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本の廃棄を検討する 8

今日、掘り出した本は、自分の普段の読書傾向と異なるものが多く、そうそうこういう雑多な感じが演出できてよい。

演出?

いやいや、本当に掘り出したんですよ。

中川美紀『〈女性職〉の時代 ソフトインテリジェンスの力』(角川ONEテーマ21 2008)

私が関心を持って読む本としては、男女の能力差をどちらかというと区分せずに、区分そのものを社会的構築物とみなす見方をする本が多いのですが、この本はわりにその辺は「ソフトインテリジェンス」=女性特有の力と述べており、それが清々しかったりする。当否はさておいて。

そもそもこれも資料の一つとして買ったもので、そんなに簡単に捨てられないなあというもの。男女関係なく時代は「ソフトインテリジェンス」=気づかいや共感関係の構築といった能力を求めているので、このスキルは男性にこそ売り込んでいけばいいんじゃないかとも思わなくもない。

まあ、捨ててもいいけど、資料だし。

増田義郎『略奪の海 カリブ もうひとつのラテン・アメリカ史』(岩波新書 1989)

中米・南米。世界史の中でも日本人の研究者が少ない分野で、スペイン語、ポルトガル語をやれば、どっちかというと、スペイン、ポルトガルの文学や歴史の方が食っていけそうな気がするので、必然的にそっちに流れ、中米・南米にはなかなか回らない。

90年代はそれが少し変化して、ポストコロニアリズムの中で、カリブや南米にも注目が集まった。私が受験したときは世界史で受けたのだけれども、カリブ史などにも目配りをしていた先生がいた。そうした目配りのきっかけになった本であるのかどうなのか。1989年。

でも、ラテンアメリカブームの流れにあったのではないかと推測される。カリブの歴史については、私もあんまり知らないので、これはいずれちゃんと読む時が来る気がするので、捨てない。

山内昶(やまうち・ひさし)『経済人類学への招待 ヒトはどう生きてきたか』(ちくま新書 1994)

これもリサイクル本をいただいてきたものだけれども、昔、栗本慎一郎という人がいて、中学生くらいの私にとってはいとうせいこうと同じようなちょっと頭のいいタレントという印象だったのだけれども、大学の先生だった。

大学に入ってから、ああこの人は学者だったのだ、と栗本氏の紹介していたカール・ポランニーなんかを図書館でチラ見してはわかったようなふりをしていた。ただ、栗本氏が言っていた「文化経済学」みたいな考えは面白いと思っていて、今の行動経済学ブームにも発想は流れ込んできているように思える。

この本は実はとてもいい本で、隠れた名著の類だと思われるのだけれども、合わない人には合わないかも。近代化の議論とセットに読むのがいいんじゃないか。

久しぶりにめくって、ニコラス・ジョージェスク‐レーゲンなんていう学者のことを思い出した。懐かしい。捨てられない。

吉川洋『ケインズ 時代と経済学』(ちくま新書 1995)

一時期、英国流の節度ある自由主義の思想を簡単に解説するような本が相次ぎ、その流れで、ケインズやアマルティア・センなどの福祉経済学と呼ばれるような潮流の系譜にハマったことがある。ハマっただけで理解はできていないが。

そうした中で、ケインズの名前があるものを拾い集めた結果、こうした新書が我が家にあったりする。まあ、これも青春の一ページとして捨てなくてもいいか。

全部青春の一ページだな。

濱口桂一郎『働く女子の運命』(文春新書 2015)

これも、中川美紀『〈女性職〉の時代 ソフトインテリジェンスの力』なんかと一緒に資料として買い求めた書籍である。何の資料なんだよといわれそうだけれども、それはちょっと秘密。仕事で、誰かを説得するときには、読んでないふりをしつつ、内容自体をトレースして説得力をもたらさなければならないことが結構あるということ。

これも結構いい本なんですよね。タイトルが象徴的なので、それだけで敬遠されそうな感じなんですが、読むと、均等法に財界が反対した時のロジックとか、改正均等法の際に総合職と一般職の区別を示す制服が撤廃されそうになったときのエピソードとか、その時分に慶大経を卒業して総合職として入社し、当時の企画部経済調査室副長を務めていた女性の話とか、ユニークなエピソードと歴史を絡めてわかりやすく説明してくれるいい本です。

その企画部経済調査室副長の方は、のちに「東電OL事件」の被害者となる方で、濱口さんは「いくら何でも彼女は「OL」ではなかったはずです」と苦言を呈している。ホントあのタイトルは事実誤認をもたらしましたね。

ということで捨てられない。

アンリ・ミットラン『ゾラと自然主義』(白水社文庫クセジュ 1999)

クセジュは捨てないって言ってんだから、ここで検討する必要はないだろうと言われそうです。確かに。

ただ、私にもエミール・ゾラブームというのがあって、その流れで購入した一冊だったということを書き記したくて、挙げました。

ゾラブームは、ホントに著作集を買うかどうか悩んだあげくに、虫食いで買って途中で飽きちゃった、本当に中途半端なマイブームでした。それを思い起こさせる青春の一冊。

宮元啓一『仏教誕生』(ちくま新書 1995)

自分も仏教とか東洋思想にいつかはいきつくのかもしれないと思って、一応リサイクルコーナーからいただいた本の一つです。まだ、そこまでは行きついていませんが、いずれは到達するのでしょうか。

ブッダというと手塚治虫先生の『ブッダ』しか知らないのですが、「火の鳥」を読んだことのない私も、『ブッダ』はなかなか感銘を受けた思い出があります。繰り返し読むほどではありませんでしたが。

そんな「ブッダ」について書いてある本ですが、まだ読んでません。でも、読みやすそうなので、行きつく直前くらいに読むために今回はとっておきます。

そもそも捨てるつもりあるんか、という感じですが、ソフトインテリジェンスがギリってところですかね。

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