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ひとつの宇宙/奥会津・会津駒ケ岳_毎日新聞

毎日新聞朝刊に隔月連載している「わくわく山歩き」(2019年1月~)は、日本の山のなかから毎回1座選び、紹介するエッセイです。その山にまつわる私個人の思い出や、登ったときの印象も織り込んであります。
noteでは、各回の編集後記のようなもの、本編の紹介を記していきます。

2019年5月13日の「わくわく山歩き」は、奥会津に位置する会津駒ケ岳でした。

繰り返し登りたいと思う山に出会えるというのは、「仕合せ」です。何度も通って、少しずつ見えてくるものがあり、それがしあわせでだなあって思います。
会津駒ケ岳には厳冬期から春に通うことが多かったです。福島県桧枝岐村からアプローチします。雪深いところで、仲間と交代で深い深い雪をかきわけるようにラッセルを繰返し、1日たっても夏山のコースタイムのわずか30分ぐらいのところまでしかたどり着けず、雪洞を掘ったこともありました。
桧枝岐村に行くまでも大変なほどの大雪で、まったく登れず、高畑スキー場で滑って帰ってくることも度々ありました。
高畑スキー場の大ファンです。

登れても登れなくても、蕎麦と温泉と日本酒は欠かせない。
蕎麦はどこも美味しいけれど、とくに「裁ちそば まるや」が好きです。
温泉は、湯の花温泉びいきで、隣の南会津町湯ノ花温泉の湯端の湯に寄ることが多いです。こんな優しいお湯があるだろうか……。
日本酒は、金紋会津
「ナントカのひとつ覚え」みたいに、これらを繰返してきました。教えてくれたのは、隣の高校の山岳部だった友人。金紋会津を美味しい美味しいと言って飲み始めたのは20代のころからで、とうてい酒の味が分かっていたとは思えません。けれど、いい酒に、温泉に蕎麦に出会えたと思い、仕合せです。

春の柔らかな日差し、ほのぼのします

やがて春が近づいてくると、少しずつ気候がやわらいで、日差しも暖かくなってきます。登れるチャンスも増えてきます。運よく山頂に立てれば、スキーの大滑降が待っています。隣にある大戸沢岳や三岩岳とつなげてスキー縦走することもできます。

春になると、遠方の山々も見渡せるようになります

雪のある季節は月に何度も桧枝岐に通うことを何年も続けた、そのずっとあと。初夏の会津駒ケ岳がこんなにも美しいと気づかせてくれたのは、登山ガイドの仕事で登ったときでした。

これは、そんなガイドツアーで登ったときの写真。
お客様たちがお礼にくださった文集の表紙です

ブナの若葉が柔らかい緑色で、ウズウズしてくるし、ところどころ残った雪の白色と緑のコントラストがほんとうに美しいです。梅雨の時期は、ブナの木肌に水が流れ、むせかえるほどの薄緑色のブナ林の中を歩きます。ほんとうに瑞々しい。
雪の下に埋まっていた駒の小屋が営業していて、経営するご夫妻と知り合うことができました。

沢筋に雪が残り、景色に躍動感が生まれます
木の上のほうにある赤い印は、積雪期に迷わないようにとの目印
雪の季節にはこの赤い印が、ちょうど目の高さぐらいになります。
どれだけの積雪量になるのか、推して知るべし

紅葉の時期もため息が出るほど美しいです。

会津駒ケ岳という山と、麓の村とそこにある生活、それらすべてがひとつの宇宙を形成していると感じるのです。
その宇宙は会津駒ケ岳がある南会津だけでなく、奥会津全体に広がっていると思っています。

こんなにも好きになれる山に出会えて、ほんとうに仕合せだなあと思います。

新聞記事(本編)「奥会津 山々、宇宙の広がり」は、コチラで読んでいただけます。
「わくわく山歩き」バックナンバー2019年1月~2020年3月 →コチラ
2020年4月~現在 →コチラ


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