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後ろめたさ、を越えて

こんにちは。だいぶ涼しくなってきましたね。
今週もおつかれさまでした。

ちょうど一週間後今日、9月11日は沖縄知事選の投票日です。今年、沖縄はとても忙しい一年です。大きな選挙がいくつもあり、さらにアメリカの統治から日本に復帰して50年という節目の年でもあります。(ちむどんどん、不思議な話ですよね)

5月に、わたしが編集者としてかかわった本『サンマデモクラシー』が刊行されました。この本の舞台は沖縄。あらすじはこうです。1960年代、アメリカ統治下の沖縄。アメリカが不当な税をサンマに課していたことに、魚屋のおばあさんが怒り、裁判を起こす。それがバタフライ・エフェクトのように、沖縄全体を巻き込んだ本土復帰運動につながっていく、そんなお話です。ね、面白そうでしょ?

22年5月刊、イースト・プレス、1500円+税

著者は、沖縄テレビのディレクター・山里孫存さん。同名のドキュメンタリー映画が先にあり、その監督をされていました。わたしは、この映画を観たとき、とても驚きました。勝手に作りあげていた沖縄像とまるで違ったものが描かれていたからです。

沖縄の外にいる人が、沖縄ことを考えるとき、どんな感じするでしょう。
わたしは、後ろめたさです。沖縄戦、基地、貧困……さまざまな負の課題を小さな島に押しつけている感覚。申し訳ないけれど、正直、これ以上知ると精神衛生上よくないな、という感覚。

わたしの母は沖縄出身で、結婚してから横浜にやってきました。
沖縄戦のことをときたま話しました。よく語るのは叔母のことです。つらい話です。幼かった叔母は、母子で激戦地の南部を逃げまどい、途中で母を亡くします。ひとりきりになった叔母に親切な若い夫婦が声をかけてくれて、戦争が終わったあと父が迎えにくるまでしばらく一緒にいてくれたそうです。

また、よく覚えているのは甲子園のこと。
毎年、ふだんスポーツなんて観ない母は沖縄の高校を熱狂的に応援していました。きっと自分と重ねていたのでしょう。沖縄勢としてはじめて沖縄尚学が優勝したとき、母は号泣しました。だけど、その姿に中学生だったわたしはひいてしまいました。え、それほどのこと?と。

それから、沖縄には自分には触れられない領域があると感じて、なんとなく距離ができてしまいました。後ろめたさとともに。

それから20年ほど経ち、映画「サンマデモクラシー」と出会いました。この映画は、つらい沖縄のことを扱っているはずなのに「面白かった」のです。アメリカの圧政に一方的にやられるわけでなく、クセの強い登場人物がクレバーにユニークに抵抗をくりひろげる。この快活さは、「後ろめたさ」を飛び越え、もっと沖縄のことを知りたい気持ちにさせました。そのまま、わたしは沖縄テレビに電話をしていました。

本でも山里さんは、ていねいに資料にあたりながらも、落語家がよろしくあらゆる人物に成り代わり、軽妙に書いていってくれました。すべての原稿を受け取ったとき、わたしは、とてもひらかれたことばがここにある、と感じたのでした。

来週、沖縄の人たちは選挙で誰を選ぶのでしょうか。見届けたいと思います。Twitterでは女性の知事がみたいという投稿がありました。わたしも大賛成。それは誰がいいかなあ……たとえば……あ、ラッパーのA-Witchとか?

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