新人には教えてくれない報連相
報連相。
「名詞交換」や「電話応対」と同じく、社会人になるとまず真っ先に教えてもらうスキルの三種の神器の1つです。
いや、大手企業ならそうかなー?と言うだけで、昨今のメガベンチャーなどではどうなのかわかりません。むしろ、今、新人に求められているニーズが以前と違うならちょっと知りたいです。
ですが、個人活動ならともかく、1つの課やグループで総数15名くらいを超えてくると、やはり組織的な活動も多くなってくると思います。昔…東京大学とPHPだったかな?ちょっと忘れてしまいましたが、どこかの研究で
1人で管理できる組織人数は平均7~8名(自身含め)
って話を聞いたことがあります。それ以上は、1人の管理者だけ回そうとしても、どこか組織運営が疎かになったり、杜撰になったりするようです。
こうなってくると、リーダーとなる人は、よほどしっかりした情報網を作らないと、必ず組織的な活動にほころびが出てきます。もちろん、ピラミッド構造が構築できていれば、サブリーダー(課長には係長?みたいな)が分担してくれているかもしれませんが、そういった階層的な構造を持つと、なおさら「報連相」の仕組みが大事になってきます。
正直、新人が数時間軽く教わった程度で掌握できるような簡単なスキルではないと、私は考えています。
報連相って?
いまさら言うまでもなく、「報告」・「連絡」・「相談」の3行動のことです。ですが、
「じゃあ、報告ってなに?」
「連絡の定義って?」
と言われると誰も答えられません。「なんとなく、感覚ではわかってるんだけど…」と言う人はいるかもしれませんが、言語化できないということは、実体がつかめていないということ、すなわち正しく再現できないということです。実はわかってない…のと大して差はないのです。
しかも(特に)技術者に陥りやすいのは、こういう話をするとすぐに技術や手段をイメージしてしまって、本質からどんどん離れていってしまうのは、ちょっとやるせなさを感じます。まぁ、気持ちは痛いほどわかるんですけど。問題はそこじゃないのに…と寂しくなってしまいます。
報連相は、コミュニケーションスキルにおいて習字の『永字八法』や空手の『中断突き』みたいなものです。
いわば基本にして極意です。
だからこそ、「報連相 失敗」などでググってみると、多くの記事を目にすることがあるのです。もし、報連相できないことがちょっとしたケアレスミス程度の問題であれば、ここまで騒がれません。
先日お話したように、ちょっとした「進捗報告」1つとっても、マネジメントに大きな影響を与えかねないことは往々にして存在します。
過去に、私が何らかの役割で途中参画した大炎上トラブルプロジェクトのなかで振り返った際の反省点の一部を見てみると、
という内容があがっていました。
3,6,7,9番目なんかは、「報告」の問題ですね。
こうしたことから読み取れるのは、簡潔にまとめると
・思い込みのままにしない
・コミュニケーションを密にする(周知(展開)/連絡)
・言うべきことはすべて言い切る(隠さない、物怖じしない)
・一度言ったら終わりではなく、何度も繰り返す
・1人に言ったら終わりではなく、伝えるべき人に伝わるまで確認する
・報告の内容とタイミングを間違えない
・心配事は抱え込まずに表面化する(警鐘/相談)
ということになるでしょうか。
要するに、報・連・相(+確)が100%機能していれば、コミュニケーション起因のトラブルはその大半が未然に防げたということになります。
実はこの報連相がきちんとできるだけで、ビジネスコミュニケーションの大半が成立する
「マジで?」と聞かれれば
「マジです」と自信を持って答えられます。
たとえば、「報告」と言うのは、活動するためのトリガー(きっかけ)が外部より与えられた場合に限り、その活動状況をフィードバックとして返す、ただの言葉のキャッチボール、ただの返事とまったく同じ原理です。
上司に「おはよう」と言われたら「おはようございます」って返しますよね?では、それは即返しますか?5分後に返しますか?それとも、1日後に返しますか?そして、それはどう返しますか?「こんばんは」っていいますか?「チィーッス」っていいますか?
報告も、指示と言う相手からの挨拶に対して、「適切なタイミング」で「適切な内容」をフィードバックする行為です。原理そのものは全く同じなのです。
こうして日常のコミュニケーションと絡めてみると、「普通に」「適切に」、こうした本質だけ守れば大半が成立するようになってます。
報告(応答:フィードバック)とは
ひとことで言うと、
仕事の指示・依頼をきっかけにして行われる活動に対する
事実情報のフィードバック(応答・返答)
ではないでしょうか。
何かを他人に依頼・指示すると、結果どうなったのか聞きたいですよね。上司や先輩と言う立場で指示を出す経験をしたことがある方ならわかるかと思います。
結果まで相当時間がかかるようなら、失敗させないためにも、途中どうなっているのか聞きたいですよね。違いますか?最後の最後に「ダメでした」って聞きたいですか?おそらく、そんなことはないと思います。
「報告」業務で遵守すべきポイントは
・「タイミング」と「頻度」に意識する
・まず「事実」のみを語る
・根拠のない報告(の仕方)はしない
です。結果報告のほか、中間報告の必要がある場合も懸念し、常に必要かどうか確認をしましょう。また、基本的には「定期的」であることが大事ですが、『悪い報告』の場合は即時おこなわなくてはなりません。悪い報告には、必ず解決するためのシナリオも用意しましょう。でないと、「どうするつもりなんだ!?」と怒られることにもつながりかねません。
また、報告は聞き手(依頼者/指示者)が聞きたい情報でなくてはなりません。コミュニケーションを成立させることが第一です。自分の思いや意見があっても、まずは事実を伝えましょう。意見等は、事実を伝えた後に最後にそっと添えるだけにします。報告の中で自己主張とかはNGです。
そして何はともあれ、「根拠」がない報告は止めてください。
よくあるのが、「いまどのくらい?」「80%です」「その根拠は?」「…エート」と言った、慣習に則って、考えもせずに多用する報告方法です。これは事実80%かも知れませんが、聞く側にとって事実情報ではありません。信用に足る根拠がないからです。
報告の必須テクニック「原則、即答」の中で
内心どう思っていても、姿勢は常に前のめりで答えてください。ただし、先述の3前提「タイミングと頻度を意識する」「事実のみ話す」「根拠のない報告はしない」は守らなくてはなりません。そのうえで、確度の高い事実情報であることが大事です。
ですが、色々とその場で整理しきれていないケースもあると思います。
そんな時は…
■ 報告内容に自信が伴わない場合
「“今は”○○です。」
「内容が異なるようなことがあったら随時報告します。」
と言って、少し時間をもらうようにしましょう。ここで絶対にやってはならないのは、『無言で固まる』ことです。報告を受ける側の時間も同時に浪費しているということを念頭に置いて、早々に解放してあげなければなりません。この回答は、"現時点で"という逃げ道を用意できるため、報告内容が誤っていたりしたら、「訂正します」と言いやすくなります。それに、一度戻って再確認するだけの時間的余裕も作れます。
■ 回答すべき情報が全く無い場合(わからない場合)
「すいません、すぐ回答できないので少し時間をください。」
と言って、時間をもらうようにしましょう。"正直"+"前向き"な姿勢はいつの時代も、相手に対して加点要素となります。とは言え、頻繁に使っているようでは、情報整理能力を疑われますので、1度のプロジェクトで1度だけ使える特別なレアチケットと思うと良いでしょう。
また、大トラブルで緊急性が高い場合は、逆効果になりかねませんの注意が必要です。期限ギリギリになって「やっぱり無理でした」と言うのはさらに無責任で、常識的に考えてもタブーです。
報告の必須テクニック「やってはいけない」事例
■「○○だと思います」「○○って聞いた気がします」
このように風聞形式にしたり、自分に責任が無いかのようなあいまいな回答はNGです。そもそも事実情報とは呼べません。姿勢としても、自分だけは責任を避けたいとバレバレな逃げ腰回答は信頼関係を一気に崩すことになりかねません。
■ 「わかりません」「知りません」「自分の担当ではありません」
確かにそうなのでしょうが、報告を受ける側としては、何かしら報告ができると思っているから指名されているわけです。このように、期待値を一切得られない形で淡白に会話が終了してしまうようなコミュニケーションも原則NGです。本当にわからなかったとしても、わからないなりに回答することは可能です。
「確認してまいりますので少々お待ちください」と言って確認してきたり、「担当の者に変わります」といって、報告できる担当者を呼び出すなど、方法はいくらでもあります。
■ 「…」沈黙や無反応、無視
本人に悪意があるかどうかは別として、沈黙は『活動の停滞』を意味します。自分自身だけでなく、回答を待つ側の時間をも等しく浪費する、とにかく生産性を欠いた行動となりますので、誰にとっても不利益しかありません。これは一番やってはいけない姿勢です。
時間をかけるにせよ、すくなくとも相手を早々に開放することは、報告する者の義務と言えるでしょう。
連絡とは
ひとことで言うと、
持っている情報が、第三者にとっても
知っておいてもらわなければならない時の情報供与
ではないでしょうか。
そもそも「知っておいてもらわなければならない」ものでなければ、周知・連絡する必要は全くありません。「知っておいてもらわなければならない」ものだからこそ伝える手段が必要になってくるのです。
だからと言って、「連絡」で失敗しやすいのが、「伝えた」という事実だけで満足してしまうことです。コミュニケーションの原則は「伝えた」かどうかではなく、「伝わった」かどうかで測られます。
「伝えたつもりだけど、伝わってなかった」
という事故は頻繁に起こるコミュニケーション不良の最有力候補の1つです。「連絡」で最も重要なことは、「伝える」だけでなく「伝わったことを確認する」ことです。伝わったことを確認して、初めて「情報の共有」と呼ぶのです。
連絡の上手さは”情報戦”の上手さ
野球のサインがそうであるように、あるいは戦争における暗号電文がそうであるように、組織の有機的活動において、「連絡」が緻密で正確であるほど、組織の相互認識力は高く、一致団結した活動がしやすくなります。
「統率がとれた」「一糸乱れぬ」と言った言葉の背景には、必ず優れた情報伝達のインフラが整備されています。
組織的活動において、連絡と言う伝達手段は絶対に欠かせません。遠足、体育祭、クラブ活動、学生時代でもそうだったはずです。必要な情報が、必要な人に、正しく伝達されていなければ、チーム活動も組織活動も成立しません。
だからこそ「情報戦」という言葉が存在します。
情報を巧みに使いこなすには、情報発信のスキルが高くないといけないからです。どんな信号、命令だったらどう動けばいいのかをあらかじめ訓練し、練度をあげておくわけです。仕事でもまったく同じです
どんな情報をどのように展開すれば、相手がどう動くのか?
どんな情報をどのように展開されれば、自分はどう動けばいいのか?
これらを定義し、推進し、管理し、コントロールするのがコミュニケーションマネジメントです。
連絡は「伝わったことの確認」が取れて初めて「連絡」と言います。コミュニケーションでいうところのフィードバックを確認する必要があるということです。
よくやってしまうのが、メールでの連絡です。
読み手が読んだかどうかもわかってない状態ですが、送った側は「読むだろう?普通は」と思って、確認を取らなかったりします。そういう人に限って読んでないメールが多かったり、そういう人に限って読まない言い訳がスラスラ出てくきたりするものです。でも、同じことをやられて一番憤慨するのも、そういう人だったりするのです。
連絡でやりがちな失敗
■ 「しゃべるのが苦手だから」と、メールを送って終わったと思ってる
この場合、伝えた気になってるだけで、送信先が読んだかどうかすら確認できていません。童謡「ヤギさん郵便」をそのまま地で行ってるとしかおもえません。メールと言う伝達手段のメリット・デメリットがわかっていないのでしょう。
■ 電話で伝えて周知するよう依頼し、自分の仕事は終わったと思ってる
この場合、伝えた側は、伝言ゲームになっていることに気づいていないかもしれません。伝言ゲームは受け手の読解力(捉え方)次第で、次の人に伝える内容が曲解されている可能性があります。そのことにどれだけリスクがあるのかわかってないのかもしれません。また、伝わっている(共有できている)かどうかの確認も必然的に怠る形になってしまいます。
相談(または質問)とは
ひとことで言うと、
よくわからない“情報”、疑わしい”情報”について
相手に問いただすこと
ではないでしょうか。
相談や質問をしなくてはならない状況とは、すなわち『自分自身だけでは、解決できない状況に陥っている = 誰かを頼らなくてはならない状況に陥っている』と言うことです。それを自力ではなく、他人の助力を得て解決しようっていう状況で、そもそもその助力の得方がわからないのでは、詰んだも同然です。
与えられた仕事を全うできなかったという事態を招いてしまいかねません。
だから、自分の身を守るためにも修得しておいた方がいいスキルなのです。なかでも新人や若手は、まだまだ先輩や上司など、他人を頼らなくてはならないシーンも多いでしょう。ますます修得しておくべきスキルと言えます。
「知るは一時の恥、知らぬは一生の恥」
何事においても、知らないままで行動できるということはありません。人は『まったく知らない』状態では、行動に移せないのです。
たとえば、みなさんはプログラミングをしたこともなく、習ったこともない状態で、いきなり「プログラミングしろ」と言われて、スラスラと開始できますか?「ググって調べればできる」と言うつわものもいるかもしれませんが、おそらくパフォーマンスは相当下がることでしょう。
つまり、効率よく「知っている状態」にならないと、仕事が破綻しやすいわけです。だから、相談や質問をします。
ですが、意外と知られていませんが、この「相談(質問)」こそ、報連相の中で最もスキルが必要になります。
質問には2種類ある
もう、「質問」に言葉をまとめてしまいますが、質問には大別して2つの方法があります。
1つは"オープンクエスチョン(開いた質問)"、もう1つは"クローズドクエスチョン(閉じた質問)"です。ですが、基本的に話を大きく広げたい内容でない限り、質問する側は、クローズドクエスチョンを選択することが望ましいでしょう。
クローズドクエスチョンとは、端的に言えば「はい/いいえ」で答えられる質問形式です。そのぶん、質問する側に
・自分なりに考える負担
・質問を作る文章力
が求められますが、どちらも自信を鍛え、成長させるためにはとても大事な要素です。なにより、回答する側の負担を減らすことに、この手法の意義があります。
たしかに、オープンクエスチョンの方が、質問する側は楽です。
なかでも「How(どうすれば)」と聞けば、質問する側は頭空っぽでも良くて、回答する側に一から十まで先負説明させることになるので、超絶楽です。何の準備も必要ありません。
ですが、回答する側はその負担を一身に背負うことになります。質問する側と回答する側、この時点でどちらの方が企業へ貢献しているかは明白なのに、質問する側の都合で、回答する側の本業を長時間ストップさせているわけです。1時間説明すれば、延べ2時間失うことになります。
その負担に見合うパフォーマンスが出せるならいいのですが、そうでないなら、安易にオープンクエスチョンを使うべきではありません。
逆に、そういった時間的制約があまりなく、且つ別の意図(親睦を深める、本質を見極める、再確認に使う、etc.)がある場合には、5W3Hを使って聞けるオープンクエスチョンの方がいいでしょう。
報連相は、仕事だけでなく、複数人で1つの目標に到達しようとする活動全般において、とても重要なネットワーク構築手段です。
新人に限った話ではなく、特定の組織に所属して、組織的活動を求められるならば、老若男女誰であっても、それなりに卓越している必要があります。
それは話す・聞くだけでなく、メールの送受信だけでもなく、様々なシーンの様々なツールで応用されていることでしょう。
たとえば、ソフトウェア開発における「設計書」は、私の中では
・工程間の「連絡」ツール
・リリース後の保守/運用担当者への「連絡」ツール
・次期プロジェクト担当者への「連絡」ツール
としての意味合いの方が断然高いと思っています。日本の場合は設計→製造→テストまで一貫して同じエンジニアが担当することも多いと思いますが、そうだとしても、時間が経てば、「あれ?あの時どうだったっけ…?」と言った過去の自分に対して"自問自答"というコミュニケーションは必要になります。そういった時の明確な伝達手段こそが「設計書」であると考えています。
コミュニケーションは伝言ゲームのようなものです。
情報の欠落や齟齬がおきれば、受け取った人の認識や判断が望むものと異なるケースも少なくありません。そういったすれ違いの一つひとつが、トラブルを巻き起こしているのだと思います。
たかが報連相、たかがコミュニケーション。新人教育で学ぶ程度のことかもしれませんが、この基礎こそが、すべての組織活動の極意ともなるのだと私確信しています。
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