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サンポ

『階段をカン、カン、と少しずつ上る。
私のときめきもまた、どん、どん、と増えていく。
少し薄暗いそれを上り終えると、小さな扉が出迎えてくれた。』

約一年ぶり…くらいかな。
地元に帰ってきた彼女から「会おう」と連絡が来てから、実際今日を迎えるまで、もの凄く速いスピードで訪れた気がした。
きっとそれほど、会えることを楽しみにしていたのだろう。

迎えに来た駅に車を停めると、お昼に行くお店を決めていないことに気づいた。
彼女をイメージしながら、早速iPhoneを開く。
「□□駅 カフェ ご飯…と…」
パチパチとキーボードを叩くと、すぐに素敵なお店を纏めたサイトに辿り着いた。
団地を改装してあるのだろうか。1階から造られた階段は、2階にあるお店へと繋がっている。
おしゃれで、こじんまりとしていて、それでいてランチのメニューもある。
「ここ気になる。今回もし彼女が選ばなくても、いつか行きたいかも。」
そう呟きながら窓の外に目を向けると、ちょうど着いた様子の彼女がしゃんと立っていた。

久しぶりだからだろうか。
互いに少しはにかみながらも、助手席をポン、と叩き車へと迎え入れる。
「昼ごはん食べていないでしょう?ここ、"3pocafe"ってとこらしいんだけど…、どうかな」
「え、めっちゃ好き!行こう!」
「やった〜!決まりね!」

そうして着いたお店の扉を開けると、ちょうど誰もおらず、窓のそばの席に腰掛けた。
「貸し切りだねっ」
なぜか小声になる私たちの元に、それぞれ選んだものが届いてきた。
彼女はカレー、私はチーズケーキを。そうして届くころにはもう、1年のブランクなんて忘れるほど気楽に話していた。
私の選んだチーズケーキはナナメにかかったハチミツのようなソースを絡めると味が変わり、不思議で、おいしくって、トリコになってしまうな、と心がホカホカしていた。

彼女がSNSへ投稿するというので時間を置いて見てみると、投稿には食べかけのそれとともに
「撮る前から食べたくなるような」
と一言添えてあった。
彼女の感性が、考えが、好きだなぁと改めて感じる。

『階段をカン、カン、と少しずつ上る。
私のときめきもまた、どん、どん、と増えていく。
少し薄暗いそれを上り終えると、小さなカフェの扉が現れた。』

すてきなお店。そしてすてきな友達。
このささやかで最高な幸せを、これからの時間とともに手放さぬよう、一緒に笑っていたいなぁと切に思う。
そしてこの"たった一度でお気に入りに昇華した最高のお店"には、また近いうちに足を運ぶのであろう。

ではまた、佳き日に。

#エッセイ #熟成下書き #3pocafehome

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