【小説】グルメの子
今日は家族5人みんなでとあるレストランにやってきていた。
「お前たちは成長期なんだから遠慮せずにどんどん食えよ」
「いや全然遠慮なんてしないよ」
「おう、そうか…」
そういうと子供たちはご飯をパクパク食べ始めた。
「お前たちは本当に遠慮って言葉を知らないなー」
「遠慮せずにたくさん食べていいって言ったのをお父さんでしょ」
「いやまー、そうなんだが。
「だったらいいじゃんね」
「ねー」
「うーん、子どもは難しい」
「それにしてもまだ赤ちゃんの花子はご飯を食べられなくてかわいそうだね」
「そうよね。本当はこの子にも食べさせてあげたいんだけどね」
「でもこの子は今グルメな匂いをいっぱい吸っているから将来絶対にグルメな子になるぞ」
「みてみてー、花子の顔がなんか笑っているような気がするよー」
「確かにな。これは将来が楽しみだ」
~そして10年後~
「いやいやまさかな。本当にグルメな子に育つとはびっくりなんだ」
「お父さん、まだまだご飯が足りないよ! おかわり!」
「そうかそうか、だったらもっと頼め」
「分かった! もっと食べるね!」
まさか本当にここまでグルメの子に育つとは思わなかった。もうすでに3kgもご飯を食べている。これからもしかして将来フードファイターにでもなるつもりだろうか?
「花子、少しお話しようか」
「お父さん、なーに?」
「お父さんは少し花子の将来が心配だ。それにお父さんはもっと仕事を頑張らなきゃいけない。花子の胃袋よりもお父さんの体の方が先にまいっちまいそうだ」
「あっうん。ごめんなさい…」
「いや、お父さんこそごめんな。ご飯が好きなら食べてもいいんだ。だからご飯を食べるお仕事なんて良いんじゃないかと思ってな」
「そんな夢な仕事があるの!? 絶対にその仕事やるよ!」
長男と長女の様子はどうだろうか?
「花子、お前本当によく食うな」
「私たちは大体1kgぐらいなのにあなたはもう3kgよ」
いやいや、お父さんからしたらこの子供たちを恐ろしすぎるわ。
「へへーん、お兄ちゃんとお姉ちゃんよりたべるのだ!」
そしてまたまた10年後~
「ばくばくばくー!!!!!」
「おーっと花子選手とにかくものすごいスピードでご飯を食べ続ける!!!」
私は食べるだけが取り柄なんだ! 食べることは絶対に誰にも負けてはいけないんだ!!
「うりゃーーーーーー!!!!!」
「おーっと後半になってからも全くご飯を食べるスピードが落ちないぞ! 一体どこまで突き進むつもりだ!! もうラーメンを100杯ぐらい食べているぞ!!!」
周りのフードファイターも動揺をしている。
「クソ! あいつの胃袋はどうなっているんだ! 本当に人間かよ!」
「これぞ、ミスブラックホールだ!」
「ここで時間が来ました! タイムアップ! ぶっちぎりで花子選手の優勝です!」
「んーーーーー、やったーーー! お父さんお母さん私やったよ! 私、ちゃんと誰より一番のグルメな子に育ったよ!」
テレビをお父さんとお母さんがみていた。
「花子、よくやったぞ!」
「さすが私たちの子ね!」
「妹すげぇーぜ!」
「そうね!」
テレビの前のお父さんとお母さんは花子の天職が見つかって良かったなと思っている。
そしてもう食費もかかることがないのでとっても安心しきった顔をしていた。
「はぁー、お父さんはもう働くのが限界だよ。働きすぎて体が全身粉々だ。でも子供たちがすくすく育って本当に良かった。これでやっと楽になれ…」
「まだよ! 私たちにはグルメな孫がいるのだから! きっともぐもぐ食べるわよ!」
「おぎゃー!おぎゃー!」
「そうだぜ父さん!」
「くっ、父さんもう少し頑張るぞ! 力がみなぎってきた!」
家族のためにもっと頑張ろうと思う父であった。そして花子も頑張って世界一のグルメな子になって欲しいと本気で思った。
~おわり~
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