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【小説】人の温もりを感じる便座

「はぁはぁ…! もっ、漏れるぅぅぅ!」

 自分はうんこをする時は誰にも個室に入っているというのがバレたくないので学校ではまったく人が来ないところでうんこをしている。

「ま、間に合えぇぇぇ!」

 自分はなんとか滑り込みでトイレに入っていく。しかし、この日はものすごい寒い日だったので便座が冷たいかもしれない。
 それでもえーい!と便座にお尻をつけた。

「あっ、温かい!」

 この便座、まるでさっきまで人がいたかのように温かい! 温もりを感じる! とにかくこのときはホクホクした気分で例のものを放出することが出来た。
 お腹の中もスッキリして気分爽快さわやかだ。

「よし、これで午後の授業も頑張るぞぉー!」

 自分は走って教室へと戻っていく。そして戻っていく途中でやはり人と誰ともすれ違わないのだ。そして、ここでさっきの温かい便座のことを思い出す。
 こんなに人が滅多にいないようなところでどうしてあんなにも便座が生温かかったのだろうか? そしてさっき自分はなぜまるでさっきまで誰かが座っていたようなと思ったのだろうか?
 そう考えると急に怖くなってきた。

「いやいや、まさか…。なぁ…?」

 もしかすると考えている通りなのかもしれない。学校のトイレでしかもあそこにあるトイレは古いタイプなので便座が温かくなる機能はない。
 なので誰かが座っていたのは間違いないだろう。

「ひっ、ひぃぃぃぃぃ! 早く戻ろうぉ!」

 人間なのか、幽霊なのか分からない。どちらにしても怖い。人間の気配なんてまったくなかったし一体なんなのだろうか?
 心がものすごくモヤモヤする。どちらにしても、もうあのトイレに行くことはないだろう。さすがに何かが潜んでいる以上は怖くてトイレを使えやしない。
 そもそもうんこしてるのが恥ずかしいからと遠くに行くのも良くない。なにより時間がもったいない。
 人間誰だって出るものは出るのだから、そこは堂々と出せばいいだけなのだ。これからは堂々とうんこを出そうと思った。
 あれだけ人がいないというのも何かしらの理由があるからに違いないのだ。

そして数日後…
「ふぅ…。スッキリしたー」

 今日は自分の教室の近くのトイレで放出していた。勇気を出してうんちをしてみると意外となんとかなった。

「ちょっくら俺出してくるわー」
「おう」

 それどころか、みんな当たり前のように個室を利用していた。もう怖い思いをしてうんちをすることもないだろう。
 そしてみんなが使っているトイレだから便座に温もりを感じる。この温もりはあの時とは違い、少し安心をする温もりだった。

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