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自分の住む街が核爆弾が落ちた日

「はぁはぁ…。マジで疲れたぁ…」

 この日もバイトが終わって帰り道にある急な坂を汗かきながら必死に上っていた。ちなみにその坂を上り終えたところから見える景色がとてもキレイなのだ。
 バイトは夜勤なので、帰り道のそこから見える開けた夜の夜景というのはものすごくキレイで帰りはそれを見るのが1つの楽しみとなっていた。

「よいしょよいしょ、着いたぁ…」

 自転車で途中までは上っていたものの、坂の勾配がキツくて自転車を押してなんとか坂を上りきった。

「いやぁ、ここから見える景色はいつ見てもキレイだなぁ。疲れも吹き飛ぶよぉー」

 遠くにはマンションとかビルとかが見えて景色を一望出来る。あの見えるところまではひたすらに低い住宅街のみが建っているので、夜に見るとなんとも不思議で気持ちいい感じがする。

「あぁ、今日も良い景色が見えたな。そろそろ家に帰ろうかなー」

 その時だった。ものすごい爆音とともに遠くに見える建物がきのこ雲の爆炎に包まれていた。

「ま、まずい…!」

 自分はすぐにコンクリートの壁のある遮蔽物に飛び込む。ここまで爆風が届くなんて…。これから一体どうなってしまうのだろうか?
 自分の住んでいる街にまさか核爆弾が落ちてくるとは思っていなかった。とにかく今考えることは安全なところに避難することが大事だ。
 放射能のことも心配だ。おそらく外に出ていると危険だろう。雨が降ったら放射能を含んだ黒い雨が降るなんて誰かが言ってたっけ?
 7の法則? とりあえず7時間、7日間と放射能の影響が半減していくまで耐えなくてはならない。色んなことが頭の中を錯綜していた。

プーーーーーーーン(サイレン音)
「キャーーーー!」

 程なくしてサイレンなどが街中に響いていた。あー、自分の街は終わったんだと思った。本当は地下とかシェルターとかがあれば良いんだけど、ここら辺にはないかもしれない。
 食料はどうしよう? 服も放射能で汚染されているかもしれない。あぁ、考えれば考えるほどにこれから先を生きていく希望なんて見出だせない。
 元の日常を返して欲しい。当たり前のように夜勤バイトをしてキレイな夜景を見るその日常を。

「あぁ、もうダメだ…」

 人間、諦めがつくと動けないものだ。遮蔽物のところから動けなくなってしまった。自分の家も無事かどうか分からない。
 家族は今なにをしているだろうか? とりあえず今目の前で起こっている悪夢は現実だということだ。
 これが夢だったらどれほど良かっただろうか。生き残った後の病気と寿命のことも考えると心配だ。神様がいるなら今この状況をどうにかして欲しい。
 寿命10年削れても良いから平和な日常が帰ってきて欲しい。

……………

 その後、この男がどうなったのかは不明である。しかし、何が起こっても命ある限りは生きなくてはならない。
 生きることを諦めてはならないのだ。

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