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スタッツで見る「ナントの敗戦」

 27-39で敗れた「ナントの決戦」こと日本対アルゼンチン戦。今日はスタッツで振り返ってみる。データはRWC2023公式アプリから。

           日本  アルゼンチン
キャリーメートル数     449m      519m
ラン         107    113
ゲイン        60      59
パス         156    143
ディフェンス突破            29     26
オフロードパス     7       3
モール成功数      2     4
ラック成功数     72      95
キック        19      22
タックル       164      120
ミスタックル     26      29
ターンオーバー成功  3         4


トライ効率が低かった日本

 試合前のプレビューでは、プール戦3試合を見てみると、ボールキャリーの距離とトライ数との比率が日本の方が良いから、日本の方が効率よくトライを取れていること、この特長を生かす必要があることを指摘した。

 まずはこの点の答え合わせをしてみよう。

 ということでキャリーメートル数を見てみる。日本が449mでアルゼンチンが519m。これまでの3試合でのアルゼンチンのキャリーメートル数は合計で1411m、つまり1試合当たり470mだから、平均を上回ったことになる。
 日本の3試合合計は1061mで1試合当たり353m。こちらも平均を上回った。上乗せ幅は100m近くあり、日本の方が大きい。

 ただ、キャリーメートル数をトライで割った数字を見てみよう。過去3試合のアルゼンチンの数字は141.1mで日本が117.9m。つまり日本の方が効率よくトライを取れていた。しかしこの試合でアルゼンチンは5個のトライを挙げているから、103.8m。日本は3トライだから149.7m。

 日本のこれまでの戦いのポイントだった、トライ効率の高さが見られない。むしろこれまでのアルゼンチンよりも悪い数字になってしまっている。事実、日本は敵陣22mラインまで攻め込んだのにトライを取りきれない場面が頻発した。特に、ゲイン数やディフェンス突破数がわずかながらアルゼンチンを上回っているだけに、トライに結びつかなかったのは痛かった。
 一方アルゼンチンは、特に終盤の競り合いでは敵陣に攻め込むとほぼ確実に点を取っていたので、その差が明確に数字に表れているということが言える。

 これは、プレビューで指摘した狙いの1つ「アルゼンチンのトライ効率の低さを狙った『粘り強いディフェンス』が結果としてできなかったと言うことでもある。
 アルゼンチンがスタイルを変えずに、地上でのボールキャリーとブレイクダウンを重ねての攻撃を仕掛けてきたのに対し、それを食い止めてリズムを崩すことができなかったということだ。

ターンオーバーでもアルゼンチンが上回った

 そのための大きな武器が「ジャッカル」と言うことになる。「ジャッカル」とは、相手をタックルで止めたあとでボールを奪うこと。
 スタッツによれば、イングランド戦では、ジャッカルを含むターンオーバーを日本が9個勝ち取っているのに対しアルゼンチンが1つ。これは同じ相手での数字だから、ジャッカルには日本に比較優位があるといえる。
 そこで、フェイズを重ねてくるアルゼンチンに対して、ブレイクダウンで積極的に絡んでボールを奪ってリズムを崩していけば、日本有利に試合を運ぶことができると考えた。

 しかし試合のスタッツを見ると、ターンオーバーはアルゼンチンが4回で日本が3回に留まった。数字としてはほぼ互角だし、アルゼンチンのリズムを崩すには至らなかった。
 実際、日本はあまりラックに入らずに、出てきたボールを確実に止めるディフェンスを仕掛けていたように見える。そのうちにノックオンを犯して継続できなくなることは何度かあったが、アルゼンチンとしては、ブレイクダウンでフェイズを重ねながらボールを継続していくスタイルを変えずに戦うことができた。

 終盤のアルゼンチンの圧力と確実に点を取ってきた攻撃は、自分たちのスタイルを自信を持って継続できてきたことが大きな理由ではないかと思う。

 もちろん、ブレイクダウンで絡んでいくことは反則と隣り合わせなので、あくまで結果論でしかないのだが、もっと絡んでジャッカルを狙う、あるいは攻めて球出しを遅らせていく、といったディフェンスを仕掛けていくべきだったのではないかと思う。(異論は認めます)


負けに不思議の負けなし

 テリトリーは日本が51%でアルゼンチンが49%、ボールポゼッションは日本が48%でアルゼンチンが52%。いずれもほぼ互角だったといえる。
 その中でも、競り負ける形で12点もの差を付けられてしまったことには、やはりはっきりとした理由があると考えるべきだろう。
 日本はアタックでは前進はできたが、トライを取りきることができなかった。ディフェンスでは、アルゼンチンのスタイルであるフェイズを重ねる攻撃のリズムを崩すことができなかった。イングランド戦で頻発したハンドリングエラーも少なく、アルゼンチンは自分たちのスタイルのまま、自信を持って戦い抜くことができた。そのあたりに理由があるのだろう。

 やはり向けるべき矢印の方向は自分たち。なぜ日本はトライを取りきれなかったのか。なぜディフェンスで相手のリズムやプランを崩していくことができなかったのか。そのあたりを考えていくことが、これから先に進んでいくために不可欠だ。






タックルの総数は
日本が164



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