_1_陽気なギャングが地球を回す

#1 「バレない伏線」と「全部回収」でサプライズ!:陽気なギャングが地球を回す

すがっしゅです、こんにちは。

新しくマガジン始めました!
この記事から始まるマガジン「イエスガッシュ!」です!

このマガジンでは、映画や小説等作品の「表現技法」にフォーカスして、
どんな表現であれば人は心を動かされるのか

私なりの視点で語っていこうと思っています。

私は広告代理店出身なので、広告の考え方に当てはめて考えるのですが、
全ての作品は「What to say」「How to say」の2つに分けて捉えることができます。

「What to say(何を言うか)」とは、その作品のメッセージです。
監督や著者が読者に伝えたいことのことを差します。
一方、「How to say(どのように言うか)」とは、その作品の表現です。
「What」をより深く、鋭く伝えるための、表現技法のことですね。

例えば、今年大ブレイクした「カメラを止めるな!」だと、
「What」⇒「生み出す側の妥協とこだわり」を伝えている
「How」⇒ゾンビ映画だと見せかけヒューマンドラマ
となるのかなぁと思っています。
※この辺、別の記事で解説しています。

この「What」と「How」を感じ取ることができるようになっていくと、
映画や小説をもっと楽しめるようになっていく!と思っています。
だから、この2つのうち「How」について語っていこう、という所です。
▼「What」については、別のマガジン「ソラニン」で語っています!

特に、こういうクリエイティブを構造的に見れるようになると、
企画系の仕事やクリエイター系の仕事にもかなり生かせます。

そんなわけで、これからぜひご覧になってください!

…そして早速、「イエスガッシュ!」の第1回目で取り上げたいのは、
伊坂幸太郎さんの小説「陽気なギャングは地球を回す」です。

☆あらゆる伏線を「全て回収」

小説を読んでいると、
「さあて、どれが伏線なんだ???」と予想しながら読んだりしますよね。
伏線とは、物語の先の結果をにおわせる話の筋のこと。
読者からすると、伏線が回収されたときに、「そういうことか!」と驚き、
その驚きが面白さになるんですよね。
プレゼントが嬉しいのは、モノだけじゃなく、サプライズがあったりするからです。それと同じ。人は「良い驚き」が大好きです。

だから、どの作品においても「伏線」は超重要。
この「陽気なギャングが地球を回す」も、「さてどれが伏線だ~?」と楽しみながら読んでいたのですが…

なんと、あらゆる文章や展開が、全て伏線だったんです!!
すごすぎ伊坂さん・・・

結末に近づくと、最初の1章の伏線から中盤の伏線、
全てキレイに無駄なく回収していくんです。これはすごい・・・
次々と伏線を回収していくので、次々と「良い驚き」が訪れます。
謎がどんどんわかるときの、爽快感が大きい!のです。

☆「伏線だとバレる伏線」は低レベル

伏線による驚きがとても大きく感じられたのは、
あらゆる伏線をキレイに回収していく、そのリズムから、というのも
1つの要因ではあるのですが、

もう1つ、要因があります。
それは、伏線とはまるで気が付かない伏線があったということ。

伏線は、「まさしくこれだろ!」というバレバレのものもあれば、
「え!これだったの!」という、全く気付かないものがあります。

伏線とは「驚き」を生むためのものなので、バレると意味がないも同然なんですよね。感動が半減してしまいます。
この作品では、中にはバレてるものもありましたが、多くの伏線が全く気付かせない伏線でした!それが驚きを大きくしたのだ、と思います。

☆バレない伏線を作る技術

なんで気づかなかったんだろう?と見直してみると、
気づかなかった理由を見つけました!
それは、「伏線を、本来の文脈ではなく、別の意味合いと紐づけている」から、でした。

どういうことかというと、例えば
Aという結論に驚いてもらうための伏線をA´としますと、
A´をBという話の流れに持っていくために、Bとも紐づけているんです。
そうすると、「Bの展開のためにA´はあるんだな」と記憶するので、
「伏線かな?」という疑惑が一切浮かばないんです。

何か数学みたいになったのでw、例を挙げると、
例えば次のような友達同士の会話で
前田
「昨日、友達といきなりステーキにいったんだ~」
田中
「あ、だからか!前田さ、昨日 服の袖にソースのシミついてたもんな!」
と話していた、とすると、
いきなりステーキに行った、という事実(A´、つまり伏線)は、
前田君の服の袖にシミがついてたことを田中君がなんでかな?と疑問に思っていたところの回答として働いているんだ(B)と思わせつつ、
実は、A´は「いきなりステーキで田中君の彼女と浮気していた」という結論(A)の伏線でした、というような感じ。説明むずいですねw

つまり、別の意味合いだと思わせておくことで、
本来の意味合いを隠している
ということです。

この技術は、ぜひ真似しよう!と思いましたね~…。
あえて怪しませといて、全然別の意味だった、みたいな。
誰でも騙される伏線テクニックだなぁ、と感じました!


いや~それにしても
「良い驚き」というものは、物語作品もそうですけど、広告企画だったり事業計画だったり、ビジネスにも当てはまるなぁ、と思いましたね・・。
そして、この小説を読んで思うのは、逆にいうと「全く驚きがない」、
つまり「予想通り」はつまらないものだ
ということです。

ビジネスでも「これ当たり前のこと言ってるな」
「これ世の中に普通にあるな」は面白くない!ということですね!
無意識のうちに誰でも「予想通り」に陥ってしまうものですが、「予想通りを避けよう」と意識した上で仕事をすれば、いつか多くの人々に「良い驚き」を与える仕事ができるんじゃないでしょうか!


以上、マガジン「イエスガッシュ!」第1回
「陽気なギャングが地球を回す」でした!
ぜひ読んでみてください~。

ではまた次回!

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