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白ゆき姫殺人事件、井上真央の怪演よりびっくりしたこと

 映画「白ゆき姫殺人事件」を鑑賞。長野県で化粧品メーカーの美人OLが惨殺された。報道番組の契約ディレクター・赤星(綾野剛)は、被害者の同僚である城野美姫(井上真央)が事件当夜から行方不明との情報を得て、カメラを手に現地取材に向かう───。城野について、会社の同僚や同級生が各々好き勝手に憶測を語っていく様は、リアル・バーチャルを問わない人間関係の怖さを思い起こさせる。田舎町にありがちな、小中学校時代の失敗をいつまでも蒸し返される描写も恐ろしかった。井上真央は、それぞれが思い出す「城野美姫」を巧みに演じ分ける好演を見せている。

▼オフィシャルトレーラー(本編は面白いのに予告編がダサい)

Twitterは10年以上前から普及してたっけ?

 さて、筆者は別の視点でちょっとびっくりした。映画冒頭で、コンプライアンス意識に乏しい赤星は注目事件の手がかりを得たことに舞い上がり、その内容をTwitterの匿名アカウントでつぶやき始める。ネットの住民も即座に反応し、より詳しい情報が続々と書き込まれるようになる。

 Twitterが日本社会に浸透し始めたのが、たしか2009年頃。まだメディアでは「ミニブログ」と呼ばれていた頃で、学生だった私はスマートフォンなんて持っておらず、もっぱらPCから書き込んでいたように思う。湊かなえ氏による原作小説は2011年5月に連載開始。Twitterは東日本大震災(2011年3月)を機に即時性の高い情報共有手段として注目されたと記憶している。そこから数えても、SNSがメジャー作品で重要なツールとなるほど日本社会に定着して10年以上経つのかと気がつき、今さら驚いてしまった。単行本(2012年7月発刊)の表紙イラストでは、スマートフォンと折り畳み式携帯電話が1台ずつ描かれており、当時の普及具合がうかがえる。

 思い返してみれば、たしかにリアルの友人と相互フォローするようになったのが2010~11年頃か。その時のアカウントは黒歴史と恥じて消してしまったが、残しておけば少しは古参ぶれたかもしれない。

 2021年10月現在、ネット社会の先端ツールと持て囃されたTwitterはすっかり広告代理店にハックされて、商魂たくましいビジネスアカウントと正義感に燃えるおじさんおばさんたちが日々馴れ合ったり叩き合ったりするマウント合戦場と化している。人々の承認欲求はとどまるところを知らず、それこそ白ゆき姫殺人事件の如く、事件・事故のたびに真偽不明の噂が飛び交う騒ぎが繰り返される。10年以上かけて、日本語ユーザーの意識はどのくらい進歩したのだろうか。ただ老いただけなのだろうか。

▼参考サイト:【Twitterの歴史】Twitter15年のあゆみを振り返ってみた(WE LOVE SOCIAL、2021年3月)



 

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