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読書感想文 ロス・トーマス 愚者の街

 これが海外の発想か

 帯にはミステリーと書いてあったのだが…クセあり過ぎの過去を持つ人たちが腹黒い人たちと騙し合いをしてとある街の裏金を横取り、街を破壊するまでの心理戦に、クセあり主人公の回顧録を挟んだお話し。慣れ親しんだミステリーではなかった。上下巻。

 街を破壊するとはなんぞ?と思ったがこれが難しい。平和な日本の庶民にはなかなか考えの及ばない発想だった。梅毒が蔓延する街の汚職、裏金、ギャング、賭博、違法薬物、そして騙し合いの心理戦。政治家のスピーチひとつのために莫大な労力と金と命を費やす。もしかしたら、日本では政治家先生たちが裏でやってるかもしれないことの海外縮図バージョンなのだろうか。未知ジャンルに触れた気がした。
 海外作品らしく、登場人物が多くて重要人物でなくてもいちいち名前がついている。名もなき私、先生、細君、書生しか出てこない夏目漱石作品とは真逆の思考だ。よってこの人誰だっけ?の確認がいちいち必要になる。読むのに割と時間がかかったが良い脳トレになった。

 特に良かったのは、前半に断続的に挟まれる主人公の生い立ちから成長までの回顧録シーン。現在の話が進む中に組み込まれていたために一見話が飛ぶように見えるが、実は重要な彼のバックグラウンドに興味を惹かれて物語にどんどん深みが増していったのが魅力的だった。

 まだまだ知らない世界があるものだ。この本を手元に残しはしないと思うけれど、記録はつけて記憶に留めてはおきたいと思った。

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