見出し画像

子どもを優先しながら、でも自分らしく働きたい。そのためにフリーランスを選んだ――エシカルプランナー 鈴木有希さん

フリーランスで働きながら妊娠・出産・育児と向き合っている方への、不定期インタビュー連載。第5回は、エシカルプランナーの鈴木有希さんです。

出会ったときはオーガニック・スキンケアの会社で働いていた有希さんが、フリーランスになったと聞いたのは、1年半ほど前のこと。有希さんの息子くんが、幼稚園から小学校に上がるタイミングでの転身でした。いまはエシカルイベントの企画・PRなどをしながら、フード系の新事業立ち上げにも奔走されているそうです。

保育園に比べると、子どもの帰りが早い幼稚園。環境が変わり、それまで以上にいろんなケアが必要になりそうな小学一年生。どちらをとっても、仕事との両立が難しいように感じます。そんななかでフリーランスとなった有希さんに、働き方や大切にしていることを伺いました。

仕事は好き。だけど子育てにももっと力を尽くしたい

――まずは、会社員時代のことを聞かせてください。子どもが生まれて、どんなふうに働いていましたか?

子どもが生まれたときは、オーガニックのスキンケア・ブランドを扱う会社で、PR・広報をしていました。百貨店などでエシカル系のイベントを企画・運営しつつ、社員が少ないから新規開拓営業なんかもやっていて、とにかく忙しかったですね。7名ほどのチームを持ち、マネジメントもするようになったころでした。

でも、社内で子どもがいるのは私だけだったこともあり、何があっても仕事に穴はあけられないと思い込んでいたんです。なのに、夫も仕事が忙しいから週6ワンオペで、いつも時間に追われていたような気がします。

――しかも息子くん、3歳からは保育園じゃなくて、預かり時間の短い幼稚園に通ってましたよね。

そうなんです。0~2歳は小規模保育園に通っていたのですが、卒園した後の受け皿がなくて、仕方なく幼稚園に入りました。そうなるとやっぱり、周りは働いていないお母さんが多い。「平日に遊びに行った」「習い事をしてる」なんて話を聞くたびに、うちは毎日18時まで預かり保育を利用して、何もできないままでいいのかなって、葛藤がすごかったです。

息子もときどき待ちくたびれて、半分寝ちゃったりして……抱っこしながら帰っているときに雨なんか降ってくると、本当に絶望的な気持ちになっちゃう。まぁ、一年もすると子どものほうはすっかり慣れて「家にいるより幼稚園のほうが楽しい」と思ってくれてたから、助かりましたけどね。幼稚園に通わせながら、フルタイムで働くのはやっぱり難しいなと痛感しました。

――いわゆる3歳の壁ですね……。フリーランスになろうと決めたのは、なぜですか?

ワンオペで子育てしながら会社員を両立するのが大変すぎて、気づけば家庭内から笑顔が少なくなっていたんです。仕事自体は好きなのに、息子に「働いているお母さん、大変そう」と思われたらイヤだなとも感じて、フリーランスになることを決意しました。それに、会社で担当していた百貨店でのイベント運営やPRの仕事は、個人でもできるものが多い。一年前くらいから準備をはじめて、フリーになっても継続的に案件をいただける状態まで整えていきました。

独立したのは、息子がもうすぐ小学校に上がるという2020年冬のこと。その直後からコロナが流行り出し、前職はテレワークなんてまったく対応していない会社だったから、結果オーライでしたね。

――とはいえ、独立していきなりのコロナ禍、軌道に乗るまでが大変だったのではないでしょうか。

そうですね。ひとつの軸だった百貨店のイベント案件は、ぐっと減ってしまいました。だけど、おかげで独立早々に「百貨店みたいに大きな宿り木ありきの仕事は、すごく危ないな」ということを感じられて……いただいた仕事をやっていくのも大切だけど、自分でも事業を立ち上げたほうがいいと考えるようになったんです。

それでやりたいと思ったのが、ちょっと前の私みたいにボロボロになっているお母さんたちの“自己肯定感”を高めるサービス。できれば、問題なく食べられるのに廃棄されてしまうような野菜を有効活用して、子どもに安心して食べさせられるものをつくりたいと考えました。いまは、その立ち上げに力を尽くしているところです。

画像2

子どもを優先しながら働けるようになって、気持ちがいい

――フリーランスになって、苦しかった仕事と育児の両立は改善されましたか?

されました! 労働時間ではなく、スキルに対してお金をいただけるようになったから、自分で自分をマネジメントしやすくなったように思います。大きな仕事やタイトな納期もあるけれど、子どもを優先しながらうまく進めていけるようになったんですよね。何をやってもやらなくても、責任を取るのは自分だから、気が楽です。

――「子どもを優先しながら」とは、たとえばどんなふうに?

たとえばいままでだと、習い事はすべて週末にまとめるしかなくて、息子も大変そうだったんですね。でも、フリーランスだと平日の日中も融通がきくから、日にちを分散してあげられる。いまはプール、そろばん、サッカー、塾と4つの習い事に通わせていて、ちゃんと送り迎えができています。

そういうささいな積み重ねでも、子どものことを優先しながら働けていることは、私にとって自分の自己肯定感につながっているなって思うんです。母としての役割をおざなりにしないでいられることが、気持ちいい。子どもに対して“ちゃんとしたお母さん”でありたいという呪縛が、どうしてもあるんだと思います。

――「母としての役割」「ちゃんとしたお母さん」などと考えすぎると、しんどくなったりしませんか……?

そうなんですよね。でも、生まれ育った環境や母の影響などから、私がそうやって考えてしまうのはある意味もう仕方ないのかなって思ってます。ただ、「土の時代」だったこれまでの子育てと、これからの「風の時代」の子育ては絶対に違うはず。母にしてもらったことや「母親は子どもにすべてを捧げるべき」といった価値観を手放して、別のやり方を探していかないと難しいだろうなとは思っているんです。

……でも、こういうことだって、会社員を続けていたらあんまり考えていなかったかもしれません。フリーランスになったおかげで、自分の生き方や仕事についてよく考えるようになったのは、いいことだなって感じています。世のお母さんたちを少しでも楽にしてあげたいと思って、その気持ちを新しい事業にもつなげられているし。

――自分に呪縛があるのは受け入れつつも、同じように苦しんでいるお母さんたちがいたら、助けてあげたいと感じているんですね。

「手抜きをさせてあげたい」って気持ちはすごく強いです。まじめなお母さんほど、子どもの健康のことを考えて、家事にも一生懸命になりがちじゃないですか。だから、少しでもその負担を肩代わりしたくて、身体にも地球にもやさしい食のサービスをつくっているんです。子育てに力を尽くしながら自分のことも大切にしたい気持ちは、私も一緒。だから「これを外注できたらいいのに」「あんなサービスがあればいいのに」ってニーズが、実感としてよくわかるんです。

――でも、自分で事業をやるとなると、子どもより仕事を優先させないといけないときも出てきませんか? 

そうですね。そのときは気持ちにメリハリをつけて、仕事に全力で向き合います。会社員時代にもフランス出張などがあったけれど、そういうときは夫が子どもを見てくれてるんです。普段は完全にワンオペでも、ここは外せない! というタイミングでは助けてくれる。夫も自営業だから、私がフリーランスになってからはとくに協力的だと感じます。ここは頑張っておくべきだよ、なんてアドバイスもくれるし。ある程度は、緩急をつけてやっていくしかないですね。

小1の壁は、ママ友との助け合いで立ち向かう

――小学校に上がって、生活や仕事のリズムがつかみにくくなる「小1の壁」はありましたか?

ありましたよ~。コロナ禍でいきなり休校にもなったので、融通がきくフリーランスで本当によかったと思いました。通常授業になってからも、うちの周りは学童が定員オーバーになっちゃってるんです。だから、学童ほど手厚くないけど17時までは預かってくれる類似のサービスを利用しています。夏休みのお弁当づくりなんて、毎日本当に大変でしたね……。でも、途中から息子が「毎日このメニューでいいよ」って言ってくれたから、以降は献立を考えることもなく、同じおかずを入れ続けました(笑)。

――毎日朝から晩まで預かってくれて、ごはんもおやつも面倒を見てくれる保育園時代を思うと、小学校はとにかく大変そうなイメージです……。

保育園や幼稚園に比べると、小学校の動きってどうしても雑ですからね。ある日突然「明日から休校です」って言われたり、すごく大事な連絡も子どもにプリントを渡されるだけだったりする。図工の授業で「明日どんぐり使います」って言われて、夜に拾いに行ったこともありますよ(笑)。確かに年間計画表で「工作にどんぐりを使う」とはあったんだけど、時期はまったく書かれてないから、次の連絡は前日だったの。

――想像するだけで無理ゲーだ……。

幼稚園みたいに丁寧な申し送りは一切ないから、小1男子の要領を得ない説明だけですべてを理解しないといけないわけです。だから、ママ友同士の情報共有が本当に大切ですね。

――ママ友ネットワークがここで活きてくるんだ!

そうそう。小学校に上がると働いているお母さんも増えて、いっそう支え合う空気が生まれましたね。土曜日に夫婦そろって仕事だったりすると、ママ友が「うちで子ども見ておくから行ってきなよ~」「ごはん食べさせておくね!」とか言ってくれるんです。私が料理を嫌いなこともみんな知ってるから、おいしい餃子を大量におすそわけしてくれたり。

もちろん私も、自分が動けるときは動きます。うちは車があるから、雨の日に「車で学校からピックアップして、着替えさせて、習い事送っておくよ」とかね。みんなで助け合って子育てしてるって感覚が、小学生になってからさらに強くなりました。

――幼児のときより子どもも多少はしっかりしてきて、お互いに預けやすくなる部分もありそうですね。ぜひ来年から真似したい!

子どもの年齢を夢を盛り込んだ「事業計画」

――では最後に、有希さんがこれからどんなふうに働いていきたいかを伺いたいです。

じつは、これからの事業計画を考えるとき、子どもの希望も聞いてみたんです。息子はサッカー選手になって、いずれオリンピックに出たいんですって。そうなると、子どもを優先しながら働きたい私も、やるべきことが明確になる。たとえば「このあたりで息子にスペインのチームを体験させたい」「そのためには親のこういうフォローが必要だから、この年までに私がいなくてもお金が回るビジネスをつくっておかなきゃ」「パリオリンピックを見に行くなら、せっかくだから一ヶ月くらい滞在して、自社の商品を売りたいな」とか……親子そろってビッグマウスかもしれないけど(笑)、話し合いだけでめちゃくちゃ楽しかったんですよ。

だから、当面はこの「子どもの年齢と動きに合わせた事業計画」で頑張っていきたい。まずは彼が小3になるまでに事業を軌道に乗せて、そこからは中学受験のサポートに向けて舵を切っていこうと思っています。

――子どもの夢を盛り込んだ事業計画、めちゃくちゃ素敵です。

どんな年齢や状況になっても、いつでも挑戦はできると思っているんです。なんとでもなる。でも、いつでもチャレンジできる自分でいるためには、きちんと準備しておくことが大切だとは思う。私は、子どもを優先しながら働きたいし、自分の人生も尊重したかったから、両方欲張るために何をすればいいか考えました。それで思いついたひとつの手段が、フリーランスになることだったんですよね。

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?