見出し画像

父の幕引き 17 直葬って

2020年6月26日

直葬 を初めて知ったのは数年前、
知り合いの訃報の際に
お通夜や告別式のお知らせではなく
火葬場でお別れして欲しい
という呼びかけだった
その方は
自宅に安置されていて
そこから火葬場へやってきた

そのまま荼毘に付される(火葬される)のは
可哀想だと思った友人が呼びかけた

驚いた 
そんなことができるんだ
という印象だった

調べると
[直葬とは、通夜や告別式などの儀式を一切行わず、自宅や病院から遺体を直接火葬場に運び、火葬によって弔う葬式のことです。別名で、密葬や火葬式と言われることもあります。]

遺体を自分たちで運ぶの?
誰か運んでくれるの??
謎だらけだった 

うちの父の場合、
エンディングノートに
直葬を希望すると書かれていた

兄が前もって目星をつけていた葬儀屋さんに
am1:30に電話をいれた

病院へ迎えにきてくれて
安置できるところへ運んでくれることになった
(自宅でも可)
送迎費用は含まれていた
→詳しくは後に記載

何時でも電話に出てくれて 
何時でも迎えに来てくれるんだ
すごい

父が亡くなってから3時間後の
am3:00

白衣を来た若い男性が一人
ストレッチャー(折りたたみ搬送台車)を 
押して現れた
思ったより若い人で驚いた

深々とお辞儀をして
テキパキとすすめていく

ベッドからストレッチャーに
父を乗せ替えた
看護師さんと兄も手伝った

顔まですっぽり白い布に包まれ
落ちないようにしっかりベルトを巻かれた

待っている間にまとめておいた父の荷物を
姉と手分けして持ち
ストレッチャーの後を付いて歩く

エレベーターに乗り
一階まで降りて
病院の裏口へとゆっくり丁寧にすすむ
裏口の右手奥に「安置室」がチラッと見えた

緑のナンバーをつけた
黒くて大きなワゴン車が
後ろの扉を全開に開けて止めてあった
ストレッチャーごと乗せれるようになっている

丁寧に丁寧に扱ってくれる

ベテラン看護師さんが
見えなくなるまで
深々とお辞儀をしながら見送ってくれた

運転するのは
さっきの白衣を着た男性

この地域の病院と何件かの葬儀屋さんを
行き来しているのだろう
こんな若い彼がこんなに丁寧に
何時でもきてくれる

すごいお仕事だ

姉は後部座席の父のすぐそば
私は助手席に乗り込んだ
兄はバイクできているので
別で追いかけてくることにした

ゆっくり丁寧な運転
こんなときだから
気を遣って会話を弾ませることもしなくていい
(美容院で話しかけられるの苦手)
クーラーを少し弱めてもらい
眠くなりそうな
ならなさそうな車の揺れ
病院の空気から解放された
はぁーーーーと深く息をついた

15分ほどで車は止まった
ビルの前だった
葬儀会場のようだ
ここに遺体を安置してもらう

迎えに出てきたのは
今回お願いした葬儀屋、点鬼堂の○□さん
黒いパンツに紺のブルゾン
眉毛は細めで
昔ヤンチャをしてたのか
土地柄か、、

古い雑居ビルのような佇まい
都会の真ん中にこんなのがあるのも知らなかった

「よろしくお願いします」と頭を下げて
小さなエレベーターに乗り込むと
「古いところでスイマセン」と
声をかけてくれた

こんな一言で
心が解けるようなホッとする感覚
「古い建物」が
「年季の入った清潔な建物」に
変身した

扉を開いて奥に入ると
予想に反して
葬儀もできる広い会場だった
火葬までの安置なので
狭い部屋をイメージしていた

椅子が30脚ほど並び
その傍に広い畳の部屋が繋がっている

花や祭壇がない葬儀場は
公民館のような懐かしい落ち着く雰囲気

和室の部屋にテーブルが一つ
脚の悪い人も座れるような低い椅子が並んでいる
隣の和室には
きれいに布団がひいてある

ここに寝かせてくれるんだ

テーブルの前で待っていると
父の遺体の乗ったストレッチャーが運ばれてきた

運転してくれた白衣姿の若者は
ここでバトンタッチのようだ
ストレッチャーを回収して帰って行った

まずは父の遺体を安置するために
○□さんが動き出した
丁寧にテキパキと父を布団に納め、
ドライアイスをお腹のあたりや頭の周りに
設置していく

最後に
布団の上に
袈裟のような綺麗な布をかけて
布に包まれた刀を胸の上に置いた

納棺師(おくりびと)の仕事に感動した

自分の父親なのに
何をどうしたらいいのかわからない
どこをどう触るのかもわからない

これは無くならない仕事ですね

それからテーブルを囲み
これからのことや
葬儀のない直葬について
細々と決めていった

直葬といっても
人が亡くなってから24時間は
火葬できない法律があるらしい

なので病院から火葬場へ
本当に直送するのは稀で
自宅か葬儀場に安置するのがほとんど

その上、
火葬場の予約状況によって
いつ荼毘に付すかは
夜が明けて
火葬場の開く9時にならないとわからない
(この時am4:00)

父の住所のある伊丹市の
オススメする規画葬儀というので
だいたいの相場を見ていた

水仙と菊というのがあって
13万円か26万円くらいでできるんだ

この「水仙13万円」でいいよねと思っていた

菊(一般仕様)に対して
水仙(援護仕様)の 援護仕様 これなんだろ?
と思っていた

これは生活保護などを受けてる
生活貧窮者救済の設定だと教えてもらった

そっかーーーー

あきらかに残念がる私たちへ
市の規格葬儀にはない
点鬼堂さんのプランを提案してくれた

込み込みで10万円ぽっきりプラン!
どんな費用が含まれているかというと

⚫︎お迎え寝台車込み(10kまで1回分)
⚫︎会館でのご安置込み(お預かりご安置のみ)
⚫︎会館使用料2日分 込み
⚫︎ドライアイス込み(付属日数分)
⚫︎祭壇なし
⚫︎お棺込み(高級布張棺)
⚫︎通夜進行無し
⚫︎葬儀進行無し
⚫︎霊柩車込み(寝台車タイプ)
⚫︎お骨箱本骨壺 込み

こんなに含まれていた
こんなに色々考えたことなかった
一つずつオプションのように追加されていたら
気が遠くなっただろう

別に必要だったのは
⚫︎火葬費用
伊丹市民なら大人10,000円
伊丹市外なら大人40,000円

⚫︎追加ドライアイス代
火葬予約が取れなかった場合1日延びることに
20,000円

の2つのみ

骨壺のサイズまで選ぶなんて
知らなかった

付いてるのは一番小さい骨壺だけど
大丈夫ですか?と確認された

骨壺の大きさの基準がわからない

関東では遺骨をほぼ全部骨壺に入れ
関西では大切な部分の遺骨だけを入れる場合が
多いと聞いた

父は散骨を希望しているので
遺骨は少しでいい
小さい骨壺で充分です

お通夜もお葬式もいらない  

お花は
自分たちで用意しよう

カッコつけない父
モノに執着のない父
父の希望する質素にしよう

[私は貧しいのではなく、質素なのです]
ホセ・ムヒカ大統領の言葉が浮かんだ

結局のところ
どうなったかというと

10万円に消費税がプラスされ
別料金の火葬費用が市民1万円と
火葬場の予約が取れず1日伸びてプラス2万円
全部で 147,000円

スゴイーと思った
→何がスゴイかは次へ続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?