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スピッツのアルバム「ひみつスタジオ」から「オバケのロックバンド」を聴いて深夜に涙してしまった話

愛してやまないスピッツがニューアルバムをリリースしました。

リリース日、夜になって仕事が落ち着いてきた頃に軽い作業をしながら、最初からフルでゆるっと聴き始めました。1曲目から、イントロからいい。いいアルバムな予感がすごい。さすがだなあ、気合入ってるなあ、おじさんになっても色褪せないなあ~なんて思いながら。心地よく、感動しながらBGM的に味わっていました。

中盤、ある1曲がスタートし、ロック感の強いイントロとキャッチーなAメロにびびっと心を掴まれていたところ・・・
知らないおっさんの声が!そしてへたうま。いや、下手・・・?コラボとかじゃないよな、なんだこれ。と動揺。
直後のサビでは複数人の声が入り混じる。おおおおおおもしや!?と思い、曲のタイトルを見たところ「オバケのロックバンド」という曲らしい。もしやもしやメンバーみんなで歌ってるのね、と思っているさなか、曲は2番に。またまたマサムネさんの声ではない、へたうまもしくはおヘタなニュータイプな声がする。なんとこの曲、スピッツメンバー全員がAメロを順番で一人ずつ歌い、サビはみんなで声を合わせて歌うという作りだったのです。

マサムネさん以外の皆さんの歌声が可愛くて、思わずにんまりしながら手を止めてじっくり聴いてると、次に気になったのは歌詞。がつんと入ってきたサビの歌詞がなんだかめちゃくちゃいいかも、やばいかも、と思い歌詞を調べて見ながらもう一度聴く。2週目、曲の頭から歌詞を見ながら聴いてみると、思わずじわぁっと涙が出てきてしまいました。サビはもちろん、メンバーそれぞれの生き様や演奏する楽器を思わせる、各人が歌うパートの歌詞が味わい深い。

誰もが忘れてた 物置き小屋の奥から
退屈な膜を破り 転がり出てきたオバケ

→ボーカルのマサムネさんのパート。

木霊に育てられ 雷神にそそのかされ
ゴミ箱叩くビートに 役割見つけたオバケ

→ドラムの﨑山さんが歌うパート。

良かれと思っても ことごとく裏目に出て
爆音で踊ってたら ツノが生えてきたオバケ

→ベースでありリーダーの田村さんの歌うパート。

暗闇に紛れて 冷たい旅路の果てに
壊れたギターを拾い 音楽に目覚めたオバケ

→ギターの三輪さんが歌うパート。
(へたうまとか言いましたが、三輪さんとてもお上手。いい声だし余裕ある感じ)

それぞれのメンバーの、華々しくない、かっこよくない過去を歌う1行目。
そこからそれでも楽器や音楽に出会い、足を踏み出してみてバンドを組んでここまでやってきた、それぞれのオバケ=メンバーの生き様を歌う2行目。
泣けてくる。ずっとこの4人でスピッツというバンドを続けて、音楽を生み出してくれてありがとう、と胸がいっぱいになる。と同時に、この歌詞を書いてそれぞれに贈ったマサムネさんの愛についても思いを馳せて、泣けてくる。

子供のリアリティ 大人のファンタジー
トゲばったハードロック 本当はラブソング

これは2か所のサビの頭の歌詞。スピッツの音楽性をシンプルに書いているようで、ここも胸アツです。スピッツを愛するポイントのひとつが、ポップ性もありながら闇を感じる歌詞だとか、色々な意味に捉えられる内容です。解釈を押し付けずリスナーにさまざまな捉え方を委ねてくる。でも複雑な音楽ですごいでしょ?という圧も全くなく、本人たちは楽しそうにさらっと無邪気に演奏している。ように見える。彼らの、肩ひじ張ってないのに音楽の厚みがめちゃくちゃあるところが大好きなのです。上記の歌詞にこのスピッツのスタンスが凝縮されているように感じ、32年間経った今この歌詞をメンバーみんなで歌うということが、ものすごくグッとくるのです。

毒も癒しも 真心込めて
これも大好き。スピッツらしい。

そんな中でも、

不思議のルールで 間違えながら
→この歌詞が「うおおお~~~~マサムネさんっぽい歌詞。くうーーー」と私がいちばん悶えてしまったパートです。不思議「な」ルールではなく不思議「の」ルール。なにそれ。「不思議」も「間違えながら」もマサムネ節こてこての歌詞に感じます。

私は中学生の頃に出会い、かれこれ20年弱追ってきた、というか人生のあらゆるシーンで寄り添ってくれていたスピッツというバンド。結成から32年経った今年、色々なタイアップをかましながら、久々のライブツアーを準備し、素晴らしいアルバムをリリースしてきた。だいぶおじさんになってきたけれど、まだまだ自分たちは自分たちのスタンスで好きに楽しく音楽やってくぜっていう宣言の曲のように感じ、改めて「ああスピッツ大好き」と心から思わせてくれました。

忙しけりゃ忘れてもいいから
気が向いたならまたここで会おう

大サビ前のパートの歌詞です。
サビの「君に聴かせるためだけに」という歌詞とあわせて、ファンに向けたスピッツからのラブソングだなあと思わせてくれる歌詞。初期からのスピッツファンはもう高齢の方も多いだろうし、さまざまなきっかけ・タイミングから追い始めたファンを抱えるのが長く音楽をするバンドの特徴だと思います。「みんなそれぞれ人生やってこう、何かあったらときどきスピッツを聴いてくれよ」という、これまた押し付けがましくない優しいスタンスのメッセージに感じます。

そしてこの曲、インディーズ時代の「こどもおばけ」という曲からAメロを持ってきたものなのですね。Twitterで知りました。スピッツの歴史や、変わらない根っこのスタンスの表明なのかなと思いました。

アルバム「ひみつスタジオ」の初回盤を買えば、「オバケのロックバンド」のMVが見られるらしい・・・そしてめちゃくちゃいいMVらしい・・・と知り、今回CDを買う気はなかったのですが心がとっても揺れています(笑)。

皆さんも機会ありましたら、是非今回のアルバムそして6曲目の「オバケのロックバンド」聴いてみてください。
好きなアーティストがずっと活動を続けている、新たな曲を世に出してくれる、ライブやってくれる、って本当に当たり前じゃなくかけがえのないことですよね。バンドが元気なうちに、活動続けているうちに、自分自身も健康なうちに味わい尽くしたいなあと思うこの頃です。

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