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なんとも言えない感情、強いて言うなら畏怖なのかもしれない。

九州に旅行にいっていました。
そんななかの、はなしです。


九州での七日目の朝早くに歩き出して向かったところ。
朝日が差す田んぼの美しさを覚えています。
友人たちと終始笑い転げながら、のんびり歩いて1時間。

風の丘葬斎場。

ここで受けた感情、感じたものは自分の中にしっかりと刻み込まれたようにおもいます。

重い荷物を肩に、片手にカメラを握りしめて回りました。

ひとりで静かに歩きながら回る中で、不思議な気分になっていきました。

葬斎場の奥へとすすみ、火葬場、でしょうか、鉄の扉がたくさん並んだ、澄んだ光が差し込む部屋を見て。

並んだ名前を見て。

不思議な気分になりました。

背後から差し込む光を背中に受けて、少し影になった扉たちと、名前と。

次に暗く、光がわずかにスリットから入り込む、小さな部屋へ僕は入りました。

重い、重い扉をスライドさせて入りました。
鉄と鉄の触れ合う、ザラザラとした、怖いほど質感をもった音がしました。
何度も開け閉めをして、音を聴きました。
重い、音がしました。

その部屋は告別室でした。

その部屋に印された文字、コンクリートの上に鈍く光る金属で印された、告別室という三文字に心がぐらりと動いたように思いました。

その文字にカメラを向けました。

僕はこのときはじめて、この気持ちを写真にのせて撮りたい。と思いました。
はじめて、この気持ちを表現する写真をどう撮ればいいのか考えながら、大切に、シャッターを切る指を動かしました。

こう思ったのが本当に僕の人生においてはじめてだったので、それを言葉にしたいと思ってこのノートを記しています。

本当に不思議な気分でした。
悲しさではなかったと思います。
ここに来る人、
鉄の扉を見て、背後の光を見上げた人、その目、
耳を傾ける人、
響く足音、
暗い部屋にたたずむ人たち、
もしくは未来のどこかの自分を
想像して
なにか、言葉では表せない気持ちになりました。

外にでて、丘を登り、たくさんの色のなかを歩き回りました。
風が、木々をゆらし、サラサラとした音が耳に入ってきました。

また、僕は友人と笑いあいながらこの場所を後にしました。

左肩にベルトがくいこみ、顔をしかめながら、お腹がへったと喚きながら次の場所へ向かいました。

そんな、はなしです。

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