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研究にまつわるエトセトラ

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研究に関する話をまとめました。
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記事一覧

真の研究者の風呂は実験室の流し台!?

クールポコさんの「男はだまって○○」みたいな題になってしまいました。 理系学部を有する大学には「不夜城」と呼ばれる研究室がいくつかあると思います。そのような研究室は常に明かりがついており、誰かしらが常に実験していたりします。 私の学部にも不夜城がいくつもあり、私の所属する研究室も不夜城系のものでした。ただ、トータル効率として落ちるので、私は徹夜はしないようにしていました。 これは私の大学の教員の方の話なのですが、その教員の方は研究室に住み込むほど実験をされていたそうです

奇麗だね~

物事には実にさまざまなな奇麗さがある。 そんな風に思わされた出来事でした。 私の大学の所属研究室は高層階にありました。 高層階といってもそこまで高いものでもないのですが、 所属学生の席は窓側にあって、 そこからの眺めはとてもいいものでした。 私はその日も化合物を合成し、 クロマトグラフィーにかけて精製しました。 そして、ワクワクしながら目的化合物をNMR(化合物の分析に使用するもの)で分析しました。 その結果、 目的化合物が上手に精製されていることが分かり

農学部の学生の特徴

私は農学部出身です。 今日は、農学部の学生の特徴について少し書いてみたいと思います。 農学部は、なんだか「人懐っこい人」が多い気がします。 イメージでいうと、「ゆるキャラ」みたいな感じです。 アニメでいうと、「ゆるキャン△」に出てきそうな人達です。 河原に転がっている「角が丸まった石」みたいな感じです。 お菓子でいうと「グミ」みたいな感じです。 一人の教員の方の話が印象に残っています。 あるとき、その教員の方の所属する学部(教養部)が解体されたそうです。 そ

コンタミして幸運を拾う~研究者の卵の方に伝えたいこと①~

コンタミとは、コンタミネーション(contamination)のことで、簡単にいうと「何かが混入してしまうこと」です。 遺伝子系の分野でのコンタミは、目的の微生物以外の微生物が培養物に混入していまうことを表現する言葉として使用される場合が多いのではないかと思います。 コンタミ率が高いことは、実験手技が未熟であることを意味します。 私の大学の同期は、最初のうちはコンタミ率が高く、「タミ夫」という称号を拝命していました。 そろそろ、表題の件に入ります。 ここまでの説明を

実験は安全が第一~研究者の卵の方に伝えたいこと②~

この春に新しく研究室に配属された方、配属おめでとうございます! これからの研究生活に胸を躍らせていることと思います。 でも、少し注意してほしいことがあります。 すこし刺激的な内容かもしれませんが、化学実験には思わぬ危険が潜んでいることを知ってほしいと思い、書かせていただきました。 私を反面教師としてしてください。 私は当時、アンモニアガスの入ったボンベを使用して実験をしていました。 ボンベにはチューブが付いており、そのチューブの先をドラフトチャンバー(換気扇付きの

理系のための研究室の選び方

この記事は、「大学での研究室の選び方」に関するものです。 主な対象読者は、「理系の大学生(研究室への配属前)」または「理系の大学/学部を目指す高校生」などです。 研究分野は、「化学、生物化学、ライフサイエンス(遺伝子工学、動物関係の分野など)」を想定しています。しかしながら、他分野を目指す方でも参考になることは結構あると思います。 では、早速はじめましょう。 1.前書き大学の理系学科では、学生は3年次ないしは4年次に研究室に配属されることが多いと思います。 そして、

有料
200

使ってるのに名前を知らない実験器具

普段使っているけど、その名前を知らない実験器具ってありませんか。 私は、そのような実験器具が壊れてしまった経験があります。いざ新しく注文しようにも名前が分からずにとても困りました。 それは、TLCプレートに発色試薬をかけるための「シュポシュポするやつ」です。シュポシュポするとゴム風船が膨らんで、その圧力によって噴霧器中の試薬をTLCプレートに吹き付けることができるという実験器具です! 具体的には、以下のものです。 これは「2連球ゴム」というらしいです。 私はこのとき

研究者/開発者の生態

研究者/開発者は、「君の好きにやっていいよ」と言われると一番喜び、一番力を発揮します。 企業の経営者よっては、「何を言っているんだ!こっちは給料払っているんだ!貴様らの遊びに金払っているわけではないんだぞ!」と思うかもしれません。 ごもっともです。その通りです。しかしながら、真の研究者/開発者とはそのような生き物なのです。楽しいから、興味があるから研究者/開発者になったのです。こだわりがとんでもなく強いのです。癖が強すぎるのです。興味のないことはできるだけやりたくないので

博士号を取得して確信したこと

私は博士号を取得して確信したことがあります。 それは 「自分は何も知らない人間なんだ」 ということです。 研究を行う過程では、いろいろなことを調べ、実験も行い、論文も執筆しました。その際に、確かにいろいろな知識やスキルが身に付いたのですが、それは同時に自分が色々なことを知らないことを認識していく過程でもありま した。 最終的に専門分野では多少の知識を有するようになったのですが、人類の英知は広く、そして深く、まだまだ知らないことだらけです。 一方で、一つの専門分野の

カイコはグルメ?

私はカイコ(蚕)を実験で使用したことがあります。といっても、バキュロウイルスをカイコに感染させて組換えタンパク質を産生させたとか、そういった実験ではありません。さらには、私はカイコの専門家ではありません。 実験内容はさておき、そのときはカイコ飼育キットのようなものを購入しました。そのキットには、固形のカイコ用飼料(緑色のカロリーメイトのようなもの)が付属しており、それをカイコにあげていました。そのときに驚いたことがありました。そのキットの注意書きに以下のようなことが書いてあ

化学者に春の到来を告げるもの

通常、春の到来を告げるものはなんでしょうか。梅でしょうか、桜でしょうか。 開花予報なども気になるかもしれません。 しかし、化学者は違います。 化学者は全く違うもので春の到来を知ります。 化学者なら分かると思います。 そう、DMSOです! DMSO (Dimethyl sulfoxide) が溶解したときに化学者は初めて春の到来を真に知ることになるのです。 DMSOの融点は18.5℃です。冬は凍っているので、使おうとするととても困るのです。 しかし、春になるとど

HPLC用ポンプの中にはルビーとサファイアが入っている!?

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、かなり有名な分析手法なので、ここで説明するまでもないと思います。 一方で、HPLC装置を構成する各機器の構造を詳細に把握している人は意外と少ないのではないでしょうか。 構成機器の中でも、保持時間を決定づけるポンプは特に重要です。 ポンプの送液部(ポンプヘッドと呼ばれ、通常は2つ存在する(並列または直列))の上下には逆止弁(チェックバルブ)と言われる逆流防止構造があり、各逆止弁の中には小さなボールが入っています。 このボールをな

食品開発者が人工甘味料を使用する理由

食品開発者が人工甘味料を使用する理由はいくつかありますが、主なものは以下です。 ①コスト削減 ②味の調整 ③着色抑制 ①については、そのままです。安いから使うのです。こんな言葉があるのかは分かりませんが、「甘み単価」が安いのです。簡単にいうと、同じ甘さを出すにしても、人工甘味料なら少量で済むということです。 (これは本当に私の個人的な見解ですが、カロリー抑制は後付け的な意味合いが強いように感じます。繰り返しになりますが、個人の感想です) ②については、人工甘味料によ

たった1匹のムカデによって闇に突き落とされた大学生達の話

私が大学生のときの話です。 その日も私は元気よく実験をしていました。 具体的には、96穴プレートに溶液を分注していました(午前1時ごろだったと記憶しています)。 そのときです。 ドーンという音と同時に突然停電が起きました。 所属の学部棟全体が突然停電になったのです。 とても困りました。 96穴プレートのどこまで分注したか分からなくなりました。 それだけではなく、HPLCの分析も停止しました。 さらには、13C-NMRの測定も積算中に停止しました。 大惨事で