変形性関節症って治療できますか?
こんにちは、丸山です。
筋緊張について
筋疲労について
書いてみたんですけど、整体屋やリラクゼーション店は筋肉の硬さを疲労の蓄積、血行不良、筋膜の癒着、体の歪みによって起こると説明していることが多いのですが、何をもって評価しているのか?その基準は主観的で曖昧なことが多いようですね。
うちの院でも、今では客観的な精査を心がけるようになりましたが、以前は同じように主観的な説明に終始していました。
説明できるって、説得しやすいんですよね。
医療モデルではなく、商業モデルで考えるとやはり何か原因を作ってしまった方が都合がいいんですよね。(通わせる理由づくりとして)
筋緊張や筋硬結は疲労も影響しますし、血行不良も影響しますし、筋膜や滑膜の滑走性や筋線維の粘弾性低下も認められますし、それらによって姿勢は変化します。
伝え方の問題ですが、間違えだと目くじらを立てるようではなく、それが主観と決めつけで起きていることが良くないですね。
また、すべて徒手によって改善されるかのように喧伝されることも問題があります。
筋のコリのような客観的評価がしにくいものは、患者側も医療機関で対処してくれるものでもないし、運動や休息を指導されるだけなので、どうしてもマッサージやリラクゼーションに頼ってしまうのも理解できます。
しかし、痛みを伴う筋緊張を放置していることで筋収縮に問題が生じて関節に痛みが起こってしまうことがあります。
肩や股関節はそういう二次的な症状によって障害を起こすことがあります。
これらのような大きな関節が痛みを起こすというのは、急な炎症は別として関節の変形などは突然始まるものではないと思います。
慢性化した関節痛は関節の変形などの要因になることがあります。
そこでこれらの症状を接骨院、整体院でどのように対処していけばいいのか?
今回はこの辺りを深堀りしてみたいと思います。
「関節の変形ってどうやって改善させたらいいのか?」
では、一緒に考えていきましょう!
関節の変形ってどうなること?
症状は関節周囲の引っ掛かり、疼痛、腫脹、違和感
原因は機械的ストレスや周囲の滑膜の炎症などが持続することで、軟骨の変性、摩耗、骨増殖によって血管の増殖、関節包の線維化などで痛みが増強されます。
症状としては関節炎による自発痛と腫脹、腫脹による可動制限が主だったものです。ここから関節軟骨の摩耗、荷重負荷の繰り返しによる関節炎の進行が、痛みの閾値を下げ、徐々に悪化します。
広範囲に及ぶ軟骨の消失は可動制限を増悪し、骨棘の形成をおこし、関節の拘縮へとつながります。
種々の炎症性疾患、軟骨脆弱性素因、外傷、関節形成不全、関節動揺性が関節症発生の誘因となり、関節への負荷、摩耗から骨破壊につながり、関節変形へと進行します。
関節の変形と聞くとつい
軟骨がすり減って、関節のすき間が狭くなった状態で擦れるから痛むんだな
なんて思いがちですがそうではなさそうですね。
そもそも関節の変形には基礎となる疾患や外傷、高い頻度の炎症、加齢による靭帯の弾性低下という素地があり、重ねて化学的な要因が重なったことから生じます。
関節の変形が必ずしも痛みにつながるかと言われればそうとも言えません。
どちらかというと度重なる炎症などによって痛みが繰り返されることで、心理的恐怖や自己効力感の欠如によって疼痛が増強しやすくなると考えます。
接骨院などの徒手に頼った施設では痛みの強さと関節可動制限といった症状を診て判断せざるを得ません。
同時に手技では変形した関節を元に戻すことなどできるはずもありません。
では、変形性関節症の患者の治療にはどのようなものがあるのでしょうか?
治療よりも予防
どうしても変形性関節症の治療となると関節の摩耗や骨棘による症状が発症してからになります。
要するに変形が起こってからしか治療が始まらないため、危険因子がある場合は予防が大切になってきます。
ただ、多くの人は予防というほど危機感を感じないために積極的になれません。
医療機関などが啓蒙していかないと中々、自分事として捉えられないでしょう。
残念ながら関節軟骨の摩耗防止や骨棘を防ぐ治療は未だはっきりとはせず、進行を遅らせるか、手術に頼るのが医学的対処になっています。
では、どういう指導を行えば変形発生リスクを下げることができるのでしょうか?
好発部位と疫学的特徴
現在、変形性関節症の患者は全国で20万人とも言われています。(医療機関に受診した数から)
特に過重がかかる下肢の変形が多く、次いで脊柱(頚椎、腰椎)に見受けられます。
変形性膝関節症の疫学からいくつか傾向などを抜粋して考察してみたいと思います。
変形性膝関節症の患者は40代以降増えていきます。ここで面白いのは2000年以降急激に増加しているということ。
高齢者が増えているのはありますが、下肢の筋力低下や肥満などとも関係があるのかもしれません。
そこで筋力や肥満についての調査を見てみると
男性よりも女性の方が肥満による悪化の傾向が高いようです。
筋力はよく大腿四頭筋の筋力低下を根拠にすることがあるようですが、証拠が不十分なようです。しかし、膝伸展筋の筋力をOA患者に年齢、性別で計測すると女性の70代から有意に筋力が弱かったようです。
膝が悪くなると、関節の可動域に制限を生じたり、歩行時に横ブレが大きくなります。
このように男性よりも女性の方が膝の変形性関節症は多く、高齢者は肥満や筋力低下の影響を受けるようです。
関節痛の患者が来たら?
では、関節が痛むという患者が来た場合どのように対応したらいいのでしょう?
接骨院や整体院で多いのはすぐに可動域ばかりに目が行ってしまう点。
関節痛と言っても単関節mono(1つの関節)、少数関節oligo(2~4の関節)、多関節(5つ以上)と痛む関節の数によっても診るべきポイントは変わります。
医師の場合、まず鑑別の前にSQ(semantic qualifier)を作成します。SQとは患者の言葉を医学用語に変換することで、そうすることで鑑別を絞りやすく、検索をかけやすくなります。
接骨院などの場合、関節の痛みとして患者が来た際は、その関節に炎症があるか?外傷なのか?慢性痛なのか?という思考になってしまいがちです。
複数の関節痛がある場合は急性多関節炎などと医学用語に変換して疾患に照合することで違和感に気づきやすくなります。
関節"炎"なのか?関節"症"なのか?
急性的なものか?慢性的なものか?は接骨院では保険適応のためにそこに目が行きやすいのかもしれませんが、症状としての把握は炎症の有無が優先です。
炎症は本当にあるのか?変形による痛みは必ずしも現時点で炎症があるとは限らないため、関節痛として考えていくことがベターだと言えます。
関節痛は関節自体の痛みと関節周囲の腱や靭帯の痛みと区別がつきにくい場合があります。
腱や滑液包は反復運動やオーバーユースによって痛みや炎症を引き起こします。よって関節痛を鑑別するには腱や滑液包の位置を認識しておくことで判断がしやすくなり、見落としが減ります。
関節痛は滑液の内側にある関節内部の痛みなのに対し、関節周囲痛は関節周囲の腱、靭帯、滑液包などがストレス因子です。
関節痛の患者が来院した場合は、炎症の有無をはっきりさせ、関節痛なのか?関節周囲痛なのか?を鑑別しましょう。
では、関節の炎症を見分けるにはどうしたらいいのでしょうか?
関節の機能は曲げたり、伸ばしたりです。関節の炎症を探るには可動域の中でしっかり動くことができるかどうか?ということが大切です。
下肢の場合は正座できるかどうかは非常に分かりやすい徴候です。
正座は股関節、膝関節、足関節がフル可動します。正座をしてみて痛みなく出来るようであれば炎症の疑いは無くなります。
関節周囲の痛みとの区別は?
関節自体の障害と関節周囲の障害を鑑別するとなると、それぞれの特徴を理解する必要があります。
難しいのは関節周囲には腱や靭帯などの軟部組織がたくさんあるので、そこの鑑別です。
腱や靭帯などの関節周囲の問題は、それらの解剖学的特徴を考慮すると
腱:関節を特定の方向に動かす、筋収縮を関節に伝える
靭帯:関節の動きにを制限する
関節そのものの障害
・全方向に可動制限または痛みを誘発
・自動でも他動でも痛みを生じる
関節周囲の障害
・特定の方向の動きのみ痛みを生じる
・自動では可動制限と痛みを誘発するが、他動では可動制限はなく、痛みも生じない
ただし、関節周囲の痛みが起因して筋拘縮などを起こす場合もあります。
ということで変形性関節症を疑うのであれば
・全可動域で制限または、痛みを誘発する
・炎症はない場合もある
・自動でも他動でも痛みを感じる
問診時にこれらの訴えを患者がしている可能性が高いでしょう。
変形性関節症を治すという考えについての疑問
ここで考えておきたいことがあります。
例えば、患者さんが膝の痛みを訴えてきたとします。
スペシャルテストを使って膝のどこに障害があるかを確認した場合、変形性関節症がベースにあるという条件と、組織障害があるから変形性関節症だと考える場合があります。
前者は変形性関節症の診断を受傷前から受けていたため、炎症は起こりやすい状態にあったと言えます。
後者は今回の受傷によって検査したら変形性関節症だと診断された場合です。
どちらも変形はすぐに起こるわけではないので、慢性的に膝にはなんらかのストレスがあったと仮定できます。
その上で現在、痛みや炎症がある場所が特定された場合は、膝の変形というものを治療対象にしようという発想になってしまうことがあるかもしれません。
しかし、前述したように関節の変形を改善する治療は保存療法ではみつかっていません。
ですから、接骨院では炎症への対処しかやりようがありません。
急性期にしか保険が適応できないという論理がここから分かると思います。
それにも関わらず、治療を継続的に行っている先生がほとんどであろう現状ですから、実際どんな治療をしているのか?かなり疑問なのが接骨院なのです。
じゃあ、接骨院では何もできないじゃないか!
という話になりそうですが、医療という視点であれば医師との連携がなければ完成されないとは思います。
しかし、予防的観点から考えれば
・筋力の低下を防ぐこと
・自己効力感を育むこと
・痛みの教育
・肥満の指導
など発症前にできることはあります。(もちろん自費)
また、発症後でも
症状に対してではなく、課題を決めてその課題をクリアするためにサポートしたり、指導したりしてトレーナー的な役割を担うことができるかもしれません。
患者さんのゴールは痛みのない関節ではありません。
患者さんのADLの改善とQOLの向上です。
そこを考えるのは柔整師または整体師などの療術家の役割であるとも思います。
参考文献:変形性膝関節症の疫学
―下肢アライメント3次元測定システム開発の背景―古賀 良生
本当に使える症候学の話をしよう 高橋良 じほう
適切な判断を導くための整形外科徒手検査法 エビデンスに基づく評価精度と検査のポイント 松村将司 三木貴弘 編集 MEDICAL VIEW
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?