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138億年の時間の中で☆第29話☆「T‘scaféオープン」          

高校三年生になってから学校でも進路の話がちょこちょこ出ているのだと思います。ある日、突然「卒業したらどうするの?」と長男がボソリ。
「さあ。君はどうしたい?」と私が質問返しすると、きっぱりハッキリ「カフェの店員さんになりたい」と答えました。
給食の配膳を喜々として取り組んでいたようだし、毎朝、私の為にコーヒーを淹れてくれる長男。
小さい頃はレストランの店員さんごっこが大好きだった。その時の楽しみや憧れが残っているのかな?
 
せっかく希望を表明してくれたのだから気持ちが冷めないうちに願いを叶えるサポートをしてあげたい。かといって、すぐにカフェに就職できるわけではないし。ハードルは高そう・・・。
 
でも、彼の労働への原動力はお金じゃない。
憧れと、自分の力を発揮したい欲求と、誰かの役に立ちたいと、ありがとうと言ってもらう事。
カフェがいいのは、おそらく、リラックスした和気あいあいとした雰囲気が好きなのだ。
それがモチベーションなのだとしたら、カフェスタッフになることは実はとっても簡単でした。
 
青空カフェをやっちゃおう!と思い立った私は早速、SNSに投稿。
すると、友人が看板を作ってくれました。
次男がお店のロゴを考えてくれて、早速Tシャツ屋さんにプリントを発注しました。
ロゴには「幸」という字が書いてあります。次男曰く「こいつと一緒にいると幸せな気持ちになるから」とのこと。
お客さん第一号になりたいと言ってくれたのは、3年生まで在籍した小学校の支援級の担任の先生。
オープン前から沢山応援をもらって、やる気満々の彼は前日にクッキーも作っていました。
 
さあ、始まるよ「T‘s café」(長男のイニシャルをつかったシンプルなネーミング)!。
 
当日はお天気と気持ちの良い風に恵まれて、幸先がいい。
最寄り駅近くの公園で予約いただいたお客さま第一号の先生を待ちます。藤棚の下のテーブルがまさにT‘s caféの為に用意されていたみたい。
先生も笑顔でお見えになり、なんと開店祝いのお菓子までいただいちゃった。
 
いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。そんなふうにペコリと御辞儀。
丁寧に茶器をセットして、ゆっくりとポットにお湯を注ぎます。
クッキーを学校の授業で作ったお皿にあけて、紅茶と一緒にはいどうぞ。おかわりもありますよ。話題は修学旅行の報告会。
おしゃべりを楽しんだ後はお会計。
ちゃんとスマイルとありがとうをいただきました。
 
日曜の午後に訪れたささやかなハッピータイム。人から見たらただのおままごと。でも、思いつきから実現まで、ずっとずっと暖かい気持ちを味わっていました。
 
雇用、賃金、社会貢献、スキルアップ・・・そんなことに盲目的になっちゃうと見えてこなかった、優しくって柔らかい時間。
私が経験したヒリヒリした緊張感のある仕事と全然ちがうし、お金は稼いでいないけど。
これはこれで、彼らしいキャリアの始まりです。
 

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