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視力2.0

視力2.0で見たいものは、好きな物の詳しい色で、好きな人の見たい顔で。

何度も何度も思った。日に当たる時だけブラウンが際立つあざとい瞳がカメラのレンズで、奥二重に重く乗る瞼のアーチを下ろして、好きな物や好きな人を見た時の一瞬のトキメキでシャッターボタンを押せたならと。

逃したくないというより、何度も頭の中で繰り返しては追いかけたその瞬間を忘れたくはない。

本好きのある友はどこかから引用した。

"まるで刻々と姿を変える夕方の空のように、いろいろな種類の別れに満ちたこの世の中を、ひとつも忘れたくないと思った''

また思い、願った。ブラウンがレンズで、アーチを下ろして、トキメキでシャッターを。

ただ星を見た時ではなく、星降る夜に「星が降る」を感じた時、そっくりそのままこの星を見せたいと思える誰かがいることは幸せだと思った。

夜の洗濯。洗濯機が終わりを告げる音は苦手だけど、その合図で外に出て見上げる空が、星が期待以上で、洗濯を放棄したくなる。

月明かりの下では黒い正直な私の瞳は、相変わらずその瞬間を収めることが出来ない。だから代わりに、「あの人にこの星を見せたい」「同じ星を浴びたい」と夢のようにシャッターを切る。

都市圏にある有名ヘアサロン以外のどこで染めれば、そんな紫になるのか。地方の田舎・ローカル線には不向きの紫に染められたおばさんの髪色は、パールのネックレスとヒラヒラとした長めのカーディガンスタイル、そしておばさんの美しい笑顔が無ければ、ただの紫キャベツ色だった。

そんなものも忘れたくはない。というか、いつか思い出したい。紫キャベツのラペを食べた時にでも。

月が夕日と反比例して輝きを増している。そんな、私だけを照らす照明のような月の下で、驚くほどに下手くそな鼻歌を披露する。

昼間に歌う鼻歌よりも少し上手に響いたのは、聞き間違いではないと信じたい。闇に反響し静けさの波に乗って、私の歌声は輝き始めた月へと向かう。そんな一瞬の晴夜の片空に浮かぶ月も、思い出込で撮り収める。

でもやっぱり、鼻歌は下手くそだ。

何度も見た芸人さんの動画は、何度も見たせいで当たり前のように面白さに欠けてた。でも、隣で笑う先輩の横顔とも言えないちょっとした側面は、その「ちょっと」を思わせないくらい大胆に笑顔だとわかった。だから私も一緒に笑いたくて笑った。

この瞬間に関しては、そんな私たちを誰かに撮って欲しかった。次回を約束する、良い夜だった。


そうやって、いつか心が動いたその日を、その瞬間を思い出す事ができるだろうか。

言葉に乗せて、写真のような文を描き続けたい。視力2.0を言葉で補えたらな。忘れたくない何もかもを誰かに伝えたい。

直接「すき」とは言わないけど、大好きな人たちに聞いて、描いて欲しい。

私の見た視力2.0の世界!!


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