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コインロッカー業者の人

じゃあ今から、昨日見た夢について文章を書くので、適当に読んでください。

初めて買ったカメラは黄色のPENTAXだった。それを、当時一番近くにいた人に貸した。ただ、当時の自分は、人を大切にするということの意味が全くわかっていなかったので、その人はたぶん傷を負っていなくなった。

たぶん、になってしまうのは、共感性に著しく欠けていたせいで、機微を無数に見落としているはずで、判断材料が少ないから。なんとも言えないけど、かすかな記憶で顧みても、たぶん傷を負ったと思う。

幸い時間が経っているので輪郭はぼやけていて、相手に関しては解像度が低い。すべてを思い出せてしまったら、おそらく取り返しのつかなさに発狂する。

そして自分に関しては、けっこう混乱していた。それまでなぜか奇跡的に、明確に自分のせいで人を失ったことがなかったから。

ていうか、その人に、めっちゃ叱られた。さすがに「怒る」と「叱る」の違いくらいは理解できて、これは叱られている。とわかった。端から端まで正しかったのでびっくりした。「やっぱ立ち入ると傷つくわ」と言われた。なんか重要な気がしたからメモったけど、やっぱり意味はわからなかった。

「傷つくわ」と相手が発言したことと、「相手が実際に傷ついている」という事実を結び付ける機能が備わっていなかった。

言い方が難しいけど、ずっと自分には悪意はなくて、それはひとえにその機能がなかったからなんだけど、だからこそタチが悪くて、純朴な刃物だった。言ってる意味がわからないかも、ごめん。

自分の傷だけは身体の中にあるから、痛みがどういうものなのかは知っているのに、相手が自分と同じように痛いんだという事実が、宙に浮いていた。

今はわかるけど、今更わかったところで。

その人は「この駅の、この場所の、この番号のコインロッカーにカメラを入れたから、回収しに行ってね。貸してくれてありがとう。」と連絡をくれて、以降いなくなった。

カメラのメモリに残された写真を見るのは怖かったし、見る資格もなかったから取りには行かなかった。コインロッカー業者の人はその写真たちを見ただろうか。忘れ物センターに数ヶ月保管させていただろうか。申し訳ない。

っていう、夢だったらよかった話です。

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