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何を観たらいいかわからない。そんなあなたにおすすめする2022年公開映画5本

はじめに


映画を観るようになって4年くらい経つ。新旧問わずあらゆる映画を観てきたけれど、つくづく感じるのは、とにかく新作映画が多すぎるということ。
観たいなあと思っていても予定が合わず、気づいたら公開が終わっていたり、そうこうしているうちにまた新しい作品が公開され、供給過多になっている。

誰だってこう考えているだろう。

「とにかく面白い作品が観たい」

映画を1本観るのに1,900円かかる。無限に休みがあるわけでもない。時間とお金と労力をかけて観に行った作品が心底つまらなかったら本当にがっかりする。

年間でどれくらいの映画が公開されているのかは下記の記事に詳しいが、僕も改めて調べてみて本当に驚いた。
2021年は邦画が490本、洋画が469本。なんと年間で959本もの新作映画が公開されていて、これでも前年の1,017本を下回っているというのだ。

僕たちはこの数多くの作品の中から観たい作品1本を選び抜くのだ。自分自身の勘が当たることもあれば、はずれを引いてしまうこともある。

本記事の趣旨

僕は2022年に公開された映画を40本ほど鑑賞している(2022年11月27日時点)。昨年の倍の本数を鑑賞しているので、当然その中には「微妙」な作品もいくつかあった。ただ、それ以上に万人におすすめできる作品も数多くあった。

本記事はどちらかというと下記のような人に読んでもらいたいような内容になると思う。

・映画館には行きたいが、何を観たらいいかわからない。
・作品数が多すぎて選びきれない。
・観たい気持ちはあるが、面白いかわからないため迷っている。

紹介する作品は厳選したいので、40本の中から5本だけ紹介しようと思う。

ちなみに本記事では作品の核心に触れるネタバレはしていない。あくまであらすじからわかる内容を元にしており、どうしても記載しないといけない場合は「とある行動」や「ある決断」といった表現にしているので、安心してお読みください。

1本目 「さがす」

大阪の下町で平穏に暮らす原田智と中学生の娘・楓。「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」。いつもの冗談だと思い、相手にしない楓。しかし、その翌朝、 智は煙のように姿を消す。ひとり残された楓は孤独と不安を押し殺し、父をさがし始めるが、警察でも「大人の失踪は結末が決まっている」と相手にもされない。それでも必死に手掛かりを求めていくと、日雇い現場に父の名前があることを知る。「お父ちゃん!」だが、その声に振り向いたのはまったく知らない若い男だった。失意に打ちひしがれる中、無造作に貼られた「連続殺人犯」の指名手配チラシを見る 楓。そこには日雇い現場で振り向いた若い男の顔写真があった――。

出典:Filmarks

物語は非常にシンプルだ。失踪した父親を娘が「さがす」というお話だ。シンプルな人探しという展開は、二転三転していき、到達するテーマは「たとえ親であっても所詮は他人」という普遍性。
僕たちは親であれば、子であれば、どんなことも理解できる、どんなことも知っていると勘違いしがちだ。でも、本作は違う。そんな些末な認識を後方からハンマーでぶん殴ってくる。
一線を越えた者と踏みとどまった者を端的に表現するラストの長回しは日本の映画史に残る屈指の名シーンだと思う。
コミカルな演技を持ち味とする佐藤次郎さんがそのコミカルな演技をほぼすべて封印している本作は、彼の狂気的な演技力を堪能できる傑作だと思う。

https://youtu.be/6sMtknscr1o


2本目 「セイント・フランシス」

34歳で独⾝、⼤学も1年で中退し、レストランの給仕として働くブリジットは夏のナニーの短期仕事を得るのに必死だ。そんなうだつのあがらない⽇々を過ごすブリジット(ケリー・オサリヴァン)の⼈⽣に、ナニー先の 歳の少⼥フランシスや、その両親であるレズビアンカップルとの出会いにより、少しずつ変化の光が差してくる――。

出典:Filmarks

自分自身の身の振り方に悩むというのは誰にだってある。僕自身もそうだ。仕事を辞めようかな、でも、やりたいことなんてないしなあとぐるぐる考え続けている。
本作の主人公ブリジットもまさにそんな人物だ。将来に思い悩んでいる。仕事も上手くいかないし、恋人との関係にも悩んでいる。そんなブリジットが夏の短期バイトとしてベビーシッターを始める。そこで出会ったのがフランシスという少女だ。その少女との出会いが少しづつブリジットを変えていく。
特別な出来事や事件が起きるわけではない。それでもブリジットは前へと進んでいく。

「結婚もしてないし、華やかな仕事もしてない」
「それが何?」

「今の自分が嫌い。立派になりたい」
「立派だよ」
「なんで?」
「怖いときに逃げないから」

ブリジットの悩みや問いにフランシスは軽やかに答え、背中を押していく。その様に僕自身もとても勇気をもらえた。

以前よりも少し強くなったブリジットがフランシスに対して行うある行動に、僕はとても感動した。なぜならブリジットはあくまでフランシスを対等の人間として接し、その背中を押しているから。大人とか子供だとかそんなことは一切関係がない。人と人の関係性を描いた傑作。


3本目 「LOVE LIFE」

愛する夫(永山絢斗)と愛する息子、幸せな人生を手にしたはずの妙子(木村文乃)に、ある日突然ふりかかる悲しい出来事、そこから明らかになる本当の気持ち。そして彼女が選ぶ人生とは……。人は、誰しも孤独を抱えて生きているのに気づかないふりをして平気を装っている。見て見ぬふりをしてきた「孤独」を突き付けられたとき、その孤独とどう向きあうのか。そして見えてくる、愛するとはどういうことなのかという普遍的な問いかけ。これは、ひとりの女性をとおして「愛」について「人生」について描いた物語。

出典:Filmarks

本作の大きな特徴は登場人物の内面だ。人間の持つ複雑な内面(善人の部分や悪辣な部分)を一面的に描かず、多面的に描いている。当たり前のように思うかもしれないけれど、意外と本作のように多面的に描いた作品は少ないように思う。善人であれば、物語通して善人に描きがちだし、クズはずっとクズのままだったりする。でも、本作は違う。善良そうに見える人であっても別の場面では嫌な面を覗かせるし、一見したところ嫌な奴も少し優しい一面があったりする。でも、だからこそとてつもないリアリティがある。だって人間誰しもそうだからだ。僕だって優しい一面もあるが、嫌な顔をすることもあるし、イライラだってする。それも含めて人間だ。本作はそういった人間の多面的な部分を余すことなく表現している。

本作はある出来事により失意のどん底に落ちた家族が再生していくまでを描いている。ラストですべての絶望と希望を受け入れ、主人公たちは歩み始める。その圧巻のラストはとてつもない余韻を生むと共に人間の奥深さを感じられる作品になっている。


4本目 「わたし達はおとな」

⼤学でデザインの勉強をしている優実(⽊⻯⿇⽣)には、演劇サークルに所属する直哉(藤原季節)という恋⼈がいるが、ある⽇、⾃分が妊娠していることに気付く。悩みながらも優実は直哉に妊娠とある事実を告⽩する。直哉は将来⾃分の劇団を持ちたいと願っていた。現実を受け⼊れようとすればするほどふたりの想いや考えはがすれ違っていく・・・。

出典:Filmarks

大学生の優実と直哉のカップル。優実の妊娠の告白をきっかけに2人の関係は変容していく。
恋人の出会いと別れを描いた作品は数多くあるが、本作と構造的に近いのは「ブルーバレンタイン」だろう。本作は幸福な日々と修羅場をカットバック的に映し出していくという鬼畜な構成だ。前半で数多く登場する直哉のモラルハラスメントな言動を思い浮かべながら見ると、よりこのカットバックの残酷さが際立つようになっていて本当に巧みだ。

本作は上述したような構成や演出、撮り方の巧みさに魅せられる作品
ではあるのだけれど、本作の見どころはそこだけではない。
本作の見どころは決定的瞬間が訪れた後にやって来る。
ラストで優実と直哉はある決断をする。
決して幸福な未来が約束されているとは言い難いものの、優実は今すべきことを自分と大切な人のためだけに行う。今年のエンドロール大賞とも言っていいラストは圧巻。


5本目 「MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」

とある小さな広告代理店で働く主人公・吉川朱海(円井わん)は、「この仕事が終わったら、憧れの人がいる大手広告代理店へ転職する」と燃え上がる野心を持って仕事に取り組んでいた。しかし、次から次に降ってくる仕事で、余裕はゼロ。プライベートも後回し。月火水木金土日、休みなく働き続けていた、ある月曜日の朝。後輩 2 人組から、こう告げられる。「僕たち、同じ一週間を繰り返しています!このタイムループを、夢の出来事だと思って忘れないために、合図を覚えてください。鳩です…」。ひとり、またひとりと、「白い鳩」の合図に導かれ、タイムループの中に閉じ込められているのを確信する社員たち。だが、その脱出の鍵を握る永久部長(マキタスポーツ)は、いつまで経ってもタイムループに気づいてくれないのだった。

出典:Filmarks

口コミなどで今じわじわと上映館数を伸ばしている本作。これがとてつもないほどの大傑作だった。

物語は上記のあらすじの通りタイムループものだが、舞台設定が非常にミニマムなところが新しい。職場という小さな舞台でのワンシチュエーションものだ。

職場内のヒエラルキーや会社員の特性を活かしたタイムループ大喜利の連打が新鮮で楽しい。コメディー作品としてもとにかく楽しめる作りになっている。82分という短い上映時間の中によくあれだけのアイデアを詰め込むことができたなあと感心した。

本作の特に優れている点は以下の2点。

①仕事における成長とタイムループの相性
人は仕事で色々な経験を積むことで成長していく。以前の経験を踏まえて次の仕事に活かしていく。本作の主人公たちはタイムループしつつも記憶だけは保持されていくので、タイムループする度に次にどんな仕事をしないといけないか、取引先がどんな無茶ぶりをされるか予測ができるようになっている。だから、タイムループする度に仕事の精度が上がっていき、他領域の仕事にも取り組むことができるようになっていく。仕事をしていく上での成長過程をタイムループというSF設定で見せていくところが本当に素晴らしい。とてつもないアイデア。

②タイムループを気づかせるために社員一同でプレゼンを行う
これは予告編にも描かれているので、ネタバレになっていないと思うが、部長にタイムループしていることを気づかせるために社員一丸となってプレゼンをするシーンがあるのだが、これがとにかく面白い。見たことがない。僕も含めて多くの観客の爆笑を誘っていた。これはもう一種の発明だと思う。
このシーンが生まれただけでもう傑作間違いなしだと思う。

本作はコメディー作品であるものの会社員には刺さる言葉も多々あった。中でもマキタスポーツさん演じる部長の言葉には不覚にも少しうるっと来てしまった。僕も本当の気持ちを真摯に伝えてくれる人と仕事がしたいなあとつくづく感じた。

https://youtu.be/Jh5hl2tRSE4


さいごに

40本の中から厳選して本当に面白い作品のみを選んだ。他にも面白い作品はいっぱいあるが、本記事の趣旨のところでも書いた通り「万人におすすめできる」というのをテーマにしているので、「女神の継承」や「TITANE/チタン」、「X エックス」は省きました。これらの作品も興味ある人は鑑賞してみて欲しい。かなり人を選ぶ作品だと思うけれど……。

そうは言っても上に挙げた5作品は手放しでおすすめできる作品ばかり。僕がよく視聴している「おまけの夜」というYouTubeチャンネルの柿沼キヨシさんは人に映画をおすすめするにあたって「自分の中のロイヤルストレートフラッシュ的作品をあらかじめ用意しておこう」と公言されていて、この5作品は2022年のまさにそんな作品だと思う。

「なんか映画を観たいけど、どれにしたらいいかわからない」

そんな風に悩むことがあったら、ぜひ上に挙げた5作品を鑑賞してもらえると、本記事を書いた甲斐があるなあと思う。

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