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#7 わくわく海外への旅 ラグジュアリー船にのってみた


実際に乗ってみて感じたこと

 2023年9月22日 シルバー・ウィスパー号で東京国際港を出て
大阪、門司、釜山、金沢、秋田、函館を巡る10日間のクルーズ。この時期は、
東北、北海道では紅葉も楽しめるかもしれない。

 平日の旅であるため、働いている友人も誘えない。そこで、この歳にして初めての長い一人旅となった。これまでに英語に問題集、資格試験、DVD、スクール通いとかなりお金をかけてきた。オールイングリッシュなので話す絶好のチャンスである。妹によると、銀行だったら私の英語力を判定し、お金は貸さないレベルだそう。でも、好きだし、断捨離をする必要もないし……まあ、いいではないか。
 
 シルバー・ウィスパーは全室スイートで専属バトラーつき。英語のオプショナルツアーが付いている。24時間ルームサービスとドリンクサービス (一部銘柄を除く)も料金に含まっていて、基本的にお金の追加はない。


私の部屋の様子

 出発の翌日である秋分の日は大阪だった。四天王寺と梅田のスカイビルに行くツアーを選んだが、そこでカナダ在住の日本人、みさおさんと知り合いになった。日系3世の旦那さんは神戸の友達に会いに行っているので、今日はおひとりで参加とのこと。
 それからは、お友達との食事の約束がないとき、ご夫妻は私を朝食や夕食に誘ってくださった。若いころの苦労した話やお子さん、お孫さんの話などを聞きながら、楽しくお食事ができた。

 1人の時もレストランでは窓際に案内され、スタッフの方が気さくに声をかけられるので、さみしくなかった。また夕食の前にバーに行き、ピアノの演奏を聴くのが楽しみになった。ふだんは、全く縁が無い場所だが……毎晩のように行くものだから、顔を覚えられた。特にスタッフのキャサリンからは名前を呼ばれて、親しく話をするようになった。ノンアルコールのカクテルは3種類だが、彼女は特別にわたしの好みを聞き、バーテンダーに頼んでくれることもあった。
 
 バトラーは、フィリピン出身、長身の若い男性。「荷ほどきをお手伝いしましょうか」と言う彼に「自分のことは自分でするので、話し相手になってほしい」とお願いした。とてもフレンドリーで、気兼ねなく質問やお願いができた。楽しい旅になったのも彼の力が大きい。

 船に乗る前、新しく洋服を買おうかとも考えたが、旅行代金も高かったので、背伸びをしないでありのままでいこうと決めた。乗ってみて気づいたが、フォーマルの日は、一目をひく派手な洋服というより、上質の自分に似合うデザインを着ている方が多かった。他の船に比べ、少し年齢層が高いのも関係しているかもしれないが……驚いたのがカジュアルデーに力を入れている方が多いこと。ふだんしないであろうラフな格好を楽しんでいる様子が伝わってきた。 

 船内のイベントで特徴的だったのは、寄港地に合わせてレクチャーがあることだった。どのような内容かというと 『天皇制と将軍』 金沢の前日には『日本の工芸品』『韓国と朝鮮』など。終日航海日はレクチャーが午前と午後2つあることもあり、大変興味深かった。毎回参加者が多く、外国から見た日本という視点で私には、新たな発見もあった。単なる観光で訪れる場所とういうだけでなく、その文化や歴史のもとになった精神や思想にもふれる深い内容だった。

 釜山のオプショナルツアーは、今までに4回訪れているため、参加しないようにしていた。でも1番のわけは、急坂が多く自信がないためだった。食事の時、私が、みさおさんに参加しないことを伝えると、
「旅行代金にも含まっているし、もったいないよ。一緒に行こう」
という。その足でオプショナルツアーの窓口に行ったら、クローズの時間帯だったので、私は予約をしないままにしていた。

 釜山に着く前日、メインのロビーでみさおさんに偶然会った。
「申し込んだの?」と聞かれ、
「昨日は、釜山観光のキャンセル不可の設定日になっていた。だから無理だと思ってしていない」と答えたら、
そのままカウンターにつかつかと進まれ、
「わたしの釜山の予約に1名追加して」
とあっという間に申し込みが終わった。
「途中で行けないと思ったら、バスに残るなり、いろいろ方法はあるよ。
まず一緒に行こう」と彼女が言った。 


フォトジェニックで人気のある文化村

 翌日ご夫妻とともに朝鮮戦争後にできた甘川文化村やチャガルチ市場に行くツアーに参加した。特に文化村の付近は、斜面にへばりつくように家が立っている。到底みんなについて行けないと思っていたが、「バスに戻るまでもう少し」と歩いていたら、ツアーの行程全部を回れた。ただ最後の自由時間、ご夫妻の「チャガルチ市場の二階でアワビの刺身を一緒に食べよう」というお誘いには、市場までかなり戻らなければならないのでお断りをし、私は、集合場所近くの喫茶店で休憩した。
 この釜山のツアーは楽しかっただけでなく、歩きの自信につながった。
 
 私は憧れのギリシャ、サントニー島に2025年に行きたいと前から考えているが、坂道をずっと歩く観光に自信がない。だからこの船の中で実際に夢が叶っている想定で前祝いをしようと考えた。夕食をルームサービスにして、バトラーさんにも趣旨を話し、乾杯の真似事に付き合ってもらった。実際、「日本海」を見て、「なんと素敵な地中海」というのは、かなり無理があったが、ノリもいいバトラーさんのおかげで、イメージの中でのギリシャ旅行ができた。
 
 お祝いは19時からにしていたが、コバルトブルーのワンピースに着替えるためドレッサーを眺めたら、鏡になにか光って揺らめくものがある。思わず後ろを振り向くと、満月が部屋の正面に大きく見えた。願いが叶いますようにと心の中で思った。

 みさおさんとは、オプショナルツアーが函館を除き、みんな同じだった。400人近い乗客がいるので、ツアーはだいたい寄港地ごとに6〜8つある。そんな中に、選ぶものが同じというのはとても不思議だった。

秋晴れの函館山から見た眺め

 食事を重ねていくうちに、ご夫妻が「私たちの船室に遊びにおいで」と言われるので、部屋番号を教えてもらったら、それは船首のロイヤルスイートだった。
ベットルーム等プライベートスペースとは独立した広いリビングがあるため、お部屋でも人を招いてパーティもできる。
 
 とても気さくなお2人なので、そのような部屋にいらっしゃるとは想像していなかった。写真でしか見たことのない広い素敵なお部屋で、私はついキョロキョロしてしまった。リビングにはバーカウンターがあり、専属のバトラーさんが常に控えている。私の場合は2部屋かけもちで担当しているのだが…
 みさおさんはいつも住んでいる部屋が広いので、この客室を選んだと言われた。また年に3回ほどクルーズを楽しんでいるが、そのお金は株の利益で賄っていると言われたのに驚いた。
 ちょうどその日は旦那さんのロイさんが83歳の誕生日だった。私は何もプレゼントを持っていないので、ふだん習っている歌を歌うことにした。曲はシューマン作曲『ミルテの花』から「献呈」 長く結婚反対されていたシューマンが、クララと結婚できるようになって彼女に送った喜びの歌である。私はロイさんとみさおさんのために心を込めて歌った。ドイツ語なので、大意をお伝えして……

 翌朝、部屋の電話が鳴り、「朝の食事を一緒にしませんか」と誘われた。食事終わると、宝石関係のお仕事をされているロイさんがブローチ取り出し、「昨日はありがとう。あなたへのプレゼントだからもらってください」と言われた。そのブローチはカナダヒスイでなんとデザインはト音記号だった。私はとっさに『そんな高価ものをいただくわけにはいかない』と思ったが、せっかくのご好意を受け取らないのも失礼と思ったので、お礼を言っていただくことにした。ロイさんは 「このブローチは、あなたにもらってもらうためにカナダから来たんだろうね」と言われた。後で調べてみると、その石は偶然にも私の誕生石だった。


最後の日 キャサリンおすすめのカクテル

 ご夫妻は、この3月にも別の船で旅をされる。私もできれば乗船したいと思って予約をしようと試みたが、10月も、また出発目前のこの2月も空きがない。お二人とはEメールで連絡を取り合っているので、今後機会があれば、また船でご一緒したいと考えている。みさおさんとは日本語で話せるのだが、私が英語を勉強しているため、いつもメールは英文だ。12月末のメールで Go for it ,(きっと大丈夫。やってみよう)というニュアンスのメッセージをいただいた。
 この船に乗って以来、自分で限界を決めずに、やりたいことをするように心がけている。そういった意味では、大きな気づきをいただいた。

これからの旅のスタイル

 初めに興味を持ったこと 〜どんな人が乗船しているか〜
 それは穏やかで心に余裕のある人々だった。日々トラブルが起こることもあるが、その際にもいらいらせずに、当事者に対して配慮や優しさがある。だから、このような船に乗ることができるのだろう。そしてたぶん昔から寛容さや温かさがあったので、今、ゆとりを持って旅行ができるのではないだろうか。これらのことは、私の想像していた通りだった。

 美しく上質な船に乗って、私はとてもリラックスできた。寝具がとても気持ちよく、旅行前まであまり熟睡できなかったが、船の中では、ぐっすり安心して眠れた。
 私はこの旅行を通して、これからは旅の回数を増やすのではなく、心地よさを優先して決めていきたいと思った。今回はひとり旅だったこともあって、知り合った方々との交流が貴重な経験となった。

 
 長い文章を最後までお読みいただき、ありがとうございました。🙏
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