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ユヴァル・ノア・ハラリ氏『人類の物語 どうして世界は不公平なんだろう』感想|目から鱗の連続!

【おとなもびっくり! 小学生からの人類史】という触れ込みの「人類の物語 Unstoppable Us」シリーズをご存知だろうか?

世界的ベストセラー『サピエンス全史』のユヴァル・ノア・ハラリ氏が書いた、子ども向けの本たちだ。

先日、その第2弾『どうして世界は不公平なんだろう』を読み終えた。


なぜ最初に第1弾ではなく第2弾を選んだのかは、まったくの謎だ。
(次は1作目の『ヒトはこうして地球の支配者になった』を読む予定)

とても良い本だったので、覚書を残しておく。


書籍の概要

目次は以下の通り。

  • はじめに そんなの不公平だ

  • 第1章   すべてを支配する

  • 第2章   しまった、こんなはずじゃなかったのに

  • 第3章   おとながこわがるもの

  • 第4章   死んだ人々の夢

特に大きく取り上げれているのは、今から約1万年前に穀物が栽培されて動物が家畜化され、農耕革命が起こったこと。

それによって都市ができ、文字が生まれ、学校ができた。狩猟採集の時代にはあり得なかった王国の形成がなされ、階級が生まれた。

普段の生活でつい見過ごされている私たちの生活や人生の大前提が、平易な言葉で書かれている。


特に気づきの多い部分3つ

興味深い箇所を1つ1つ取り上げていると正直多すぎるが、その中でも「これは!」と思った部分を3箇所だけ引用する。

予想しなかったことが起きはしないか、採集民はとても不安だったと思うかもしれないけれど、じっさいは少しもあくせくしなかった。自分が何を不安に思うかを考えてみてほしい。今と言う瞬間に起きていることが原因になることは、めったにないよね。たいていは、未来に起きることを考えて不安になる。
(中略)
それに対して、農耕民はいつも来月のこと、そして来年のことを心配していた。農耕民が採集民よりずっと大きい不安を抱いていたのは、選択の余地がなかったからだ――農耕民がいつでも未来のことを考えなければならなかったのは、その日に見つけたものを食べることがほとんどなかったからだ。

「逆算思考は、農耕が始まった頃からなされていたのか……!」
という驚き。

確かに、穀物を植えて育てて収穫するまでの経緯を考えたら、計画的に行動せざるを得ないだろう。


歴史上はじめての文には、哲学的な深い言葉も、詩も、王さまや神さまの物語も書かれてはいない。それは実用の退屈な書類で、所有する財産と税の納付を記録しただけのものだ。
ただし、それが退屈な書類だという事実こそが肝心なんだよ。ワクワクするようなことなら、だれも書きとめる必要などなかったんだ。みんなそれを自分たちの脳のなかで、完璧におぼえていることができたからね。「書く」ことは、退屈なことのために考えだされたものだった。

書かれた文字が大好きな自分にとっては、本当に驚くべき視点で。

もちろん最初の文字が税金に関するものだったという事実は世界史で習ったと思うが、重要なのはそこじゃない。

「退屈だが重要なことだから、どうしても書く必要があった」
という見方を初めて聞いたからだ。マジか……


物語を、人々にどうやって信じさせたのだろうか? 大切な方法のひとつは、その物語を何度でも繰り返し聞かせることだった。物語を1回だけ話しても、それはただの物語にすぎない。でも同じ物語を 1000回繰り返して話せば、人々はそれを、ほんとうのことにちがいないと思う。
(中略)
おとなも自分自身が子どものころから何度も聞いてきたので、その大きな物語を信じきっていた。そしてそれを信じたのは、おとなには怪物よりも幽霊よりも、税よりも官僚よりも、もっとこわいものがあったからだ。おとなは、「知らないもの」がこわかった。そしてたいていの場合は、自分が何かを知らないことを正直に認めるより、風変わりな物語を話すほうがいいと思ったんだ。

多くの人々をまとめ王国づくりの根底ともなった、物語というものの存在について。

「1000回繰り返せば~」の下りは、現代でも時々言われることだ。
実際問題、洗脳やマーケティングの手法としても使われている。宗教の教団や犯罪者集団だけでなく、一般的な人や企業も多く使用している。

「知らないこと」は、確かに恐ろしい。
例えば私たちは生きている限り永遠に死について知ることができないから、ほとんどの人は死ぬまで「死」が怖いだろう。


感想|この本のポイント

ここまで掘り下げて説明してくれるのが本当にすごい。

一般的な人は世界史・人類史について、こんなにも理路整然と&子どもにも分かりやすくは話せないだろう。

『サピエンス全史』に挫折した人も、このシリーズなら比較的楽に読めるかもしれない。高校の教科書より全然簡単だと思う。


この本を読んで1番感じたのは、
「不可逆的なことって、歴史上は結構多いんだな」
ということだ。

いったん農耕を始めてしまえば狩猟採集の時代には戻れないし、文字を生み出してしまったら文字無しでは生きていけない。物語や宗教や税金も、そうなのかもしれない。

それは良いのか悪いのか、そもそも「良い」「悪い」というのは何か、いったい誰にとってなのか、……

色々と考えさせられる。話は尽きない。


気になったら是非、この本を読むことをオススメする。


もちろん、シリーズ第1作目も。



他にも本の感想を書いているので、マガジンもよかったら是非。

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