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脳にダメージを与える要因

そう聞いただけで、私たちは健康よりも仕事の面で不安がつのります。

なぜなら、私たちはドラッカーがいうところの"知識労働者"であり、その仕事の殆どは

 脳の働き

に依存しているからです。

私たちITに関わる業種の場合、仕事は手ではなく脳で行います。手は、ただその仕事の結果をアウトプットしているにすぎません。脳が仕事の大半をこなしているのです。

だからこそ、脳に深刻なダメージを与える要因があるのであれば、それを早々に解決し、回避し、常に健全な状態を保てる環境に身を置かなければ、決して長続きしないことは誰の目にも明らかなことでしょう。

あるいは、あなた自身がその要因になっているかもしれません。その点についても注意が必要です。


ストレス

自分自身を含め、部下、同僚、後輩、あるいは上司に対してストレスを与えるようなことはしていませんか?

ストレスとは、すなわち個人が考えている「テリトリー」を侵害することによっておこる摩擦とも言えます。そしてこの摩擦は、そのまま脳にダメージを与えることがわかっています。

 「評価の仕方がおかしい」
 「仕事の割当て方がおかしい」
 「人間関係の距離感がおかしい」

等、踏み込みすぎても離れすぎてもそのテリトリーへの接し方が「おかしい」ことによって、人はストレスを貯めていくことになります。

たとえば、うつなどによって業務復帰できないまでに心的障害を背負ってしまうケースでは、

①仕事を与えられた。
②でも、今の自分の能力では自信がない。
 (ここで仕事の割当て方に不信感を抱く)
③誰に質問していいかわからない。
 忙しいを理由になかなか質問させてもらえない。
 (チームや組織の人間関係の希薄さが原因で孤独感を感じる)
④上司やリーダーもフォローしてくれそうにない。
 (抱え込んでしまい、あるとき「諦め」が原因で吹っ切れると鬱化する)

真面目であればあるほど仕事の緊張感が切れた瞬間、一気にあふれ出てきて鬱化することは珍しくありません。

昨今、社会のあちこちで特にこのようなケースが多いように見受けられます。うつ病や依存症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの心の病も、こういったストレスによる脳内変化が原因といわれています。

厚生労働省によると、うつ病の生涯有病率(これまでにうつ病を経験した者の割合)は日本では3~7%、また自殺者の4割強がうつ病と認定されています。これは増加することはあっても、減少することが無いのが現状です。

平均でこの数値ですから、環境が整えば10%を大きく上回るケースだってあるでしょう。決して他人事ではありません。

今のご時世、うつ病を発現する前のストレス予備軍も、かなりの数がいるのではないかと推測されていますので、既にストレス源に直面している人はその何倍いることでしょうか。

ストレスを溜め込み過ぎてしまうと、精神的にも、脳の働きからみてもダメージを受けてしまいます。可能であればストレスの原因となっている人間関係をうまく整理したり(解決できなければ人事部に訴えたり、職場を変えるのも1つの方法)、運動や歌などの趣味を思いっきりやってストレス解消したり、ストレスをコントロールすることは脳の働きを維持するのにとても大切です。

そうしなければ『脳がダメージを受け続ける』ことになります。それは転職をしても影響を受け続ける結果につながりかねません。早々の解決が必要です。


アルコール

「ビールを一杯飲むと脳細胞が100万個死ぬ」なんて話が出回ったことがありましたが、これについては科学的な調査の結果、

飲んでも、飲まなくても、ピークを過ぎた20歳以降、
150億個と言われる脳細胞は減少の一途をたどる

ことが報告されていますので、実際にはアルコール自体が直接悪影響となることはありません。

しかし、

 適量なら飲酒は健康にいい

――という常識を覆して、少量でも長期に渡って飲酒を続けると脳がダメージを受けるという、酒好きにはショッキングな研究結果が報告されました。

2017年6月にブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)で発表されたオックスフォード大学とロンドン大学ユニバーシティーカレッジ(UCL)の最新研究によれば、週当たり14~21単位のアルコールを摂取していた人は、記憶や空間認知をつかさどる脳の部位である海馬が萎縮する確率が、飲まない人の3倍も高かったということです。

ちなみにイギリス政府の定めたガイドラインでは、飲酒は週に14単位以内にすべきとされています。

1単位は純アルコール量で10ミリリットルとされ、度数4%のビールなら250ミリリットル、13%のワインなら76ミリリットルに相当。研究チームが分析対象としたのは、健康でアルコール依存症でない男女550人の30年間にわたる追跡データ。調査開始時点での平均年齢は43歳で、被験者に対しては定期的に認知能力の検査が行われました。飲酒や喫煙の習慣、病歴や教育、身体的活動といった点についても並行して調査が行われました。

分析によれば、最もリスクが大きかったのは週に30単位以上飲む人。14~21単位の人も、あまり飲まない人や全く飲まない人と比べると海馬が萎縮する兆候はずっと多く見られたそうです。

図23

もちろん、これだけ因果関係を決めつけるのは尚早ですが、相関関係に何かしら意味がありそう…と言うところまでは見えてきたようにも感じます。


睡眠不足

慢性的な睡眠不足が、脳内の「食作用」を担う細胞を活性化させ、シナプスの分解を促進させる、という研究結果が発表されました。さらに睡眠不足は、アルツハイマー病などの神経変性疾患を引き起こすリスクも高くする可能性があるということです。

何日も眠らない日が続くと次第に考えがまとまらなくなり、まったく仕事や勉強ができなくなる──。

そんな経験をみなさんもしたことがあるかもしれません。

私も、最初に就職した職場での仕事がきっかけでショートスリーパーになってしまいましたが、以降20年近く慢性片頭痛が続き、24時間365日、たいがい頭の中で鈍痛が響いています。

睡眠不足が続くと、気力も体力も思考能力も著しく低下してしまうのを実感しますが、さらに恐ろしいことが脳内で引き起こされていることが、マウスを使った研究により確認されました。

「脳細胞の自己破壊」

なんとも恐ろしいフレーズです。

これまでの数々の研究では、睡眠不足とアルツハイマーなどの神経変性疾患の高い相関関係が確認されており、睡眠不足で蓄積されるタンパク質の種類もいくつか挙げられています。

睡眠のクオリティ向上が神経変性疾患の予防につながるかは定かではありませんが、慢性的睡眠不足は疾患に関連するタンパク質の増加要因にはなっていることは確実です。
 
現代は、長時間のデスクワークによる過度の集中状態やストレス、パソコンやスマホの画面を見ることなども、自律神経の中枢を疲れさせる原因になってしまいます。

筋肉であれば、筋肉痛というわかりやすい疲労のサインがありますが、自律神経の疲労は自覚しにくく、どんどん蓄積されていきます。その結果、疲労感や意欲減退など、漠然とした身体の不調(不定愁訴)として出現します。

漠然とした不調は、「発熱」「痛み」と同じく、脳が発する生体アラームのひとつです。

 「最近なんとなく疲れやすい」
 「仕事でうっかりミスが多い」
 「気分がふさぎがち」
 「やる気が起きてこない」

など、不調に悩まされることはないでしょうか?
それらは脳に疲労が溜まっているサインといえるのかもしれません。


最後に

仕事は確かに大切です。

仕事しなければ、会社は存続できませんし、
仕事しなければ、生活もできません。

しかし労基法等でも定められているように、仕事の量と質は常に「適切」でなければなりません。

ついつい人によって偏ってしまうこともありますが、この属人的な「ついつい」をなくさない限り、従業員全員が安心して仕事できる環境は構築できません(「ついつい」と言っている時点で、管理が行き届いていない証拠ですから)。

仕事を

適切な部署(役割)にあたえ、
個人の能力と難易度が適切となるよう調整し、また
その量が従業員全員に対しても適切となるよう配分する

これが、組織において管理責任を持つものの責務と言えるでしょう。
能力と難易度については、常に成長を促すことが大前提ですので、

 能力×1.2 = 難易度

くらいで見ておくとよいでしょう。それ以上求める場合は、明らかに適切からかけ離れていると言わざるを得ません。

もし、本人に向上意欲が無さ過ぎて、与えられる仕事が少ない…と言うのであっても、それを向上させるのは上司であり、会社の責任です。まずは様々な手を尽くさなくてはなりません。その努力をしたうえで、それでも向上しなければ個人の評価が著しく下がるだけの話です。

また、量については、「人」を見て決めるのではなく、役職や役割ごとに均一化しなければなりません。なぜなら、給与体系がそうなっているためです。

同じ難易度の仕事を

Aさんは、5の量を5倍の速度で仕事した。よって残業はありません。
Bさんは、1の量を0.5倍の速度で仕事した。よって残業代は倍支払われる。

というのは適切と呼べません。明らかに不公平・不平等となってしまいます。Bさんの役割定義に問題があるか、Aさんの役割定義が低すぎるかのどちらかと言えるでしょう。

 チームリーダー(マネージャー)として、上司として、
 みなさんの組織は、"仕事"を適切に測って、適切に配分していますか?

こういう点を、きちんと「ヒト」「モノ」「カネ」の一環として見てあげていれば、そもそもストレスが限界値を超えて鬱になってしまう人はそうそう出てきませんし、酒に逃げて溺れる人も出なければ睡眠障害で苦労する人も生まれないと思います(まぁプライベートな問題は当人が片付けるものだとして)。

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