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なぜ私は寿司ばかり食べるのか

 寿司を食べ歩いて1年。多い時には月8で新店開拓していた時期もあったほど。なぜこんなにも食べ続けても未だに飽きないのか、それだけ自分を惹きつける寿司の魅力をよく考えてみた。

 一言で言うなら寿司にはストーリーがあるから。それは一口の中にも、一食の中にも、一年の中にもあって、それらが重なって歴史と奥深さを形成している料理だと思う。

 一口。料理を構成する味、食感、香り。シャリとネタ、至極シンプルな組み合わせを繋ぐ山葵と薬味。私にとって究極の三位一体はここにある。これに加えて温度感も強く関係するのが寿司。常温、低温、茹でたて、それぞれのベストがある。シャリが温かければ鼻に昇る香りも強くなる。見た目も重要な要素。なぜなら美味しいは美しいだから。ネタの切りつけ(切り方)は見た目の一要素。分厚いのか、大きいのか、薄く切って重ねるのか、貝や蛸はなぜ“さざなみ切り”をするのか。なぜその切りつけを選んだのか、これは見た目の問題でも、味わいの問題でもある。

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「冨所」の鰆
直前に漬ける玉葱醤油の香り→鰆の味→鰆の香りへの流れが素晴らしい

 一食。一口を何度も繰り返すからこそ、食べさせる順番に店ごとのストーリーと思想が現れる。こだわりのネタをメインに据えて構成されることもあれば、3貫を1セットとしてコースのリズムを刻む店もある。自分は烏賊を1番バッターだと思っていても、親方によっては4番を張る主力選手に考えていることだってある。実はここにもお気に入りのお店を選ぶ余地が存在していて、似たようなネタのバリエーションでもこの些細な差が分かるようになると嬉しい。

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「いしまる」の墨烏賊
昆布締めした墨烏賊を中心に据え、その前後でコースを形作る

 一年。養殖を除けば寿司ネタは育てるものではなく獲るものなので、季節によって旬が移り変わる。一瞬しか食べられない蛍烏賊や新子(小鰭の子ども)、季節によって産地が変わる鮪、一般的に旬と言われる季節の反対=裏旬が美味しい鰆。年間を通して同じ店に通い続けられるのは、旬の変化にストーリーがあるから。寿司屋に入れば外を見ずとも季節が分かる。

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「輝鮨」の石垣貝
ほとんどの貝が終わる夏頃に活躍する、クセのない自然な甘みが魅力

 もちろん、他の料理にもこだわっている点はたくさんあるはず。ただ、寿司はシャリ・ネタ・山葵(薬味)で一見シンプルに構成された、誰でも再現できそうな見た目の中にこれだけのストーリーと世界観を内包しているところに人を惹きつける理由があるんじゃないかと思う。

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