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短編小説Vol.30「残された光」

春の光が公園を温かく照らす中、悠真はベンチに座り、心臓の鼓動を感じながら彩芽を待っていた。
公園は二人にとって特別な場所で、幼い頃から数え切れないほどの思い出が詰まっていた。
今日、悠真はこれまでの友情を超える新たな一歩を踏み出そうとしていた。


「彩芽にどう伝えようか…」悠真は緊張で何度も言葉を繰り返していた。
彼女に対する気持ちは日に日に強くなり、もはや隠し続けることはできないと感じていた。
だが、その重要な瞬間の直前に、運命は残酷ないたずらを仕掛けた。


悠真が彩芽を待つその公園の角を曲がったところで、急に倒れた老人が目に入った。
迷うことなく駆け寄り、助けを求める声を上げた瞬間、予期せぬ事故が彼を襲った。
悠真の意識はその場で途絶えた。


病院のベッドに横たわる悠真の姿は、平和そのものだった。
だが、その静けさは彼がもうこの世のものではないことを物語っていた。
彩芽が病室に駆けつけた時、彼女の心は絶望で満たされた。
悠真が彼女に伝えたかった言葉は、もう二度と聞けない。


彩芽は、悠真が最後に彼女に伝えようとしていた愛の言葉を想像することしかできなかった。
ただその言葉を胸に、彼女は深い悲しみを乗り越える決意を固めた。
彼女は悠真が愛したこの世界を、彼が見たかった美しい景色を、一人で見ることを誓った。


時間が経ち、彩芽は悠真の死を乗り越え、前を向いて歩き始めた。
彼女は、悠真と共に過ごした時間、彼が遺した夢、そして彼から受け取った愛の力を胸に、新たな人生を歩んでいく。
悠真との記憶は、彩芽の心の中で永遠に輝き続けるのであった。


彩芽は悠真が最後に訪れた公園へ行き、彼が最後に見た景色を目に焼き付けた。
彼女はそこで深呼吸をし、目を閉じて悠真に話しかけた。
「悠真、私は大丈夫よ。あなたの愛と夢を胸に、私は強く生きていく。あなたの分まで、この美しい世界を見ていくわ。どこにいても、私たちの絆は永遠よ。」
彩芽の声は静かで、しかし確かな決意を含んでいた。

悠真との思い出が彼女の道を照らし、彼女は新しい日々へと歩みを進めた。
悠真と共に過ごした時間は、彼女にとってかけがえのない宝物となり、彼女の人生に深い意味を与えていた。

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