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夫婦のための間取りプラン

夫婦と住まい02

前回も夫婦と住まいについても述べてきましたが、住まいづくりでは、いま本当に考えなくてはならないのは、さまざまな問題を抱えた夫婦の寝室ではないだろうか。

近年の女性の社会進出を考えてみても、女性も、男性が書斎を持ちたがるように、知的生産性を高める「自分だけの場所」を求めることは理解できます。

また、精神医学界の研究では、同じ人と長時間顔を突き合わせていると、それだけでストレス度は高くなると言われています。

したがって、「一人になれる時間」「自分だけの場所」というものは、夫婦の精神衛生上においても重要でしょう。ただ、私が危供するのは、一人になりたいがために、夫婦二人の場所が失われていくということです。

そこで、現代のワンパターンの寝室から脱却し、「多様化する夫婦像に合わせ、どんな寝室が考えられるのか」 の提案を試みたいと思います。

六十代、五十代、三十代の3つの夫婦プラン

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間取りプラン①は、六十代の夫婦の寝室で、畳の生活が長かったので、ベッドの代わりに畳を床から40センチ上げ、その下を引き出しにして衣類を簡単に出し入れできるようにしています。

また、部屋の真ん中に高さ1.5メートルほどの家具を置くことによって、お互いの気配を感じながらもプライベートな時間を楽しむことができる空間となり、豊かで開放的な夫婦の寝室になりました。

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間取りプラン②をご覧ください。これは、50代の夫婦の住まいです。以前、二階には夫婦の寝室と子ども部屋がありました。しかし、子どもが独立後、妻が元子ども部屋へ移動し、妻の部屋として使用することになりました。

そこで、リフォームプランをいくつか描いてみました。どれも空いた子ども部屋のスペースを有効活用しながら、夫婦の粁をより深められるよう配慮したつくりになっています。子どもの独立後に始まる長い夫婦の暮らしにふさわしい間取りだと思います。

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間取りプラン③をご覧ください。これは30代の夫婦と小学生の子ども二人の四人家族の例です。

夫のいびきや就寝時間が異なることを理由に夫婦別寝室にしていたのですが、これでは、ただでさえ生活の時間帯の異なる夫婦にとって、コミュニケーションを育むことは困難です。

そこで、あえて同じ面積、同一空間の中で、さまざまな生活のシーンを想定して夫婦の寝室をつくつてみました。自分一人になりたい時や、趣味に没頭したい時に邪魔されない空間、そして夫婦で充実した時を過ごす空間、会話やお酒を楽しむ空間が同一空間の中にあるプランです。

また、閉鎖的な子ども部屋をオープンに開放し、夫婦の寝室からも子どもの気配を感じられるようにしました。さらにリビングルームをより充実させ、家族がそれぞれの自室に引きこもることなく、団らんが生まれるよう配慮しました。

この三つの案に共通しているのは、装置化された家具と、簡単な間仕切りだけで空間を分けているため、年代や必要に合わせて最小の予算で変えていくことができるということです。

寝室を別々にしたいという欲求には、さまざまな理由がありますが、「一人で気ままに自由に過ごしたい」、しかし二人だけの空間で「寝室の会話も楽しみたい」という矛盾した要望が含まれているケースも多々あります。

安易に別寝室を選択してしまうのではなく、希望を限りなく満たす工夫や努力を試みることが大切です。そのプロセスがあってこそ、お互いが歩み寄ったり、思いやる気持ちを汲み取りながら、夫婦だけの居心地の良い空間ができるのです。


いかがだったでしょうか。
次回は、「夫婦と住まい03」夫婦の個室についての考察をお送りいたします。
おたのしみに。


前回「夫婦と住まい01」夫婦の部屋



【横山彰人建築設計事務所】




これまでに300以上の住宅を手掛け、富な実績を元に、本当に居心地のいい、家族が元気になる住まいをご提案します。noteでは住まいで役に立つトピックスを連載形式で公開します。