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特別じゃない日

お籠り生活一日目。

猫の声に起こされる。

相変わらず優秀な目覚まし時計だ。

今日も朝から霧雨が降る。

空は明るいので気が変になりそう。

狐の嫁入りどころの話じゃない。

キッチンへ立つと、朝食用のパンが底をついていると気づく。

平生は町へ買いに下りるのだが、
今日は不図思い立って手捏ねで山型パンを作ってみる。

本当はホームベーカリーなどあれば便利だが、
捏ねている時のパン生地の柔らかい感触が堪らないので、
自ら購入しようとは思わない。

誰かが買ってくれると言うのなら、喜んで受け取る。

僕はパンを焼くのが好きだ、ケーキやクッキーなどの菓子よりも。

パンはまるで我が子を育てているかのような心地がする。

初めはボロボロだった生地が、
百回、二百回と捏ねられる間につるんとまとまり、
発酵と言う名の成長を遂げて大きくなって行く。

二回の発酵が終了した頃には最早昔の面影は無く、
大きく柔らかく、
最も愛らしい姿となる。

それを目の当たりにした暁には、
今度は情け容赦無く高温の部屋へ連行される。

そうやって酸いも甘いも経験し、ようやく美味しいパンが出来上がるのだ。

今日はそのパンに何を合わせようかと、
焼き上がる前よりワクワクしている。

ズッキーニがあるから鶏肉と合わせて照り焼きにしよう、
それを焼き立てのパンに乗せてマヨネーズをかけたら至高だろう、云々。

焼きたてのパンは格別である。

それは炊き立てのご飯と同じくらいに幸福を運んでくれる。

そうこうしているうちにオーブンが音を立てて終了する。

パンが焼き上がる。

少し皮が焦げたが中の白身はフワフワで上出来だ。
(魚の話では無い。)

両側を落として切り分けたら七切れになった。

うむ、どうも微妙な数である。

けれど、ラッキーセブン!てね。

何か良い事あるかも知れない。

続く照り焼きも焦がして、やっぱり今日はアンラッキーかも。

腹ペコの怪物は待てない。

焼きたての熱さをものともせず頬張るが、矢張り熱かった様子。

口の中の皮を少々失った。

パンには矢張りアイスカフェラテ。

小屋には基本ミルクが無いので豆乳で代用する。

と言いつつ豆乳もソイミルクか、と言う事は小屋にはミルクがある。
(どっちでも良い。)

遅めのランチとファンタジー小説片手に明るい窓の外を見る。
(ファンタジー小説は飲み物。)

降ったり止んだりの天気だが、気がつけば濃い青空が覗いていた。

洗濯物は外へ干せば良かったと思うが、
湿度がとんでもないので矢張り中干しで良かった。

今日はこんな事ばかり。

ああでもない、こうでもないと、しきりに考えを巡らしている。

そのせいで少し頭痛がする。

一度思考停止しようと、ベッドの上へ倒れ込む。

数分で夢の世界へ旅立つ。

特に何も無かった日。

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