徒然物語43 イメチェン

「よお、随分久しぶりやな。
高校以来やから、10年ぶりか~。
おれのこと覚えてる?

えっ人違い?

ふふ。まあ、そう思われるのも無理あらへんわな。
なにせ、高校の頃のおれは自分でゆうのもなんやけど、窓際の隅っこでいっつも読書に耽ってる、そのくせ成績は中の下、もちろんスポーツなんてからっきしのぱっとせえへんヤツやったわ。

せやけどな、関西の大学でイメチェンしてん。
茶髪にピアス、ルックスだけやのうて、テニスサークルの代表やったりして、キャラ変もきまったんやで。
そやそや、関西弁も身に着いてしもうたわ。
そのままあっちに就職してんけど、今日は久しぶりに地元に帰ってきたっちゅう分けや。

それにしても、ホンマに元気そうでなによりやわ。
高校3年生の時、隣の席やった、富永さん?せやろ?」

「いえ、全然違います。名乗るつもりはありませんが、私は富永ではありません。
もっと言うと、20歳になるまで引きこもりで高校には通っていません。
これ以上、付きまとうなら、警察に相談しますが、よろしいですか?」

「えっ富永さんやあれへんの?そっくりなのに…
えろう、すんませんでした。 それじゃ、さいなら~」

そう言い残すが早いか、男はいそいそと繁華街へと消えていった。

やれやれ…これしきの事で引き下がるとは。

彼の言う通り私は富永だ。そしてあの男は高校時代隣の席だった長谷山君そのものだ。
どんなに容姿や態度、言葉遣いが変わっても、人としゃべるときに目を合わせないしぐさは相変わらずで、すぐにピンときた。

今更馴れ馴れしくされても迷惑なだけだから、塩対応したけど、急に現れたんでびっくりしちゃった。

…それにしても、あの頃から身長は10センチも伸びて、体重は30キロも痩せたっていうのに。

おまけに女装メイドカフェで猫耳眼帯JKコス真っ最中の私に気が付くなんて、あの男、なかなかのものかもね…
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?