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日本ラグビーを強くするには?

 ラグビーワールドカップ、大会はまだまだ続いているが、ブレイブブロッサムズこと日本代表の挑戦は終わった。というわけで振り返りや課題を論じる記事が増えてきている。その中に1つ気になったものがあった。

 記事にも直接コメントしたが、本番のワールドカップ並の強度を持った試合の経験数が日本の大きな課題。

 2019年大会の前は、南半球を中心に行われているプロの15人制ラグビー「スーパーリーグ」に、日本から「サンウルブズ」というチームが参加した。

秩父宮でのサンウルブズの試合

 サンウルブズのチームとしての成績は振るわなかったが、そこで世界最高レベルの強度を選手たちが経験できたことが、2019年大会の好成績につながったことは間違いない。
 しかし、その後サンウルブズは参加停止。ヨーロッパを含め、海外ラグビークラブへの個人レベルでの参加も、コロナの影響でなくなってしまい、今大会では海外組はゼロ。その意味で、最高レベルの強度についての経験値が低かったというのが、大きな課題として指摘されているわけだ。

 最も簡単に思いつく解決策は、スーパーリーグへの再参戦だが、この記事では、スーパーリーグへの再参戦に消極的な姿勢が示されている。「国内が『2部リーグ』となれば、ラグビーの事業家に力を入れる各企業に水を差すだけでなく、チームの休廃部につながる危険もある」というのがその理由だ。
 スーパーラグビーへの再参戦は1つのソリューションではあるが、そもそも南半球で行われているリーグに北半球のクラブが参加するのは簡単なことではない。とはいえ、「2部リーグ」化を理由に再参戦に反対するのは全く説得力がない。プロ野球でもサッカーでも、既にトップレベルの選手は海外でプレーしているのだから。それでも野球やサッカーは人気を維持している。なぜラグビーではそれができないのか?

 強度の問題で言えば、一足先にスーパーラグビーとか、あるいは記事にあるような「準代表」を作ることよりも、現在のシステムの中で解決すべき問題の方が多い。

 何よりもリーグワンのシステムだ。現在はカテゴリー分けがいびつといわざるを得ない。2022-23シーズンで、1部(D1)に12チーム、2部(D2)に6チーム、3部(D3)に5チームだ。
 3部構成なのに全体の半分が1部にいる妙な構成ということになる。そしてチーム数の多い1部は2つのカンファレンスに分けられている。
 同一カンファレンスであればホームアンドアウェーで2試合戦うが、カンファレンスが違うと対戦は1回だけとなる。カンファレンスは固定ではなく、前年度順位を元に均等になるように振り分けられる。

 今回のラグビー日本代表のべ34人のうち、18人が前シーズンで優勝したワイルドナイツと準優勝だったサンゴリアスからだ。しかし、この両チームは別のカンファレンスだったため、対戦したのは1度だけだ。

 これだけ1部のチームが多い中でこのシステムを取っているため、強豪同士の対戦が減る一方で、力の差があるチームが同じカンファレンスに入ってしまう。その分、接戦が減り、ワンサイドゲームが増える。

 例えば、ワイルドナイツは18試合中、7点差以内の試合がわずか4試合(うち敗戦が1試合)。一方21点差以上の試合が7試合ある。
 サンゴリアスは、同じく18試合中、7点差以内の試合が5試合(うち敗戦が3試合)、21点差以上の試合が5試合だ。


 

 つまり、7点差以内の接戦は、両チームとも全体の試合数の30%を下回っているということだ。これでは、国際レベルはおろか、国内での最高レベルの強度を経験できている試合そのものが少ないといわざるを得ない。

 その理由ははっきりしている。「1部」のチーム数が多すぎるからだ。「1部」のチームをもっと絞り込んで、強豪同士の対戦を増やせば、国内でも強度の高い試合を増やすことができる。まずはそういうことから始めるべきではないだろうか。
 例えば、トップカテゴリーを「プレミアリーグ」と名付け、6チームからなるとしてみよう。2022-23シーズンの順位で6チーム選ぶとするなら、ワイルドナイツ、スピアーズ、サンゴリアス、イーグルス、ブレイブルーパス、ヴェルブリッツとなる。
 今回の日本代表のべ34人のうち、28人がこの6チームに含まれている。6チームだけならば、ホームアンドアウェイを2回やって同一カードで4試合やることで、高強度の試合を20試合確保できる。8チームにすれば、これにブラックラムズとブルーレヴスが加わり、今回の日本代表のうち29人が含まれることになる。

 これではごく一部のチームに人気が偏るというならば、プレミアリーグを8チームとしてホームアンドアウェイを1回にした上で、カップ戦の範囲を広げれば良い。ワールドカップ方式で、4チームからなる予選プールを4つ作り、上位2チームがトーナメントに進出できるとする。構成はプレミアリーグに加え、下位リーグから上位8チームに進出権を与えてトータルで16チームにすれば良い。
 さらに、予選プール上位2チームはカップを争うトーナメント、下位2チームにも別のトーナメント(7人制ラグビーでいう「プレートトーナメント」のようなもの)を設定すれば、カップ戦での下位チーム(全体での中堅チーム)同士でのトーナメントを行えるから、力の拮抗したチーム同士の試合を増やすことができる。こうしていけば、中堅チームくらいまでのサポーターもシーズン最後まで楽しむことができる。

 準代表も試みとして否定するものではないが、リーグそのものを改革していく方が、日本のラグビー選手の地力を高めていくことになると思うのだが、どうだろうか。

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