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先生の熱意は生徒に伝わるのか?

ハキハキと話し、講義にはユーモアを交え、何より授業が楽しそうでたまらないーそんな先生の授業を受けたことがあるでしょうか。たとえ授業の内容が難しかったとしても、先生のエネルギーや熱意によって印象はだいぶ変わる気がしますよね。今回は、実際に教員の授業中のエネルギーが生徒に伝わっているのか、ということを長期にわたって調査した研究を紹介します。


キーテーマ

先生・授業・エネルギー・生徒

結論

教員が授業を楽しいと感じるほど、生徒も授業を楽しいと感じる傾向がある。
教員が授業を楽しいと感じるほど、生徒も教員が授業に熱を注いでいると評価する傾向がある。

実験デザイン

読みやすさのために、実験内容を要約しています。

ドイツの中学生(7年生)1763人、及びその数学教師71人を対象に以下の項目の調査を行った。

①生徒が数学の授業を楽しいと感じる程度:生徒対象のアンケートにより調査。7年生の最後、及び8年生の最後に計測された。
②教員が数学の指導を楽しいと感じる程度:先生対象のアンケートにより調査。8年生の最後に計測された。
③教員がどれぐらい熱量をもって授業を行っているか、と生徒が感じる程度:生徒対象のアンケートにより調査。8年生の最後に計測された。

結果、②(教員が感じる楽しさ)と①(生徒が感じる楽しさ)、③(生徒が感じる先生の熱量)の間に正の相関性が見られた。

この実験の特筆するべき点として、実験で用意された環境ではなく、長期にわたった実際の教育現場において調査を行ったことが上げられる。

①(生徒が感じる楽しさ)と②(先生が感じる楽しさ)の間に正の相関性が見られた

留意点

あくまで相関性を示す研究になるので、因果関係を示すものではありません。一例として、生徒が授業を楽しいと感じることが教員の楽しさにつながる、という実験結果の捉え方も考えられます。

ドイツの13~15才を対象とした数学の授業における研究だったので、文化圏・教科により結果が変化することも考えられます。

エビデンスレベル:観察研究

まとめ

先生の熱量と、生徒が授業に対して感じる楽しさの間には正の相関が見られる。

編集後記

当たり前といえば当たり前に感じる結果ですが、こうした直観でしかなかなか語れない感覚が客観性を持った研究に裏付けられることはうれしいですね。

文責:山根 寛

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Frenzel, A. C., Goetz, T., Lüdtke, O., Pekrun, R., & Sutton, R. E. (2009). Emotional transmission in the classroom: Exploring the relationship between teacher and student enjoyment. Journal of Educational Psychology, 101(3), 705–716. https://doi.org/10.1037/a0014695



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