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【詩】携帯電話

ボクがまだ小さかった頃
街の中で
四角いお弁当箱のようなそれを肩から提げて
時々顔に当てて話している人を見て
ちょっとカッコイイナと思った

ボクも大人になったら
ビシッとスーツを着て
それを操りながら街を闊歩するんだ
そんな未来を想像してドキドキした

大人になったボクは
息苦しくスーツを着て
板チョコみたいになったそれを手に入れた

いつもポケットに入っているそれは
ずっと掌の上で動かし続けても
何の気持ちも伝えられず
ボクの欲しい言葉は手に入れられなくて
要らないものばかりを溜め込んで
どんどん動かしづらくなっていった

ずっと一緒にいて
ずっと触れているそれは
ボクの何もかもを知っているはずなのに
必要なものは何も残っていない気がして
ボクは踏みつけてそれを捨てた

手元を見なくなったボクは空を見上げた
街が少し小さくなったように思えた

2016-05-11 投稿


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