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書評

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読書の喜びは、他のなにものにも代えがたい魅力が有ります。そういった喜びを皆さんと共有すべく、知的刺激を受けた書、好奇心満載の書、ためになる書その他この他、わたしの狭い読書領域の中… もっと読む
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#ローマ人の物語

「『ローマ人の物語』他、塩野七生著作書評リスト」

「ローマ人の物語」他について、塩野七生さんの著作をリスト化します。 ローマ人の物語 1)「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」/初めから面白い|りょうさん (note.com) 2)「ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記」/これはめちゃくちゃ面白い|りょうさん (note.com) 3)『ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷』/帝国の盛衰の歴史、現代と変わらず|りょうさん (note.com) 4)「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサル ルビコン以前」野心、虚栄心の問題|りょ

「ギリシャ人の物語Ⅰ 民主政のはじまり」塩野七生著(新潮社)/ローマ人の物語を読めば手を取らざるを得ない。トロイ神話からギリシャ文明のはじまりと興隆:ここに西洋文明がはじまる、、、

「ローマ人の物語」から「ギリシャ人の物語」へ 「ローマ人の物語」全十五巻プラスアルファ(スペシャルガイドブック)を読了してみると、実に味わい深い思いが胸に残りました。 それはやはり塩野七生さんが、日本人としての視点をかっちりと維持しながら、古代ローマ帝国の人間模様を子細をしっかりと追いながら描いて見せてくれたからに他なりません。 本質的な意味で言うと、一神教キリスト教徒でない日本人塩野七生が一神教に乾いた目をもって描いたものだからこそ、日本人あるいは日本にとっての意味が深く

「塩野七生『ローマ人の物語』スペシャルガイドブック」/事後編として全15巻を楽しみ返し、頭を整理できる。写真豊富で第Ⅹ巻同様映像でイメージを拡張できる、お薦め本

「ローマ人の物語」全15巻を楽しみ返せる 「塩野七生『ローマ人の物語』スペシャルガイドブック」のご紹介です。 これは、「ローマ人の物語」全15巻の執筆、刊行が成り、それらを振り返り、エピローグのように余韻を楽しむためのガイドブックです。 全編写真が豊富、塩野七生さんを見出した編集者との対談、新潮社の塩野さんへのインタビューが掲載 全編写真が非常に豊富に掲載されています。この「スペシャルガイドブック」は、第Ⅹ巻の「すべての道はローマに通ず」もローマ帝国の今に残されているイ

「ローマ人の物語ⅩⅤ ローマ世界の終焉」/帝国の、ローマ文明の終焉、哀しいかな。活力が失われローマ人の気概が雲散霧消し、ローマ人がいなくなった、、、、

読むのがつらくなる「ローマ人の物語」最終15巻 本巻15巻では、ローマがローマでなくなり、痕跡さえも破壊され消失していく過程が描かれています。 そして読んでいて、つらくなるのがこの「ローマ人の物語」最終15巻です。 あの輝かしいスキピオ、カエサル、アウグストゥスのローマはもう痕跡さえも無くなっていく、そんなローマに何の意味があるのでしょう? そんな塩野七生さんの叫びが聞こえてきそうな15巻です。 人間を知るためには誕生から死までの事績を丁寧に追うことだとの信念で『ローマ』

「ローマ人の物語ⅩⅣ キリストの勝利」/四世紀から終末の五世紀へ、陰湿な権力者コンスタンティウス帝、一服の清涼剤かのようなユリアヌス帝そしてテオドシウス帝と司教アンブロシウス

キリスト教と皇帝の利権構造化 キリスト教を公認したコンスタンティヌス帝時代のミラノ勅令は、実質的にキリスト教国教化のスタートだった。 利用したのは、コンスタンティヌス帝であったが、帝国の衰亡が辺境の蛮族侵入から帝国内への侵犯へと進み民衆の不安が否が応でも昂進する中で、コンスタンティヌス帝の息子、コンスタンティウス帝が権力を掌握していく中で皇帝とキリスト教の間で利権構造化が進んでいきます。 皇宮に蔓延る宦官という名の専制政治官僚 ついに、ローマ帝国内に、あの忌まわしい宦官

「ローマ人の物語Ⅹ すべての道はローマに通ず」/豊富な写真がイメージを形作る珠玉の一冊

本編は、これまでローマ帝国の歴史を編年体で記述してきたⅨ巻までとことなり、ローマ人がローマ帝国(正確には帝国以前の、建国以来)の歴史をインフラ構築について、特別に視点を集約して編纂してモノです。 ローマ帝国のインフラストラクチャー 1)ハード ローマ街道と上下水道について綿密に紹介してくれています。 「すべての道はローマに通ず」という言葉と、最も端的に現わし、代表中の代表と言えるものが、ローマ街道です。 帝政以前の最初のローマ街道である「アッピア街道」は紀元前4世紀末ア

「ローマ人の物語Ⅴ、Ⅵ、Ⅶの補足」/王朝系図と年表がついて理解促進、便利です。

「ローマ人の物語Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ」の補足です。 この「ローマ人の物語Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ」では、 Ⅴ巻には、 紀元前100年のカエサル誕生から暗殺(紀元前44年)、オクタビアヌス権力掌握(紀元前30年)までの、ローマ、地中海世界及びその他の世界の出来事年表が巻末についています。 Ⅵ巻には、 カエサル暗殺(紀元前44年)からオクタビアヌス権力掌握(紀元前30年)、オクタビアヌス改めアウグストウスの死(紀元14年)までのローマ地中海世界及びその他の世界の出来事年表が巻末についています。 さらに

「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサル ルビコン以前」野心、虚栄心の問題

いま、「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサル ルビコン以前」をまさに読んでいるのですが、カエサルの人柄が少しづつ胸の奥に伝わって来てその世界に心が勇躍してきつつあるところです。 中盤に差し掛かって、之は左成り!と手を打ったところがありますので少し記しておきたいと思います。 野心と虚栄心 塩野七生さんは、カエサルを評するにあたり、スッラ、ポンペイウス、キケロ、ブルータスらと比較して、野心と虚栄心が共に大きく野心のそれが一段と大きいのがカエサルだと言っています。 一方、ス

「ローマから日本が見える」塩野七生著、集英社文庫/いまや”日本”でなく”世界が見える”

塩野七生さんの「ローマ人の物語」は読んでみたいと思ってきたけれど、何分大作なので、一度読みかけたら読み切らないことには、という気がしてこの年まで読まずにいる。 この間、そういう意味で手軽な塩野本を見つけたので読んでみたが、面白かった。 それが上記の「ローマから日本が見える」という、もともとは平成17(2005)年に刊行した著作だった。 今読んでみると、内容的に、特に”日本が見える”という部分はほとんど無く、平成17年当時世界の中で一人負け状態だった日本のことを念頭に読む人