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春を告げる

いつの間にか春になっていた。

恋人が僕に春を教えてくれる。
一緒に散歩へ行ったり、天気や桜の咲き具合など。
東京は開花宣言が出たらしい。
東京の事、彼女の住んでいる所の事、見た事や感じた事を僕へ伝えてくれる。

僕は外に出られない。
花粉や黄砂のアレルギーもあって今は窓を開けることも良くない。
院内のコンビニに行くと高確率で熱を出す。
だから本当にどこにも行けない。
テレビもほとんど見ることがなくて、世間から取り残されている。

時が止まっている気がしているのは、こういう所なんだろうな。


でも、恋人と通話して色んな話を聞くことで、季節の移ろいを感じる。

彼女が僕に春を告げる。

優しく、花や緑の香りがするそよ風のように、そのあたたかく春みたいな声が僕の耳を通り抜けていく。


本当に、あたたかくなった春は彼女のようで。
寒い春の僕とバトンタッチして夏を連れて来るんだろうな。


もうすぐ僕達の誕生日が来る。
2週間違いの僕達の誕生日。

似ていないようで、すごく似ている。

今年の誕生日も恋人に会えない。
まさか今年も会えないなんて酷い話だよ。ごめんね。

せめてプレゼントくらい買いたいので誕生日プレゼントでお揃いのものを探し中。
ペアリングを買いたいけれど、それは直接会って渡せる時にしたいんだ。だからもうちょっとおあずけ。
春っぽい何かでも良いな。
気軽に日常で使えるものなんかもいいな。
お互いがそれを使う事で思い出せたら。

去年までは、僕が年下だからって見栄を張りたくて、ちょっと背伸びしたものを選びがちだった気がする。
値段も貯金から出せばいいと、高めのものをめちゃくちゃ見てた。
でも、今年になったら、値段じゃ無いかなって思えてきて。
そういうのって女性は嫌なのかな。

高くなくても毎日、使うものがいいなあ。
自然とお互いを思い出すような、そういうのが欲しいなって思っちゃう。僕はまだしばらく入院しているし、そんな中で彼女を思い出せるものが増えたらいいなって思う。

背伸びしなくても、高いものじゃなくてもいいんじゃないかって思えるようになったのは成長なのか?
もう少し、プレゼントは考えておこう。


春は、僕にとっては特別な季節だ。

そんな春を伝えてくれる恋人は、特別な存在。

早くデートがしたいよ。
会いたいよ。

ハグをして、僕がここにいるよって伝えたい。
安心させたい。元気だよって言いたい。
笑顔がたくさん見たい。
大好きだよって伝えて、手を繋いでお散歩へ行こう。
季節を感じる時に、恋人の存在も感じられたらどれだけ幸せだろうか。

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