2023ファジアーノ岡山にフォーカス32『 頂の先の景色~零の光~ 』J2 第22節(A)vsヴァンフォーレ甲府

2023 J2 第22節(A)
ヴァンフォーレ甲府 vs ファジアーノ岡山
JIT リサイクルインク スタジアム

ヴァンフォーレ甲府

篠田 善之 監督

スタメン

99ピーター・ウタカ、10長谷川 元希
77ジェトゥリオ、18鳥海 芳樹
16林田 滉也、26佐藤 和弘
2須貝 英大、40エドゥアルド・マンシャ、5蓮川 壮大、23関口 正大
1河田 晃兵

リザーブ

GK:21渋谷 飛翔
DF:13三浦 颯太、49井上 詩音
MF:7荒木 翔、8武富 孝介、17品田 愛斗
FW:9三平 和司

途中交代

後半11分:77ジェトゥリオ→9三平 和司
後半31分:18鳥海 芳樹→8武富 孝介
後半31分:23関口 正大→13三浦 颯太
後半44分:26佐藤 和弘→17品田 愛斗
後半44分:10長谷川 元希→7荒木 翔

ファジアーノ岡山

木山 隆之 監督

スタメン

7チアゴ・アウベス、48坂本 一彩
22佐野 航大、14田中 雄大
44仙波 大志、27河井 陽介
43鈴木 喜丈、5柳 育崇、23ヨルディ・バイス、16河野 諒祐
1堀田 大暉

リザーブ

GK:13金山 隼樹
DF:15本山 遥
MF:2高木 友也、41田部井 涼、42高橋 諒
FW:8ステファン・ムーク、18櫻川 ソロモン

途中交代

後半19分:27河井 陽介→15本山
後半28分:7チアゴ・アウベス→18櫻川 ソロモン
後半28分:14田中 雄大→8ステファン・ムーク
後半40分:44仙波 大志→2高木 友也
後半40分:43鈴木 喜丈→42高橋 諒

 今節は、生でフルに観られなかったので、じっくり試合を観てのレビューとなります。いつもとは違った趣向で、作成してみました。後半戦の最初の試合という事で、夏場の補強を踏まえて、両チームにバランスよくフォーカスを当てる事で、この先の試合を意識したレビューを心掛けました。

 全文無料公開。スキーやフォローや、購読などをして頂ける記事を目指しています。一人でも多くの方に読んでいただけると嬉しいです。


1、攻撃と守備の比較~甲府編~


 まずは、甲府のサッカーの印象について触れていきたい。

 開始してしばらくは、パス交換を主体とした前進を意識したボールの運びがみてとれた。ダイレクトに近く、足下にしっかり正確なパスを通した上で、良い距離感の中で、岡山のプレス網を巧く無力化に成功。素早く前進できた事で、岡山の重心を下がる時間を与えず、戻りながらの守備対応を迫るだけではなく、ゴール前の甲府の選手にマークにつきにくい状況を作る事に成功していた。

 甲府は、90分間の中で、岡山の苦手とするスピードを、何度もパスワークで生み出し、岡山の屈強なDF陣に弱体化に成功するだけではなく、選手間の間に通す事で、フリーでシュートを打つという事ができていた。特に後半の9三平 和司のヘッディングシュートは、この試合の最大の決定機であった。

 また、サイドから攻める意識も高く、中央で細かく繋ぐというよりは、「前進する事」に重点をおいた攻撃であるように感じた。特に左サイドに関しては、SBの2須貝 正大の攻撃参加が目立ち、甲府の厚みのある攻撃を可能としていた。

 一方で、両SBが上がり切った状態で、7チアゴ・アウベスの狙いを持った守備により、危険なシーンが何度か作られていたが、40エドゥアルド・マンシャと5蓮川 壮大が、お互いにカバーリングすることで、決定機になる前に、抑える事ができていた。

 岡山が後で、保持して運んで行く意識が高かった事から前からプレスをかけていくというシーンもあったが、99ピーター・ウタカが、90分フルにプレスをかけていく事は流石に厳しいので、後方から出て行く必要があったために、そこの隙を後半は突かれているシーンもあったが、その点は、織り込み済みで、90分間通して集中して守る事ができていた。

 全体の印象としては、攻守での距離感が良く、スピード感のあるサイドから攻撃の形は迫力があった。後半は、ややパスワークで、チームとして前進してコンパクトに保つことが難しくなったのか、ロングパスやドリブルの回数が増えたので、組織的な攻撃よりは、個人技に頼った攻撃が増えた事で、やや流れを岡山に渡したものの、90分間通して観れば、甲府の方がやや有利というか、主体性を持って試合を進めた試合であった。


2、攻撃と守備の比較~岡山編~


 岡山のサッカーはいつも観ているので、この試合の狙いや意図を甲府サイドよりは、より深く触れていきたい。

 この試合の岡山は、7チアゴ・アウベスと48坂本 一彩の2トップという事もあり、前からプレスをかけていく積極的な守備やロングパスを収めての攻撃やセカンドボールからの攻撃ではなく、あえて受けに回る事で、甲府のボール保持の隙や守備対応の隙を狙うというカウンタ―に近い攻撃を目指していた。

 前から守備をしていかなければ、チームとして重心を押し上げる事やトータルでの奪取位置は、どうしても後方となってしまう。人数をかけた攻撃は、当然難しくなり、甲府にある程度、前進を許す事も止む無しという攻守での戦い方であった。

 そのため、1章で触れた通り、甲府のスピード感のある攻撃を受ける形となり、PA(ペナルティエリア)内での、甲府のシュート、クロスやパスへの対応が、増えた中で、岡山のファールやラインに逃げるクリアやブロックにより、甲府のセットプレーの回数が増えた。

 ただ、前半のシュート数やCK数の数ほど両チームに差があったかといえば、岡山視点からすれば、巧く甲府側に対応されこそしたが、7チアゴ・アウベスが再三ゴールに迫るだけではなく、48坂本 一彩の良い形でのシュート、16河野 諒祐のクロスから良い形を作れていたシーンもあったので、岡山もやりたいサッカーができていた事は、岡山視点からは、感じられた。

 また、甲府との明確な攻撃の違いとして、甲府は中央から崩せそうなシーンでもサイドに展開する意識や集める意識が高く、そこからのスピード感を意識していたが、岡山は、無理に前進する事はせず、全体的にゆっくり押し上げて行く中で、DFラインの選手も高いポジションで、攻撃に関与していたシーンも何度かあった通り、全体として選手が流動的に動く中で、隙を探る攻撃の意識も高かった。

 前半は、なかなかDFラインで、ボールを保持して、プレスをかわして、その背後を突いて、前に運ぶという事ができなかったが、甲府の選手の運動量がやや落ちて、甲府のチームとしての動きややや重く(鈍く)なったところで、複数人で奪い来るプレスをいなして、前にパスをつけるというシーンが出てきた事で、チーム全体として前進でき、パスでの隙を探る攻撃ができるようになってきた。

 実際に、後半でのボール保持率で、甲府に対して、ある程度盛り返すことができた。前半に甲府の方が多かったサイドの選手のドリブルで深くまで抉るというシーンも16河野 諒祐から作る事ができるようになった中で、岡山としては、得点に繋げたかった所であるだろう。

 ただ、両チームとも守備が安定していることもあり、そこから先の得点に結びつけることができなかった。スコアレスドローではあったが、両チームともやりたい事、狙いは明確で、最後まで微修正や選手交代で、得点の1点を狙う事で、勝ち点を1点から3点に変える事を目指したが、崩して得点を奪うためのボディブロー(主導権を握って消耗させる攻撃)が、ヒットしなかった事で、スコアレスドローに終わった。


3、スコアレスドロー~ピッチサイド~


 いつも通り、公式サイトで公開されている選手と監督にフォーカスを当てて行く。今回は、いつも以上に、要点を絞って、簡潔に紹介と分析していく。

 まず、私の「崩して得点を奪うためのボディブロー(主導権を握って消耗させる攻撃)が、ヒットしなかった事で、スコアレスドローに終わった。」の部分に関する両チームの監督の解釈を紹介したい。

 まずは、岡山の木山 隆之(監督)から。

木山 隆之 監督(岡山)
「連敗をしていたので、何とかそれを止めて勝点3を取りに来た。試合自体は拮抗して、流れが甲府にも岡山にもあり、どちらか1点取った方が勝利に近づく試合だった。
前半は我々の陣地で守備をすることが多く、攻撃になった時に揺さぶりやランニングを出したかったが、出しきれなかったものの、決して悪い入り方ではなかった。
後半は自分たちのペースも取れてきたが、その時間をもう少し長くしてチャンスを作ったり、プレーの質を上げて際どいシーンを作ることができれば、より流れを自分たちに呼びこめたと思うが、そこまでやりきれなかった。」

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第22節 ヴァンフォーレ甲府戦 監督・選手コメント
より一部引用。

 続いて、甲府の篠田 善之(監督)。

篠田 善之 監督(甲府)
「ホームで勝点1はちょっと残念な気持ちがあるが、良いゲームができて締まったゲームになった。決定機を作ったときのクオリティーの課題は見えた。守備のミスもあったが、まとまってやれた。後半の立ち上がりは岡山のペースになったが、人を代えながら引き戻すことができた。ただ、勢いを持って最後にパワーを使いたかったが、アクシデントが起きた(三浦 颯太の負傷)。この勝点1を次につなげたい。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第22節 甲府 vs 岡山(23/06/24)試合後コメント(監督)
より一部引用。

 両チームの監督のコメントを比較してみると、やや流れというか試合の主導権を握っていたが、押し込めていたかという視点で考えると、甲府の方がゴールに迫っていた。実際に、試合後に紹介されたゴール期待値を見ても、甲府が少し上回っていた感想が伝わって来る公式コメント。

 ただ、勝てる試合であったと両チームの監督も言い切れず、木山 隆之(監督)「試合自体は拮抗して、流れが甲府にも岡山にもあり、どちらか1点取った方が勝利に近づく試合だった。」に対して、篠田 善之(監督)「ホームで勝点1はちょっと残念な気持ちがあるが、良いゲームができて締まったゲームになった。」という表現に留まった。

 ただ、甲府サイドとしては、最後の13三浦 颯太の怪我のアクシデントが痛かった。岡山がそのシーンで、抜け目なく決めれる形(シュートシーン)にできなかったのは、チームとして質の部分で、勝ち点3を手にする力が足りなかった証左でもある。

 スコアレスドローという結果に行き着いてしまった試合であったが、その中でもハイレベルな攻防のプレーがであった事を感じられる両チームの選手のコメントを紹介したい。

1堀田 大輝 選手(岡山)
「前半カウンターでニアで合わせられた時、ファーに相手が詰めてくるのも見えていたので、あえてコーナーに逃げた。冷静な対応ができた。」

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第22節 ヴァンフォーレ甲府戦 監督・選手コメント
より一部引用。

 1堀田 大輝のファインセーブは、本当に多い。1堀田 大暉がいなければ、負けていた試合も何度かあった筈だ。そういったセーブは、こういった咄嗟の判断から生み出されている。なかなかこういった部分は、ゴールシーンに比べて気付き難いので、ポジショニングや目線、ステップなどから意識して観て見ると面白いかもしれない。

記者(インタビュアー)
--岡山のFW陣は強力です。エドゥアルド マンシャ選手と初めてCBで組みましたが、どんなことを意識しましたか?
5蓮川 壮大 選手(甲府)
「コミュニケーションを常にとること。マンシャは前に強く、足も速いので、連係して無失点で終えられたのは良かった。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第22節 甲府 vs 岡山(23/06/24)試合後コメント(選手)
より一部引用。

 率直に「え?初めてのコンビなの?」と、驚きました。技術的なミスや隙こそあったが、ゴール前での守備対応のお互いの距離感や動きというのは、初めてと思えないもので、連携ミスというシーンは、ほぼなかったように感じた。

 確かにビルドアップが、やや危ないシーンこそあったが、それは、大分戦よりも少なく、90分間で見ても非常に連携が取れていて、公式戦で初めてのコンビであることは、全く感じられなかった。まさしくこれこそが、プロフェッショナルなプレーだと感じた。


4、ストロングポイント~甲府サイド~


 甲府に関しては、データサイドのデータを眺めるも、そのデータに触れず、ほぼ基本的なデータ(公式記録)から客観的に、甲府が岡山に優れていた点を紹介したいと思います。

「王様を軸にできた攻撃」

 岡山戦の後の水曜日に行われた磐田戦を含めて、99ピーター・ウタカはここまで22試合で1787分の出場時間を得ている。全試合スタメンの絶対的エースが、持ち味を発揮し易いチーム作りができている。39歳という事で、全盛期のプレーではないかもしれないが、それでもJ2では、依然としてトップレベルのストライカーであることは疑いの余地はない。

 実際にここまで9ゴール4アシスト(何れも甲府のチーム内で1位)の活躍で、9ゴールは、J2でも5位タイの堂々たる成績だ。岡山のトップスコアラーが、18櫻川 ソロモンの4ゴール2アシストで、この差が、そのまま順位の差となっていると言っても過言ではないだろう。

 もう一つ着目したい点は、9三平 和司との関係性だ。総合力の高い9ピーター・ウタカにマークが集まった所を、絶妙な動き出しや高い決定力が、まさにシャドーストライカーで、この試合の最大の決定機も決まっていたら,
岡山サイドからすれば、一瞬の隙で、何が起きたか分からないような動き出しからのヘッディングシュートであった。

 表のエース99ピーター・ウタカの存在感か、9三平 和司の決定力を高めていて、ここまで9三平 和司の6得点の結果に繋がっている。

 99ピーター・ウタカの当たり負けない接触プレーやドリブルの直接的な攻撃の形に注意が集まれば、スペースに動き出して点で合わせる9三平 和司の動き出しの注意が疎かになる。

 逆に9三平 和司の動き出しを意識して、ポジションを離れる守備を躊躇うと、99ピーター・ウタカへのドリブルからのシュートやスルーパスへの反応が遅れて、決定的なシーンを作られてしまう。

 99ピーター・ウタカという選手の存在感が、甲府の攻撃の懐の深さを生み出し、攻撃の形をシンプルにできている。

 岡山の守り方や攻め方もあったとはいえ、甲府が深い位置でプレーして、自陣でのプレー時間が短かったのは、99ピーター・ウタカを軸に巧く、攻守のバランスをとり、個の力を組織的に最大限引き出せているからだ。

 岡山が、7チアゴ・アウベスの怪我での出遅れや48坂本 一彩の代表の離脱があった中で、チームとして攻撃の形を熟成させることが出来なかった中で、甲府は、22試合をかけて99ピーター・ウタカを中心とした組織力を構築してきた。この差は小さいようでかなり大きい。

 岡山が、ここまで4試合しか負けていない守備の個の力がなければ、99ピーター・ウタカに自由を許して、9三平 和司にも決められてしまうというワンサイドになっても不思議ではなかった。

 また、この試合で復帰したキッカーの1人である17品田 愛斗が、スタメンとして出場できていれば、前半のセットプレーの機会を活かされて、先制を許した世界線もあったかもしれない。

 その17品田 愛斗と入れ替わる形で、13三浦 颯太が怪我となってしまうアクシデントがあった通り、岡山だけではなく、各チームも厳しいリーグ戦を戦っているという事を改めて感じた。

 甲府の武器は、あくまで甲府だけのものではあるが、岡山が、どういったチームを目指していくのかという点で、ヒントになる部分もある。同じチームに2度負ける事は避ける事ができたが、岡山が勢いを作ることができれば、プレーオフで当たる可能性があるかもしれないチーム。

 岡山が、チームとして、この強い甲府にどう勝っていくのか。甲府から謙虚に学び、一つでも上を目指せるチームに、岡山にはなって欲しい。


5、ストロングポイント~岡山サイド~


 岡山に関しては、22試合目の観戦であるので、ストロングポイントは?補強ポイントは?の現状を整理しつつ、チームを強化できるポイントがどこにあるのか、既存戦力の奮起や成長への期待を第一に考えつつも、リーグ戦での貢献度などを総合的に含めて、「頂」を諦めないために、ある意味、チームへの厳しい(非情な)評価を動機に動く事となる補強のポイントについて、言及していきたい。

「GK」

 1堀田 大輝の活躍を考えた時に、GK4人体制ということも考えても戦えている。13金山 隼樹も1堀田 大輝にアクシデントがあった時に、勝利にこそ届いていていないが、安定したプレーができている事も大きい。21山田 大樹も開幕戦スタメンを掴み獲っていた通り、このまま終わる気はなく、虎視眈々と出場機会を窺っている。ただ、31谷口 璃成は、基礎を磨くときで、4年目からが真の勝負だと考えている。このGKの編成のバランスの良さは、岡山のストロングポイントの1つ。

「DF」

 左から43鈴木 喜丈、5柳 育崇、23ヨルディ・バイスをほぼ固定できているのが、岡山の負けない強さの最大の理由である。特に43鈴木 喜丈が、左SB兼左CBとして加わった事は、守備が飛躍的に安定した。ファーサイドへの浮き球からの失点パターンが無くなった事で、J2のレベルが上がった中でも守備の安定感を維持できている岡山のストロングポイントだ。

 一方で、寄せの対応やファールが多かった5柳 育崇とゴール前で速いクロスやパスへの対応に苦しんでいた23ヨルディ・バイスを入れ替えた事で、守備こそ安定したが、23ヨルディ・バイスから16河野 諒祐というホットラインが無くなった事で、16河野 諒祐が高い位置にポジションを取る恩恵が少なくなっている。

 5柳 育崇が、同じようにフィードを試みているが、やはりやや精度を欠いてずれることが多く、23ヨルディ・バイスから左サイドの22佐野 航大や42高橋 諒、2高木 友也といった選手に、そういったパスを出せていないので、2トップに当てるだけではなく、やや角度のついたロングフィードの形を作っていきたい所だ。

 34藤井 葉大が、夏休みでの練習参加で、どれだけアピールできるか。43鈴木 喜丈のボランチ起用や15本山 遥の右SBでの起用を含めて、守備力をより高められる伸び代がある。4濱田 水輝がリバーブに控える心理的な効果のように、様々な選択肢を増やす事で安定感や強さに繋げたい。

 左サイドの43鈴木 喜丈、42高橋 諒、2高木 友也、34藤井 葉大は、隙がない陣容で、補強があるとすれば、手薄なCBやDHでの出場機会が増えている15本山 遥に代わる右SB(右CB)の選手だ。公式戦に絡めていない20井川 空の右での起用も含めて、手を打つ必要性はある。

 現状は、ほぼ固定できているDFラインは、岡山の武器と言える中で、16河野 諒祐が、攻撃に参加できれば、武器となるが、守備対応が多くなれば、弱点となってしまう右SB(右CB)には、岡山の弁慶の泣き所である。3バック時に15本山 遥の右CBの選択肢を出てきて、チームのスタイルの幅が広がったが、攻守のバランスの隙を埋める補強に動くのか、それともより攻撃的なSBの獲得や32福元 友哉のコンバートに続く、強化の一手を打つかどうかは、注目ポイントである。

「MF」

 左から22佐野 航大、44仙波 大志、27河井 陽介、14田中 雄大の4人は、岡山の攻撃を一段回の押し上げに繋がった。中盤で「回す・繋ぐ・戻す」から「持つ・運ぶ・付ける」という前を向けるプレーが増えた事で、前に人数をかけた攻撃である遅攻でのミスの激減に繋がった。

 右WBとして出場していた16河野 諒祐のグラウンダーのスルーパスでのアシストのように、横や斜めへのクロスのような形だけではなく、縦へのパスが、チームとして増えている事は、チームの新たな武器である。

 一方で、得点に絡める力のある22佐野 航大や14田中 雄大が、ゴール前や相手チームの深い位置でプレーする回数は、まだまだ少ない。そして、27河井 陽介の守備の負担も大きくなり、イエローカードが増えている通り、守備の負担が大きくなっている事は気になる点でもある。

 6輪笠 祐士の怪我の影響もあり、15本山 遥をDHやANとして起用する事や、8ステファン・ムークをCHとして起用することで、守備強度を維持しているが、8ステファン・ムークの得点力を考えると、OHや1.5列目で起用したい。

 先ほど触れた43鈴木 喜丈のDH起用や30山田 恭也、20井川 空、34藤井 葉大(コンバート)の起用を起用が難しいのであれば、15本山 遥をそこで固定するか、攻守でチームをワンランクあげる事ができる22シーズンの6輪笠 祐士のような選手の獲得も視野に入って来る。

 14田中 雄大や44仙波 大志の代役として27河井 陽介や8ステファン・ムークを起用できるような編成の調整のための補強、もしくは、ここでより得点に絡める選手、それこそプレースキッカーも任せられる技術のある選手を獲得しても面白いかもしれない。

 また、3バックの右WBを任せられる選手の少なさは、DFの補強ポイントと重複するが、ドリブルで違いを出せていた19木村 太哉の怪我からの復帰が間に合わず、33川谷 凪の守備や連携面が、32福元 友哉に関しては、実戦でまだまだ厳しいのであれば、右のアタッカーの獲得も選択肢には入って来る。

 中盤に関しては、どこの補強するのか、違いを出すのか。MFの補強があれば、チームとしての評価やメッセージが見て取れるかもしれない。

「FW」

 38永井 龍と7チアゴ・アウベス、48坂本 一彩の怪我の影響があり、99ルカオの緊急補強に動いた岡山。一緒に公式戦どころか、練習を一緒にできなかった期間が長かった中で、他クラブが、この試合の甲府のように連携やチームとしての攻撃の完成度を深めていっている間に、コンディションや戦術の浸透に練習で時間を割かざる得ず、他クラブの状態が良くなる中で、相対的にパフォーマンスが落ちたポジション。

 ロングパス比率が下がり、遅攻が増えた岡山の中で、9ハン・イグォンの良さが出せなくなった中で、ほぼリーグ戦に絡めなくなったのもチームとしての編成上の痛手で、他の選手が、個性豊かな中で、選手によってサッカーが変わる難しさも相成って、90分間で、主導権を握る難しさや高い位置で、ボールを保持して攻める回数も伸び悩んでいる。

 ライバルチームの選手達が、状態を少しずつ上げてきている中で、逆に18櫻川 ソロモンの存在感が薄くなってきていて、48坂本 一彩の決定力を活かせない中で、MF寄りの8ステファン・ムークが、印象的なプレーが光る現状は、あまりチームの編成としては、理想からは少し離れている。

 この甲府戦では、7チアゴ・アウベスと48坂本 一彩が、一瞬の隙を見つけて、惜しいシーンを作りかけていたが、このままでは、後半戦も引き分けが多くなることは間違いなく、スペシャルな選手の補強で、攻撃を一段回押し上げるのか。後方にテコ入れして、チャンス構築力を高めて行くことFWの選手を活かしていくのか。99ルカオの緊急補強もあり、人数的には、足りているポジションだが、トップスコアラーが18櫻川 ソロモンの4得点という現状は、あまりにも寂しい。

 最も評価が難しいポジションで、個の力に優れる選手が揃っているだけに、このまま戦う選択肢も悪くないが、その覚悟がチームにあるのか。夏場の移籍ウィンドウで、結論を出す必要がある。7チアゴ・アウベスや99ルカオの状態は間違いなく上がっており、ゴールには間違いなく近づいている事もまた事実で、「覚悟」か「決断」かが、問われる。

「補強ポイントまとめ」
①右サイドの攻守の選択肢の幅を広げられる選手。
②中盤の底の総合力の高い選手。
③2列目で違いを出せる選手(プレースキッカーを含む)。
④FWで相乗効果を期待できるFWの選手。

6、頂の先の景色~零の光~


 天皇杯の頂に昇りつめて、99ピーター・ウタカを呼び戻せた甲府。
 
 Jリーグの頂のカテゴリーに届かず、悔しさを頂への原動力に変えるべく、今季を迎えた岡山。

 その両チームのスコアレスドローの先に待つ景色は、自分達の可能性を信じる事ができれば、光であるはずだ。結果が出なくても結果が出ていてもスコアレスドローでも勝ち点1の光がある。敗戦で、勝ち点が零でも、その経験が、チームの躍進の原動力になるかもしれない。

 想い起せば、22シーズンに天皇杯で、優勝した甲府だが、開幕戦で、岡山に4-1で敗れている。岡山が、今の成績で、もう絶望するのであれば、岡山に頂を目指す資格はない。

 現実を「受け入れる。」「受け止める。」
 現実から「目をそらす。」「逃げる。」
 現実をどう消化するか、出来るかは、人それぞれだれだ。
 ただ、先を見据えた人のみが、光を見つける事ができる。
 岡山の暗闇が、いつ明けるのか。
 そもそも今が闇の中のか。
 それでも信じた人だけが光の先にある景色をみることができる。
 天皇杯の「頂」とJリーグのカテゴリーの「頂」を知る甲府との差。
 そこに明確な差があるとすれば、メンタルの部分である。
 降格の絶望を知らない岡山。
 甲府戦の前に、岡山が敗れた大分は、J3への降格を経験している。
 現在、J2首位のの町田は、JFLへの降格を経験している。
 クラブの選手や資金力の部分やリーグのレベルの違いこそある。
 しかし、降格の絶望と、プレーオフ敗退の絶望の差は違うものである。
 そこを意識した時に、岡山の今置かれている位置は、本当に絶望なのか。
 選手が走れてる、選手が粘れている。
 選手が監督が、自身に、チームに不満を募らせる事もあるかもしれない。
 しかし、4敗しかしてないのもまた事実だ。
 自分達を信じて、戦えるか。
 絶望を希望に変えられるか。
 闇を光に変えられるか。
 もしかすると、今季だけでは無理かもしれない。
 しかし、絶望したくなる現実の先には、光が待っているかもしれない。
 光を闇だと認識しても光を失ってはいけない。
 戻れる気持ちの拠り所。
 それは、得点かもしれない。
 それは、ファインセーブかもしれない。
 それは、体を張ったブロックかもしれない。
 それが、怪我から復帰できたことかもしれない。
 それは、勝利かもしれない。
 それは、サポーターの応援かもしれない。
 しかし、ファジアーノ岡山の一員として、忘れてはいけないことがある。
 子供たちに夢をというクラブ理念だ。
 子供たちの目は真っすぐで純粋無垢だ。
 その夢への気持ちに対して、裏切ってはいないか。
 夢のために戦うという意志、気持ち、想いがあれば、岡山は戻ってこれる。
 それが、岡山の強さだ。
 100年夢を諦めないDNA。
 岡山の夢は永遠に不滅である。
 それが、光であり希望であり、零の先の景色であると信じたい。

11堀田 大暉
「サポーターは12番目の選手で、力として自分たちの後押しになっている。甲府までたくさんのサポーターが来てくれているし、どこのアウェイにもたくさん来てくれる。勝利という形で応えられていないので、何とか応えていきたい。」

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第22節 ヴァンフォーレ甲府戦 監督・選手コメント
より一部引用。

文章=杉野 雅昭
text=Masaaki Sugino


引用元公式サイト紹介(選手と監督公式コメント)

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第22節 ヴァンフォーレ甲府戦 監督・選手コメント
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/202306242100/

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第22節 甲府 vs 岡山(23/06/24)試合後コメント(選手)
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/062413/player/

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第22節 甲府 vs 岡山(23/06/24)試合後コメント(監督)
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/062413/coach/

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