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【映画】好きな映画ベスト10の共通項を分析した

emuです。
自己紹介を兼ねて、自分の好きな映画ベスト10を選び、それらの作品群の共通項を分析してみました。

はじめに

考えたきっかけ

まず、初めてのnote執筆にあたり、テーマを決める際の思考の流れ。


「とりあえず、自分が一番得意なジャンルである映画をテーマにしよう」

「でも初投稿だから、普通のレビュー記事というよりは自己紹介要素のある内容がいいな」

「自分の好きな映画をいくつかピックアップしてみようか」

「そういえば、好きな映画は?と突然聞かれたときにパッとタイトルが思い浮かばず、困ることが今まで何回もあった」

「よく考えると、映画が好きだと触れ回っているものの、自分のオールタイムベストについてリストアップしたことがないな」

「この機会に一度リスト化してみることで、人と話すときにも自分の好きな作品について伝えやすくなるし
自分の好きな作品の傾向が見えてきて、今後観る映画を選ぶときにも自分に合うかどうかの判断がしやすくなるのでは?」


と思い、自己分析の一環として
自分のオールタイムベスト映画についてリストアップする作業→傾向・条件の分析をしてみることにしました。
以下、自分の場合の一事例として、分析の流れを書き記してみます。

リストアップ作業

まずは自分のオールタイムベストについて10作品に絞り、リスト化を行います。

好きな映画ベスト10

  1. 時計じかけのオレンジ

  2. ファイトクラブ

  3. くれなずめ

  4. tick, tick...BOOM! チック、チック…ブーン!

  5. 渇き。

  6. ウォルト・ディズニーの約束

  7. ベイビードライバー

  8. ゼロの未来

  9. チワワちゃん

  10. ビッグ・フィッシュ

※各タイトルは映画.comの作品ページに飛べるようになってます。
 どんな内容か興味のある方はリンク先をご参照ください。
※ランキングではないので基本は順不同ですが、1-5>6-10です。5と6の間に越えられない壁があるイメージ。

ベスト10から見える共通項の分析

先程のベスト10をもとに、各タイトルの内容に共通する要素を
10作品の中から代表的な作品例について、レビューも含めてご紹介しつつ探っていきます。
以下、リスト内の作品に関するネタバレが一部含まれる可能性がありますのでご注意ください。


1.シリアスとユーモアが混在する

ベスト10の作品群のジャンルをざっくり分類すると、かなり主観になりますがサスペンスとヒューマンドラマが半々といったところでしょうか。
(作品テーマの根幹という意味でのジャンル分類です。表層的なジャンル分けをすると明らかにSFとかミュージカルとかありますが、いったん置いておきます)

純粋なコメディに分類される作品は恐らくこの中にはありません。
しかし、観ていただくとわかるのですがどの作品にも必ずユーモア要素が含まれています。
最もわかりやすい(極端ともいえる)例としては、1.の「時計じかけのオレンジ」。

時計じかけのオレンジ(画像出典:映画.com)

原作者のアンソニー・バージェス自身が”危険な本”と語った同名の小説を映像化。

非行少年による暴力が横行する近未来のロンドン。アレックスも仲間を引き連れ、喧嘩とレイプに明け暮れる日々を過ごしている。ある夜、中年女性を死に至らしめた彼は刑務所行きに。しかし2年後、とある治療法の被験者になることを条件に、社会に戻ることを許されるが……。

出典:映画.com

言わずと知れたスタンリー・キューブリック監督の傑作。
場面写真を見ても一目瞭然ですが、オープニングからエンディングまで首尾貫徹して独特なビジュアルに彩られた本作は、終始シリアスとユーモアのどちらにも振れず、その境界線上を綱渡りするようなテンションでストーリーが進行していきます。
主人公アレックスが「Singin' in the Rain」を歌い踊りながら無抵抗の老人や女性に暴行を加える有名なシーンは、まさにシリアスとユーモアのちょうど中間地点の様相を呈しており、笑っていいのかどうか複雑な気持ちで毎回観ています。
キューブリック監督作品は本作に限らず同様の傾向がありますが。

余談ですが、近年はYoutuberとしてお馴染みの中田敦彦さんのサブYoutubeチャンネルをたまたま拝見した際に
「絶対に観るべき映画ベスト3」(Youtubeページ)の第1位として本作を紹介されていたのですが、

「いい加減時計じかけのオレンジが1位って言いたくない。昔からずっと言いすぎてて恥ずかしいから。でもこれを越える作品が他にないから1位と言い続けるしかない」

と言っていて共感しかなかったです。本当にそれ。
わたしもいい加減「時計じかけのオレンジが1位」って言うのは恥ずかしい気持ちがあるけど、他に自分の中で一番を張れる作品が出てこないのでこれからも「時計じかけのオレンジが1位」って言い続けるんだろうなと思います。


2.精神的または身体的な痛みが含まれる

どの作品でもメインキャラクター(主人公or主人公に近しい人物)が精神的または身体的な痛みに直面していきます。
代表的な例は、5.「渇き。」

渇き。(画像出典:映画.com

「告白」の中島哲也監督が同作以来4年ぶりに手がけた長編作品で、第3回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した深町秋生の「果てしなき渇き」を映画化。

妻の不倫相手に暴行を加えて仕事も家庭も失った元刑事の藤島昭和は、別れた元妻の桐子から娘の加奈子が失踪したと知らされ、その行方を追う。容姿端麗な優等生で、学校ではマドンナ的存在のはずの加奈子だったが、その交友関係をたどるうちに、これまで知らなかった人物像が次々と浮かび上がってくる。娘の本当の姿を知れば知るほどに、昭和は激情に駆られ、次第に暴走。その行く先々は血で彩られていく。

出典:映画.com

内容は、簡単に言えばあらゆる「痛み」のオンパレード。
書いている途中で気づいたのですが、本作の中で名前のある登場人物は主人公級からモブまでほとんど全員が何かしらのひどい目に遭います。そのため、どのキャラクターに感情移入しても観ているこちらまで痛みを伴う構造。
この構造が意図的なのかどうかはわかりませんが、中島哲也監督は非常に性格が悪い方なので(いい意味で)、きっと意図的にやっているのでしょう。

精神的にも身体的にも、とにかく見ているだけで痛い映像が全編を通して続く作品。
傷つきたいときに観たくなる映画です。
画像右の藤島(演:役所広司)が画像のようにどんどんボロボロになりながら娘の加奈子を探すのがメインの筋ですが、個人的には画像左の浅井(演:妻夫木聡)がとにかく良いのでぜひ注目していただきたいです。
妻夫木聡本人の好青年だけどどこか胡散臭い、信用できない雰囲気をフルに活かしたキャラクター。究極にムカつく妻夫木聡で最高です。

映画.comのレビュー点数はまさかの☆2.9。リスト内10作品の中では最低点です。ちなみに、同じ中島哲也監督の前作「告白」は☆3.9です。なぜですか。マジで納得いかない。
点数が伸びない要因として考えられるのは、「シンプルにグロテスクすぎる」「必要以上に台詞での説明を行わず、スピーディーな映像でストーリーを運ぶので1度の鑑賞では理解が追いつきにくい」などある意味鑑賞側のスキルが試されるところがあるので、そのあたりが賛否を分けているのかなと思います。
今観るとそこまで珍しい映像ではないですが、2014年に商業作品として全国公開される作品としては早すぎたセンスだったのかもしれません。
個人的には「告白」よりも本作のほうがぶっちぎりで好きです。


3.死生観に関する描写・要素が含まれる

どの作品にも「死」に関する要素が色濃くあります。
代表的な作品は3.「くれなずめ」。

くれなずめ(画像出典:映画.com

「アズミ・ハルコは行方不明」「君が君で君だ」の松居大悟監督が、自身の体験を基に描いたオリジナルの舞台劇を映画化。

高校時代に帰宅部でつるんでいた6人の仲間たちが、友人の結婚披露宴で余興をするため5年ぶりに集まった。恥ずかしい余興を披露した後、彼らは披露宴と二次会の間の妙に長い時間を持て余しながら、高校時代の思い出を振り返る。自分たちは今も友だちで、これからもずっとその関係は変わらないと信じる彼らだったが……。

出典:映画.com

松居大悟監督が実体験をベースに作・演出を手掛け、自身の主宰劇団「ゴジゲン」で上演された同名舞台の映画化です。

重大なネタバレになってしまうので詳細は避けますが、「死生観」が重要なテーマになる作品です。あらすじやビジュアルなど、ぱっと見の印象ではコメディライクですが、わたしは本作をコメディとは認識していません。じゃあ何のジャンルだと言われると困るのですが。
伝わりやすさを重視するならば「笑って泣ける青春映画」というのがベターな表現なのかもしれませんが、それで簡単に片づけてしまうにはもったいなさすぎる作品なので。

この作品はもっと評価されていいと思うので個人的に各所で布教しているのですが、なかなか知名度が上がらないですね…
本作に関しては何を言ってもネタバレになってしまう系のストーリーのため感想が書きづらく、かつネタバレしない範囲のあらすじだけを見るといまいち面白そうに見えないという厄介仕様のため、口コミでは評価がなかなか広がりづらいというのが知名度が上がりにくい要因の一つではないかと。
近いうちに単体でレビューを書きたいと思っています。


4.作品のコアとなるテーマ・思想が明確である

強いメッセージ性があるかどうか、みたいなところに近いです。
ただテーマを鑑賞者に投げかけるというよりは、「私はこのテーマに対してこう思っている。さて、あなたはどう?」と、作り手の思想がガツンと提示された上で問いかけられるというか。
代表例は4.「tick, tick...BOOM! チック、チック…ブーン!」。

tick, tick...BOOM! チック、チック…ブーン!(画像出典:映画.com

大ヒットミュージカル「イン・ザ・ハイツ」「ハミルトン」などの原作者として作詞や作曲なども手がけ、ディズニーアニメ「モアナと伝説の海」では音楽を担当するなど、現代ミュージカル界を代表する才能として知られるリン=マニュエル・ミランダの長編映画初監督作。名作ミュージカル「RENT レント」を生んだ作曲家ジョナサン・ラーソンの自伝ミュージカルを映画化した。

1990年のニューヨーク。食堂のウェイターとして働きながらミュージカル作曲家としての成功を夢見るジョナサンは、オリジナルのロックミュージカルの楽曲を書いては直しを繰り返していた。もうすぐ30歳を迎え、これまでともに夢を見てきた仲間たちも現実に目を向け始め、焦りを覚えるジョナサン。自分の夢に価値はあるのか、時間を無駄にしているだけではないかと自らに問いかけながらも、時だけが過ぎていき……。

出典:映画.com

Netflixオリジナル作品。
上記のあらすじ引用にもある通り、実在したミュージカル作家による実在した自伝ミュージカル作品の映画化という少々複雑な経緯があります。

29歳のジョナサンが、30歳を夢の区切りとして設定している彼にとってラストチャンスである1本のミュージカルをなんとか形にしようともがきまくる姿が描かれます。
29歳から30歳になるまでの短い期間のなかで経験する焦燥、絶望、喪失、貧困、諦念、離別、そしてほんの少しの希望。

わたしは本作のテーマを「夢を追い続けることの難しさ」だと認識しています。
素晴らしさ、ではなく難しさ。
作中で主人公は好きなことを追い続けていますが、その過程がまったく楽しそうではありません。ミュージカル作品なので一部空想シーンのミュージカルパートでは楽しそうに歌い踊りますが、現実パートでは貧困や恋人との離別など試練の連続。
夢を諦めてお金を稼げる定職に就けば、貧困から抜け出して恋人とも一緒にいられますが、ジョナサンはなかなか決断ができません。
ジョナサンは、そこまで厳しい道を選んでまで欲しかった夢を掴めるのか。
もし夢を掴めても、その先に本当の幸せはあるのか。

わたしは27歳でこの作品に出会ったので、何者にもなれないまま30歳を迎えてしまう、という焦燥感を持つジョナサンに非常に共感しました。

そしてこちらも書いていて今思ったことですが、ディズニー映画の「ピーターパン」に通じるものがあるなと思いました。
原作が本人による自伝なのでオマージュというわけではないと思いますが、「ピーターパン」も大人になる手前のウェンディがピーターパンとの出会いをきっかけに、大人にならない国であるネバーランドでの冒険が始まりますよね。
ネバーランド=本作におけるジョナサンの「夢」とすると、貧困や恋人との離別を受け入れてそれでも夢を追い続けるジョナサンは、大人になりたくないとネバーランドに住み続けることを決めたピーターパンの姿とよく重なるように思います。

ちなみに主人公のモデルであるジョナサン・ラーソン(Wikipedia)は、実際には35歳のときに自作舞台「RENT」のプレビュー公演初日に大動脈瘤破裂で突然死してしまいます。
ジョナサンのように30歳を人生における一区切りとするかどうかは人それぞれですが、一方で「死」はいつでも誰にでも、ある日突然訪れる可能性がある。その事実を踏まえて本作を観ると、ジョナサンと同年代の方に限らず幅広い世代、層に響く映画なのではないかと思います。


5.「これは自分のための映画だ」と思える

もしかするとこれが最も外せない条件かもしれません。
作品をただの映画としてではなく、「自分のために作られた映画だ」と思えるかどうか、また自分ごととして落とし込めるかどうか。
リスト10作品のうち、わたしの中で一番「これは自分のための映画だ」と思えたのが、6.の「ウォルト・ディズニーの約束」です。

ウォルト・ディズニーの約束(画像出典:映画.com

米ウォルト・ディズニーが、自社の映画製作の裏側を初めて描いた作品で、1964年の名作ミュージカル映画「メリー・ポピンズ」の製作秘話をトム・ハンクス&エマ・トンプソン主演で映画化した。

ウォルト・ディズニーは娘が愛読している児童文学「メリー・ポピンズ」の映画化を熱望し、原作者パメラ・トラバースに打診するが、トラバースは首を縦に振らない。やがてイギリスからハリウッドへやってきたトラバースは、映画の製作者たちが提案する脚本のアイデアをことごとく却下。なぜトラバースは「メリー・ポピンズ」を頑なに守ろうとするのか。その答えが、幼い頃の彼女と父親との関係にあると知ったディズニーは、映画化実現の最後のチャンスをかけ、トラバースにある約束をする。

出典:映画.com

上の画像は左側の少女が幼少期のパメラ・トラヴァース、右側がパメラの父親(演:コリン・ファレル)です。

パメラの父親は空想のお話を作って子どもに聞かせるのがとても上手で、父親の空想話は後のパメラの作家としての才能に大きな影響を与えます。
しかし夢想家で子どものように空想の世界に生きることを愛する彼は、家族の生活のために現実の世界で銀行員として規律を守って働くことにストレスを感じ、次第にアルコールに逃げるようになり、結果的に父親はアルコール中毒によりこの世を去ります。

そのような過去があったことも影響してか、現在の時系列のパメラは異常なほど頑固でこだわりの強い性格で、「メリー・ポピンズ」の映画化を望むウォルト・ディズニー(演:トム・ハンクス)を悩ませます。
パメラとトムはお互いを理解し、映画「メリー・ポピンズ」は無事に完成させることができるのか。というのが本作の大まかな筋です。

さて、なぜ本作が「私のための映画」かというと、先述した主人公のパメラ・トラヴァース(演:エマ・トンプソン)の幼少期の生い立ちや、父親との関わり方が自分とあまりにも同じだったから。
わたしもパメラと同じく父親の空想話を幼少期にたくさん聞かされて育ちましたが、その経験が自分の人格形成にかなり影響しているなと今になって強く感じます。

そういうわけで、この映画を初めて観たときに他人事とは思えなかったし、自分と同じような経験を経た人があの「メリー・ポピンズ」を書いたのか、と一種の救いのようなものも感じました。
父親がいないことで自分は欠陥がある人間だと思いこんでいたけれど必ずしもそうではなく、あるいは欠陥があるからこそ作れるものがあるかもしれない、という希望になったというか。

長くなりましたが、そんな理由でわたしは本作が好きです。
ベスト10作品の中でも一番泣いた映画だと思います。

共通項から見える、わたしが映画に求める要素

先述した5つの共通項をもう少しまとめてみると、

・観ているほうが傷を負うぐらい衝撃的な作品が見たい、でも真面目すぎるのは嫌だ
・死生観のような人間の本質・根源について知りたい
・メッセージ、テーマに対し、自分なりの価値観で共感できる作品が見たい

という3点に帰結するのかなと思います。

まとめ

映画に限らずどのジャンルでも言えることですが
自分のオールタイムベストについて考えてみたことはあっても、それらの共通項を紐解いて分析していく作業をしたことがある人は少ないのではないでしょうか。
自分が映画、音楽、漫画などの作品に対してどのような要素を求めているかがわかると、これからの作品選びもより効率的に、さらに楽しくなっていくかもしれません。
自己分析の一環として一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。


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