徒然物語33 とっておきの切り札は
くっ…ここで「魔封じの聖戦士」だと?
厄介極まりない。こいつの効果で魔法カードは一切使えなくなる。
おかげで、「魔法カード:森」のフィールド効果で姿を隠していたおれのモンチー・キャットがあぶり出される!まずい!
「見つけたよ!うこっけいポッポーで攻撃!」
おれのモンチーが消し飛ぶ。
「続いて聖戦士でダイレクトアタックだ!」
矢継ぎ早に相手が告げる。
ぐっ…おれのHPは残りわずかとなった。
次のおれのターン、何もできなければ、敗北しかない状況に追い込まれてしまった。
「ターンエンドだ!」
相手は高らかに宣言する。
あいつを引くしかない。
この圧倒的ピンチを切り抜ける手段は、一つしか残されていなかった。
そう、おれの切り札「気球スナイパー」だ。
このカードの効果は、「飛行」で、飛べないモンスターの上から、相手を直接攻撃することができる。
頼む!おれの右手よ!
全身全霊を込めて、カードを引く。緊張で右手が異様なほど冷たい。
カードを見る。
そら、きたぞ!「気球スナイパー」!さすがおれの相棒だ!
「ふっどうやら勝利の女神はおれのことが好きみたいだぜ?」
にやりと笑い、右手を掲げる。
「気球スナイパー召喚!ダイレクトアタックだ!」
おれは勝ちを確信して、そう叫んだ。
「残念だけど、それは通らないよ。」
相手が冷たい笑みを投げかかてきた。
「なにっ!?」
「君は知らないだろうが、うこっけいは飛行こそできないが、高く飛び上がることができるのさ。見せてやれ!ポッポージャンプ!」
瞬間、うこっけいは高く飛び上がり、スナイパーの攻撃を遮った。
そんなっ!?うこっけいってこんなに高く飛べるの?
言葉を失ったおれは、飛び上がるうこっけいの美しさに見惚れるしかなかった。
「ターンエンド、おれの負けだ。」
切り札を防がれた今、潔く負けを認めるしか選択肢は残されていなかった。
「うこっけい、舐めてたよ。いいデュエルをありがとう。」
「こちらこそ楽しかったよ。またやろう。…ところで。」
相手は勝利の余韻もほどほどに、話しはじめた。
「うこっけいの卵って、ニワトリに比べてはるかに栄養価が高いんだよ。カステラなんかが最高だ。これから一緒に食べに行かないかい?」
そう言って、さわやかに右手を差し出してくる。
いや、うこっけいにそこまで愛着ないし、甘いの苦手だし、そもそもおれ卵アレルギーだし…
努めてさわやかに、丁寧に、お誘いを辞去した。
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