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可愛い人を好きになる彼。

「好き」の感情を履き違えてると思う友達がいた。

その日、僕は彼の家に向かっていた。
始めはカラオケに行こうと、決めていたのに「今日はダラダラしたい」と彼が言い出して、急遽、家でのんびりする事に決めた。

「コーヒーが飲みたい」と彼が言う。彼の家に向かうまでの途中。商店街の中にあるチェーン店の喫茶店に寄った。

頼んだアイスコーヒー。甘くないと僕は飲めないから、ガムシロップと砂糖を入れる。

「甘いと糖尿になる」と彼は、ブラックを好んで飲んだ。

「可愛い人を見たら好きになる」
彼は僕にそう言ってた。いや、それは好きとは違うだろ、と僕は思った。

彼は結構モテた。美人な彼女を連れているんだから面食いなのは知っていた。いや、でも好きと顔のタイプって違うだろう、と思っていた。

気がつけば2、3ヶ月のペースで彼女が変るような奴だ。そんなに頻繁に人を好きになれるようなもんなのか?

「可愛くなかったら付き合わない」と彼は言う。こんなに、人に言えば悪い印象を与える様な本音を、僕に堂々と言えるのがすごい。

「羨ましいな、そんなにスグに人を好きになれるのは」僕は素直に思った。僕はそこまで恋愛に目が眩むことがない。

「可愛かったら好きになるだろ?」
と聞かれたけど、彼と僕の価値観は、絶対的に違うな、と感じた。

「僕は違うかなぁ」とその意見を述べつつ「男は誰だってそうだろ」と言う彼の話は流した。彼の飲み物が空になっていたので「もう店を出よう」と声をかけられて、僕も残っていた分のコーヒーを飲み干した。

そんな会話をして数ヶ月経った頃。結局、その時に付き合っていた、彼女と彼は別れていた。でも、別れた事を彼は少しは引きずってたみたいで。

それは、「好き」の感情なのか、「情」の感情なのかは知らないけど。

それから、しばらくすれば、
「彼女が出来た」と彼にLINEで報告された。でも、何故か彼女の写真は見せて来なかった。いつもなら、自慢するように見せつけるのが彼のやり口なんだけど。

「可愛くないから」
だから彼は見せたくなかったんだろう。
正直(何で付き合ったんだよ)って内心、僕は思う。

僕は、彼が2、3ヶ月のペースでコロコロと彼女が変わる姿を見て、彼は寂しさを感じやすい人なのだと思っていた。だから今回の彼女も「寂しさ」を埋める為に作る。次の繋ぎなんだと思っていた。

「どうせスグに別れんだろ?」
僕はちょっと冗談混じりに言った。
「でもめちゃくちゃ性格がいい!」
と自慢げに言ってきて、それは良かったな、と適当に返した。

SNSにも彼女の写真が上がることは、無かったけど、たまにLINEで「彼女とどうなん?」と確認したら「同棲始めた」と言っていたので、しらぬまに進展してたらしい。「飲みにいくか」と僕は彼を誘った。

焼肉屋にある、炭火を眺めながら、注文が終わるタイミングで「相手の親に挨拶してきた」と。正直僕は笑った、いや、予想外がすぎたから。

まさか前まで
「可愛い人を見たら好きになる」と言っていた奴がびっくりするほど、言ってる事とやっている事が違うのだから。

「顔よりも性格が大事だ」と彼は言っていた。

頼んだ、お肉を炭火で焼きながら。酒に弱い彼は、少しずつ酒を飲む。

顔を火照らせながら「やっぱ性格大事だわ〜」と彼は繰り返していた。結局写真は見せてくれなかったけど。

まぁ幸せなら何でもいいだろう。

最近彼は、めでたく結婚して、子供が出来ていたなと思って。結局、美人を見て好きになる感情とは一体何だったのか。少し気になった。

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