まった、ただ辛いだけの麺でした。
 
 
次に担々麺を食しましたが、これも同様に肉味噌の臭みが全体に回ってしまい非常に食べにくい商品でした。
 
 
こちらは芝麻醤が入っていましたが、おそらく芝麻醤は仕込みをすることなく、納品されたものをそのまま使っているようです。
 
 
私は今年の夏だけで、4店舗分の担々麺を開発しましたが、その4店舗すべて異なった芝麻醤を使用し、異なったレシピで旨味成分を加えてました。
 
 
担々麺は構成要素がシンプルなだけに、それぞれに異なった旨味を持たせて、最終的に混ぜることで、どんぶりの中で完成させることが特性の商品です。
 
おそらくこのコンサルタントの方は、そこまで担々麺に関する洞察がなかったのでしょう、それが原因となり完成度の低い商品を提供しているため、休日の夜8時にノーゲストという状況を引き寄せていました。
 
 
担々麺も汁なし担々麺も圧倒的に旨味が足りなく、全くもって完成度の低い商品でした。
 
 
 
そこで友人のコンサルタントに、この商品の弱点をレクチャーしたところ、なんと、「いやいやいろんな考え方があるからね、須田さんの言うことも一理あるんだけれども、そもそもスープの旨味が出てないんだよ、問題はスープなんだよ!」と言ってきました。
 
根本原因がスープと感じているということは、彼は担々麺も日本のラーメンの一種として認識しているようです。
 
担々麺と一般的な日本のラーメンが、全く違っているものと認識していないようです。
 
 
普段からこのコンサルタントの彼は、「コンサルタントがアドバイスをしても言うことを聞かないクライアントがゴマンといる」と、酒を飲みながらよく愚痴っていますが、なんとその彼自身が、私がアドバイスをしたにもかかわらず、聞き入れることなく、「いやいやいろんな考えがあるんだよ」ということで、自身の考えを顧みることなく持論を展開し、その場で店長に「スープをしっかりと取れ!」と指示をしていました。
 
海外からきている厨房スタッフに、「スープをしっかりと取れ」といっても、スープの取り方を知っているとは思えず、本末転倒のような気がしてしまいました。
 
このようにアドバイスを聞くこともなく、持論を展開するのならば、我々2名がお店に行くこともなく、ご自身でコンサルティングなさればよろしいのですが、何かを確かめたかったんでしょうか、我々の意見も一応求めていました。
 
 
と、いうようなことがありましたが、この出来事から学べることは何かを考えてみます。
 
 
それは、コンサルタントといえども、他人の意見はなかなか聞き入れにくい、素直に取り組めないという現実があるということです。
 
 
専門家であるコンサルタントでさえ、意見を、アドバイスを聞き入れることなく持論を展開する、かたくなに持論に執着し、正しいやり方の商品改善に向き合わないものですから、一般の経営者の方々が、持論を頑固に固執することは容易に想像ができます。
 
 
成功する方々の共通点は、素直なこと、聞いてみたことはすぐに実行してみることがあります。
 
 
商品開発と商品改善において必要なことは、まず理論的に正しい調理方法を理解すること、なぜその調理工程が必要であり、どのようにすれば素材の旨味が最大化できるかということを、理解することがまず必要です。
 
 
その次にマーケットインの思想で、お客様にとって自店の商品が大きな価値を生むためには、何をしなければいけないかということを、真剣に素直に考えることです。
 
 
セオリーに沿った正しい商品を作り上げる、それをお客様に価値ある一品として提供する、そのことを繰り返すことによって、お客様の反応を見ることができ、商品を改善することができ、業態をブラッシュアップしていけます。
 
今回は、コンサルタントでさえ間違えてしまった事例を紹介しましたが、どうか皆さんも同様のミスを犯さないように、常に商品について学び実践し、正しい調理知識とマーケットインの思想で商品を開発してください。
 
そしてお客様に提供してみて、その反応から商品をブラッシュアップするテストマーケティングの期間を必ず設けるようにしてください。
 
そうすれば、必ず商品はお客様に届きます。

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