黄砂が飛び、雨も降った。
ボランティアの日だった。
とある知的障害の作業所に行かせてもらっている。
利用者さんは18歳から70代まで幅広く、自分で通えるひともいれば、ヘルパーさんに送迎してもらうひともいる。
それなりの作業をこなせるひともいれば、通うこと自体が目的のひともいる。
挨拶をしに、5分だけ寄るひともいる。
【作業所】といっても作業のほとんどは職員が担う。散らかりまくる集中力と、人間関係の渦の中で、それぞれが【社会】を経験する。
誤解をおそれずに言うのであれば、
そのワチャワチャ加減は【小学校低学年くらいの教室のよう】だ。
誰がどうした、あの子が無視した、この子がうるさい、こっち見ないでよ、一緒にやってあげるよ、今日のお昼はお魚だって、その服かわいい!、私の靴下見て~、スヌーピーが好き、すみっこぐらしが好き、松坂桃李が好き、職員さんに言いつけてやる!、ねえねえねえねえ……
ものすごく、みんな、かわいい。
もちろんかわいいだけじゃない。純粋なだけじゃない。ちゃんと意地悪だしウソもつくし、人間関係の揉め事ばかりだ。言葉が出にくいひとは手が出るし、あちらこちらでケンカになる。誰かが泣けばみんなが不穏になる。
思春期も更年期も老年期もごちゃ混ぜ。
理性より本能がまさり、客観性に欠け、他者との境界が曖昧な人たちのワチャワチャ空間は、
まさにカオスだ。
きれいゴトでは済まされない、家族や周囲、もちろん本人の苦しみもあるだろう。
でも、第三者の私は、ただただ元気をもらえている。
まあ、それは置いといて。
作業所で作っているもののひとつに【ふきん】がある。仕上げのミシンがけを職員さんがやるのだけれど、それを外部に委託させてもらえるよう、お願いしてみた。
母親に、やらせようと思って。
母親に役割を与える作戦だ。
いままでも10日にいっぺんは実家に寄っていたけれども、揉め事が増えたので【週1】を目標にした。
【ふきんのミシンがけ】という仕事を持ち込むことで、ほんの少しでも生活に張りが出るといいと思う。父との関係、老化ばかりに目を向けず、人生を楽しんでほしいと思う。
早速ふきんを持って寄った実家では、
父親のスマホがない、どこかで鳴っているけど見つからない、と騒ぎになっていた。
フツーに、目の前のヒーターの上にあった。
(ふたりには永遠に見えない。)
ほんと、親って面倒くさい。
【弱者】と呼ばれる立場に生まれたとしても、
長い人生の先に【弱者】になったとしても、
支援されるだけの人なんて存在しない。
心からそう思う。
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