見出し画像

ベーシックインカムとロボット

月野美兎のプレイ動画でDetroit: Become Humanを見て考えるシリーズ。

ベーシックインカムに関する議論を見ていて、死ぬほど当たり前の事しか議論できていないんじゃないかと思うので、この「当たり前」の整理を試みたい。

消費/生産という前提条件が分からない

ベーシックインカムが現代社会において成功するかどうか分からないなんてのはある意味死ぬほど当たり前の話である。
ベーシックインカムの前提条件を満たせるのかどうかが厳密な意味でよく分からないからだ。

私はベーシックインカム、つまり働かなくてもお金がもらえるという政策の前提条件として「働かない人間が存在する」という所に着目している。

現代においても働かない人間というのは存在する。
身体障害などによって不本意ながら働けない人や、完全に働く意思を喪失してしまっている人など色々な人たちが存在している。

もし例えばベーシックインカムが施行されればここに更に「仕事を辞めて自分の趣味などに没頭してベーシックインカムだけで生活する人」というのが加わってくる。

つまり働かない人の総数は増えるし、すると社会の消費/生産は明らかに大きくなる。

ここで消費/生産の割合というものが出てくる。

これは食糧でも良いし、エネルギーでも良いし、その他生活必需品でも何でも構わないけど、人間が生活する上で欠かす事の出来ないものの消費/生産の事を考えている。

要はこの割合がベーシックインカムが成立するかどうかの肝であると考える。

この割合が1を下回っているかどうかで人間社会を維持できるかどうかが変わってくるという割とわかりやすい話だけども、つまりベーシックインカムを成立させた条件でこの割合が1を大きく下回っていれば、割と簡単にベーシックインカムの維持も可能なんじゃないかと思われる。

どれぐらい生産が消費を上回っていればいいのかがかなり分からない。
実際には輸出入などの貿易関係も関わってくるだろうし、この計算は容易ではないと思われる。

ベーシックインカムが無理筋となる可能性

ベーシックインカムが現代ではほとんど成立しない(可能性が高い)というのはある意味当たり前の話で、人間がリソースを消費する分量に対して生産できる量があまりにも少なすぎるからであると思う。

これが行き過ぎればベーシックインカムどころではなく世界中で戦争が絶えなくなるし、温暖化などの要因を考えても今後人類のリソース生産量が大きく上がることはない。

日本の場合を考えてみても、少子高齢化でリソースの生産能力はひたすら下がっていき、消費量ばかりが無尽蔵に増えて行く事も道理だ。
どうみてもベーシックインカムは現在の日本では無理筋の政策であろうと私は思う。

消費/(生産力+自動化生産力)

つまるところベーシックインカムとは、その場にいる人間の消費総量を大きく超えるリソース生産量を、人間+自動化生産力で生産できるという前提があって初めて成立する物なのだという事なんだ。

この前提が満たされてない場合にベーシックインカムを成立させる方法は私には分からない。

ここで「自動化生産力」という超絶重要な概念が出てくる。
要はロボットとかAIとかで社会のリソース生産力をどれぐらい嵩上げできるかがベーシックインカムが成立するかどうかにおいて非常に重要な役割を果たすと私は考えているんだ。

現代の現実と未来のロボット社会

残念ながら現代の人類社会にはまだ極めて中途半端なロボット技術やAI技術しか登場していない。
これが足かせとなるため、現代ではどんなに潤沢な財源の下でベーシックインカムを試したとしても持続可能性に欠ける政策となってしまうと思う。

重要なのはロボット技術やAI技術が今よりもさらに発展した未来にもう一度ベーシックインカムを試すという事だと思う。
現代の中途半端な技術でベーシックインカムが上手く行かなかったからと言って、実験的思考をそこで辞めるべきではないのだ。

もしも今よりも技術が大幅に発展して、Detroit: Become Humanばりに人間の代わりが務まるアンドロイドみたいなものが社会に現れた場合、それこそベーシックインカム無しでは経済というシステムすら最早全く成立しなくなってしまうだろう。

価値の差異を起点とする経済システム

結局のところ現在の経済システムって、ある場所にはあるモノが別の場所だと存在しないor極めて稀少であるために価値の差が生じている事を利用しているに過ぎない。

もしもあらゆるリソースがあらゆる場所で利用できるぐらい生産力が高まってしまったら価値の差による経済というものは破綻してしまう。

そうなってしまうとモノを生産する事が価値にそのまま繋がるとは考えにくく、従ってモノがあふれる世界にもかかわらず莫大な量の失業者が山積みの食糧を眼前にしながら餓死するという異常事態が発生することになる。

生産力はそもそも全く足りていないのでは…

ここまで書いてみて何となく気付く事だけど、実は現代でも既に似たような事は発生しているような気がする。

ホリエモンが「カネ余りだよ」とか言ってる裏では、今日も日本のどこかでは山のような食糧の積まれているコンビニを前にして餓死する人達がいる。

ある意味ではAIがどうとかロボットがどうとか言い出す以前の問題として、生産力が消費に追いついていないという現状はもっと広汎に社会的問題として考えても良いんじゃないかとも思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?