見出し画像

自由の国アメリカが全力でボケて来るとツッコミ追いつかなくてマジで怖いから覚悟しろ。

3年前の今日、僕はニューヨークから帰国する飛行機に乗っていたと思う。
読み書き程度しか英語ができない中、会社から一人での海外出張。
出発するときは、心細さしかなかった。

実際にアメリカに着いたら着いたで、もうハプニングに次ぐハプニングの連続。
事件に何度も何度も鉢合わせながらも、当時から真面目だった僕は

『あー、俺がダメだからだ。』

と自己嫌悪に陥ってガクガク震えて、Netflixに逃避していたものだ。

だが、ふと今、振り返ってみると、理不尽で理不尽を煮しめたような理不尽の連続で、何一つとして俺は悪くないんじゃないか、という気がして来た。
というか、そうだ。

当時の僕からしたら、めちゃくちゃ怖かった話も、今日振り返ってみれば、盛大なボケだったんじゃないかと思えて来たので、これを機に、厳選して4つの怖かった話を、供養しようと思う。
(まぁ、怖い話の体の笑い話なので、怖い話嫌いな人も戻るしないで…)

この状況が落ち着いてから、ニューヨークに行こうとしている人たちも、きっと手酷い洗礼を受けることだろうが、自分を責めないでほしい。
ただ、覚悟をしてほしい。
アメリカってやつぁ、街ぐるみでボケかまして来やがるぞ。


①深夜2時の訪問者

アメリカ滞在中は、マンスリーマンションに住んでいた。
キッチンとか冷蔵庫付きで、ユニットバスのワンルーム。

アメリカ出張で一番しんどいのは正直言語とかじゃない。時差ボケ。
ニューヨークと日本は12時間くらい時差があるもんだから、完全に昼夜が真反対なのである。

出張に行ってから1ヶ月は時差ボケが治らなくて、昼間眠くなったりはしなかったんだけど、夜が全然寝れなかった。

そんなある夜、眠りにつけずにベッドでゴロゴロしていると、ドアがノックされた。
気のせいかな、と思って目を瞑ったのだけれど、二度、三度とノックが続く。

時計を見ると深夜2時。
草木も眠る丑三つ時。
いやいやいやいや、怖すぎる。

画像4

どのくらいの知名度があるか知らないが、僕は、まとめサイト哲学ニュースで怖い話を漁りまくっていたくせに、極度の怖がりである。
ドアをドンドン叩かれる心霊話なんて王道中の王道。
アメリカの幽霊にお札が効くなんて聞いたことないし、そもそもお札なんて日本でも持ち歩いてない。
僕に出来るのは、目を瞑っていなくなるのを待つことだけだった。

だが、2分経っても3分経っても一向に鳴り止まない。

このまま無視することもできるけれど、

『このまま朝まで止まなかったらどうしよう』
『窓から乗り込んできたらどうしよう』

と、不安ばかりが募っていく。

やばいやばいやばいやばい。

でも、人間追い詰められるとハイになるらしい。

『何かあっても大丈夫なように包丁を持って行こう』
『アメリカでは丑三つ時だけど、日本では昼間だから!』

と、急に意を決した。
包丁を隠し持って、チェーンをかけてドアを開けるまで20秒。
開けるとそこには…


『Pizza...』


モジャモジャでメガネのおじさんがぽつんと立っていた。
ピザの箱を持ちながら。
まさにハングオーバー!の冴えない小太り中年男性のような見た目で。(以下写真左側)

画像1

(ワーナー公式より拝借)

『ウチじゃねぇ』

なんども『No!No』と言うのだけれど、のだが、どうしてもウチから連絡きたと言って引かない。

いやいや頼んでないし、というか、頼むことが出来る英語力なんてない。
よく見ろ。英語喋れる顔に見れないだろ。

1時間にも感じる、1分ほどの格闘の上、最終的には
『あそことあそことあそこの部屋をノックしてこい。』
と言ってドアを閉めてやった。
その後結局二度と部屋はノックされなかったから、真犯人はすぐに見つかったらしい。

いやいや、配達したあいつは悪くないんだ。

そもそも深夜2時にピザ頼みやがったの誰だ。
なんで朝まで我慢できなかったんだよ。
いや、朝まで我慢したとしても朝からピザ食うな。

くそ!やっぱりアメリカ人は朝から晩までピザ食ってやがるんだ。


②魔界からの電話。

僕のマンスリーアパートはホテルを改装して作られているからなのか、一部屋に一台ずつ電話も置かれていた。
とはいえ、携帯を持っているわけだから使うことなんてまず無い。

なんか聞いてみたら、宅配便とかの訪問とかでフロントからかかって来るらしい。
まぁ、僕に宅配便を送る人なんていないわけだから、電話はまずこないということだ。


が、来た。


なんで来た。

時刻は午後8時。
当時の僕はアメリカという街と過酷な労働にメンタルをやられ、家に引きこもって、ずっとサイコパス(アニメ)を見ているところだった。

いや。なんで。どこから。もしかして潜在犯(サイコパス用語)からの電話!?
頭の中には疑問しかない。

いや、取るの怖い。取るの怖いけど、取らなくて何か起きても怖い。
訴訟大国アメリカと言われるのだから、電話を取らなかったからと言って、訴えられるかもしれないのだ。

またも僕は意を決し、受話器を取った。


『Happy Birthday!!! Foooooooooooo!!!』


祝われた。

なんか知らねえけど、すげえ盛り上がってる。僕以外。

ええと、とりあえず、『番号間違ってますよ』と、たどたどしい英語で伝える。

『え!?もしかしてジョージじゃないのかい!?』

当たり前のようにジョージではない。
それを伝えると、『Sorrrrrrrrryyyyyy!!!』とともに電話が切れた。


が、また来た。


『Are you George !?』

今度はちゃんと聞くことを学習したらしい。
今回もやはりジョージではないので、丁重にご説明した。

『OK!OK!!! Happy Birthday!!! Foooooooooooo!!!』

あれ、もしかして『OK』って教科書で習った意味と違ってる?
関西弁の『ええ』と似たような感じなん?

僕以外が盛り上がっている。
きっと電話の向こうはこんな感じで超イケイケな情景が繰り広げられていることだろう。

画像2

僕だけを残して。

魔界かよ。

ゆっくりと受話器を下ろしたら、二度と電話がかかってくることはなかった。
多分彼らのことだから、Georgeに繋がることはなかっただろう。
でも、それはそれで満足してるんだろう。アメリカ人はテキトーだからな。

日本に帰って、すべらない話を見ていると、矢野・兵動の兵頭さんが、ほぼ全く同じ話をしていた。
すべらない話はどこまで本当かわからないけど、僕にはわかる。
兵頭さんは嘘ついてない。


③行き先の無い地下鉄。

ニューヨーク市内の移動は基本的に地下鉄だ。
線路が繋がってる限りは、2ドルで1時間でも2時間でも乗っていられるから、大したもんである。

画像5

家から職場までの移動は基本的に地下鉄だったので、毎朝お世話になっていたのだけれど、ある日の最寄駅は、いつも以上にごった返していた。

とりあえず、構内放送と、駅員さんの言っている英語をなんとなーく要約すると

『途中の橋で停電が起きたので、この駅からの電車は運行停止します。復旧はいつになるのかわかりません

とのこと。
おーっと。朝から大変だ。
『これは歩いて出社しようかな。一時間くらいだし』
と思っていたところ

『発車します』

と構内アナウンス。

いや、運休のアナウンスから2分も経ってないんですけど。
しかも駅員はパニックになって

『発車しません!!!』

って言ってるし。

とりあえず駆け込むと、結局発車した。
するんかい。

しかし、僕が恐怖したのは乗り込んですぐのこと。

『途中の橋で停電が起きたので、この電車は行けるところまで行きます』

え、待って。どこまでって?

行けるとこまで?

目的地は橋の2つ前の駅。たどり着くかつかないかは、賭けである。
アメリカのことだから、駅と駅の途中で止まって永遠に動かないとかやりかねない。
が、もはや過去二回の事件で、僕もいろいろ諦めていたようで、もう何時間かけても行けるところまで行ってやる!と覚悟を決めた。


普通についた。

定刻に。

あの駅と車内での脅しはなんだったのか。
というか。全然停電しなかったんだけど、そういうアトラクションだったのだろうか。

僕はその日も普通に出社して普通に家に帰って、韓国の激辛麺を食べて普通に腹を壊した。

画像6


④手紙。

ある日、ドアの下から手紙が差し込まれていた。
その内容はこうだ。

おめでとう!いつもこの部屋を愛してくれている君にプレゼントだ!
なんと、当選確率は5%だよ!おめでとう!

部屋のグレードアップキャンペーンに当選したよ。
仕事から帰って来る頃には終わっているよ。
楽しみにしていてね!

嬉しい。なんかよくわからないけど、嬉しい。
てか、めちゃくちゃ嬉しい。よくわからないけど。

しかし、はて。
なんかそこはかとなく怖いのはこの文章。

仕事から帰って来る頃には終わっているよ。

ホテルのグレードアップなら聞いたことある。
『スイートが空いてしまったのですが、よろしければいかがですか?』
みたいなやつ。

でもそれ、部屋移動するやつじゃんね。
部屋移動しないでアップグレードってどうすんの?

出社時刻まで時間もない僕は、貴重品だけ鍵付きトランクに入れ、部屋をあとにした。

夜。仕事から帰って部屋の鍵を開ける。
うん。普通に開く。移動とかじゃないらしい。

と、いうことは、部屋がめっちゃ綺麗になっているパターンだ。

ゆっくりと扉を開いた。


何も変わってない。


全く。荷物の位置すら。え、いたずら?
いたずらだったところで、クレーム出来る英語力もないし、まぁ、何を取られたわけでもない。
ちょっとウキウキ返せ、ってだけだ。

まぁ過去数回の事件で、アメリカにそこそこ慣れて来た気分の僕にとっては、こんなの大したことはない。
とりあえずトイレに行こう。

画像3

便器が変わっていた。丸っと。

この写真だけでは何が変わったかわからないだろう。
申し訳ないけれど、Before Afterの写真はない。

そりゃそうだ。誰も家に帰ったら便器が交換されてるなんて思わない。
というか仕事が早すぎないか。すごいな、大工。

この新しい便器、ウォッシュレットも付いてないし、温座でもない。
さあそれでは、何が変わったのか。

よく見ていただきたい。
流すボタンが上についている。

そう。元々は、流すレバーは横についていたのだ。

それがなんと上についたのである。

こうして僕は貴重な5%の運を使ってしまったらしい。便器で。

どうりで最近運が悪いと思った。


ツッコミができる国に生きててよかった。

ちょうどアメリカから帰って3年目の今日、たまたまなのだけれど、人生で初めて『フルハウス』を見た。

https://www.netflix.com/watch/70155617

前評判通り面白かったんだけれど、なんかこんな体験をして来た身からすると、ふとよぎるのが

『これ、リアルに目の前にいてツッコミ不在とか恐怖でしかなくね?』

ということ。観客でよかった。

この文章を書くにあたって、『ツッコミ 海外』で検索して見たのだけれど、海外にツッコミという文化はそんなに強く存在していないらしい。

や、だからと言って、ツッコミご無用で全力ボケかましていいとかじゃなくね?
と思うのだけれど、自由の国アメリカだからと言われたら、やはりこちらのツッコミ力不足を嘆くべきかなぁ、とちょっと反省はする。

いや、嘘。反省しない。

今振り返ってみれば、しんどかったけど、ニューヨークは楽しかったし、海外旅行をして、いろんな国でいろんな人にボケ倒されるにつけても楽しくなって来たのだけれど、住むにつけては、ツッコミ待ちしてくれる国でよかったなぁ、と改めて思う5月末でした。

忘れないように、その日思ったことを書いていきます。ちょこちょこ文体変わると思います。