そんとくさんとあっけらかん(損得さんと呆気羅漢)Pt.8

そんとくさんと羅漢ちゃんは、毎日一緒に遊ぼうというほどの仲良しでしたが、
そんとくさんはお店の忙しくなる時間、お手伝いをします。
「誰か雇って手伝ってもらったらいいやん」とそんとくさんは訴えるのですが、
お父さんの損哉さんは「そんな勿体無い」と言うし、
お母さんの得江さんも「家族で商いするのが一番得や」と言って聞いてくれません。
だから、「そんとく! 手伝ってや」と声がかかると渋々とお店に出て行くのです。

そんな日、そんとくさん家から帰りかけた羅漢ちゃんは、 
買い物に来たオジサンが 駆けてく男の子に向かって 「こら~!!今日は勉強する言うてたやないかー!!」の声に出くわしました。
 「ホンマにあいつは極楽トンボやで」 ぶつぶつ言いながらネギをぶら下げて帰って行きます。

「何や?極楽トンボって」・・・、「何やろ 何やろ どんなトンボなんやろ・・・」
知っていそうなのは町内でも物知りの元会長です。
早速らかんちゃんは向きを変え、道を渡って裏小路を抜け、竹藪の中の竹垣まで来ました。

鶯が「ホ~ケキョケキョ」と歌の稽古をしています。
元会長さんは丁度縁側でお茶をすすっている所でした。
「久しぶりやないか?」と元会長は言います。
「うん。ねえ、極楽トンボってなに? どんなトンボやの?」
「極楽トンボかー。そや、極楽に住んどるトンボや」
「どんなトンボなん?」
「ふらふら飛んどる気楽なトンボや」
「どんな色なん?大きさなん?」
「知らん!!」 めんどくさくなった元会長は、ぷいっと鶯の声を聴く真似して空の遠くを見るふりしました。

(何やろ 愛想無いなー) 羅漢ちゃんは「ほんなね~」とよじのぼった垣根をぽんと降り
 スキップします。  (昆虫図鑑見てみよう~!!) (載ってるかな~どんなトンボなんやろ)
頭の上では「ほ~ケキョケキョケキョケキョ」
赤、黄、緑、青の 艶やかな色模様の極楽トンボが 酔ったようにふらふらと飛び回っているのでした。

{続く}


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